【Side:オルレイア】どこにいるんですか?無事ですか?
※本話は、YouTubeで公開しているオルレイアのキャラクターテーマ曲『Precious Memories』を聴きながらお読みいただくと、より深くお楽しみいただけます。
歌詞にも、本話とリンクする部分があります。
『Precious Memories(Orlea Character Theme #1)』
https://youtu.be/wwIFZviM5XQ
見つからない……
どこを探しても、シエンの姿が見つからない。
昨夜、彼がイヤホンを壊してから、連絡が取れなくなってしまった。
ほんの一瞬で、シエンが私の人生から消えてしまったみたいだった。
最初は、こう思った……
ドローンを使って夜通し探せば、彼か標的を見つけられるかもしれない、と。
昨夜、【総監】が私の部屋を出て間もなく、後頭部から血を流して意識を失った四十六号が艦に送り返されてきた。
それだけじゃない。彼は身につけていた装備まで失っていた。
シエンがやったのだと、私は確信している。
だって、彼は優しすぎるから。
追い詰められない限り、彼はきっと、誰かを傷つけることも、損失を出すことも、できる限り避けられる方法を選ぶ。
おそらく……
まず四十六号から装備を奪い、自分が見逃した標的に渡したのだろう。私たちの装備を使えば、追っ手から逃れられる。
そのあとで帰還プログラムを起動し、四十六号を艦へ送り返した。
そうすれば、艦の【プロキシ】が一度に二人も減らずに済むし、ほかの【コピー】が地上で暮らし始める計画にも遅れが出ずに済む。
彼は行動を起こす前から、損失を最小限に抑えるこの方法を思いついていたのだろう。
さすが、シエンだ。
連絡を絶つ前には私の立場まで考えて、今回のことには私が関与していないと言えるようにしてくれた。
私の逃げ道まで用意してくれたのだ。
……
でも、彼は一つだけ見落としている。
シエン……
私の立場なんて、どうでもいい。
私が何より耐えられないのは、あなたがこうして私のもとを去ってしまったことだ。
シエン、今どこにいるの?
うう……
もう二度と彼に会えないかもしれない。
そう思っただけで、涙が勝手に目尻からこぼれてきた。
トントントン――
ガチャッ。
「オルレイア、いる?」
私の部屋のドアがノックされたかと思うと、灰青色の長い髪をした背の高い女性が、そのままドアを開けて入ってきた。
「泣いてたのね……よしよし。お姉ちゃんがここにいるから」
「ううう……レオナ姉ちゃん!」
「あんたとあいつのことはティナから聞いたわ。もう大丈夫、大丈夫よ」
【アドミニストレーター】か【プロキシ】になれば、家族を優先的にあの星の住民と入れ替えてもらい、そこで新しい生活を始められる。
でも、お父さんとお母さんは艦に乗るのが間に合わず、故郷に残された。
レオナ姉ちゃんはあの異星生物への憎しみを捨てられず、最後にはシエンと同じ【プロキシ】になって、より多くの人を助ける道を選んだ。
まさか、任務を一時中断して、わざわざ戻ってきてくれるなんて……
「ごめんなさい……わざわざ戻ってきてもらって……」
私自身の問題なのに、姉ちゃんに迷惑をかけてしまった。
「何言ってるの。あいつに置いていかれて、あんたもつらかったでしょう?話を聞いてすぐ、ティナには今日の任務が少し遅れるって伝えたわ。今日の分はあとで埋め合わせるからって」
ティナは姉ちゃんの同級生で親友だ。今は私と同じく、【アドミニストレーター】として頑張っている。
「そんなに心配しないで。本当に大丈夫だから。この話を教えてくれたのもティナだし、快く了承してくれたわ」
姉ちゃんはちょうどティナの下に配属されている。
だから、私のことをすぐに聞いたのだろう。
「姉ちゃん……一晩中探したんです。でも、シエンも標的も、どれだけ探しても見つからなくて……」
「まずは休みなさい。あいつは人の気持ちには鈍いけど、命がかかったことには敏感だから。動くときは、光学迷彩装置をずっと起動しているはずよ」
泣き出しそうなほど焦っている私を見るなり、姉ちゃんは問答無用で私を椅子からベッドまで連れていき、無理やり寝かせた。
「でも、それだと私は……」
「オルレイア、言うことを聞きなさい」
起き上がろうとした途端、またベッドに押し戻された。
姉ちゃんは昔からこうだ。
誰かの世話をするときは、決まって強引になる。
「一晩寝てないんでしょう?もう倒れそうな顔をしてるわ。そんな状態で探し続けるつもり?」
「うっ……」
言い返せない。
頭がぼんやりする。
「だから、安心してひと眠りしなさい。あいつは私に任せて。任務の途中で探してみるわ。あんたが目を覚ます頃には、見つかっているかもしれないわよ」
姉ちゃんはそっと布団をかけ、私を軽くぽんぽんとたたいた。
そして口元を上げ、とびきり格好いい笑顔を見せた。
「どうお礼を言えばいいのか分かりません……」
「私にお礼がしたい?簡単よ。ちゃんと休んで、これ以上心配をかけないでくれればいい。あいつを見つけたら、何とか引きずって帰ってくるから」
「えっ……姉ちゃん、暴力で無理やり連れ戻しちゃ駄目ですよ?逆効果になっちゃいます!」
「安心して。やりすぎたりはしないわ。ただ、あいつのことはどうしてもぶん殴らないと気が済まないけどね。うちのオルレイアを泣かせるなんて……いい度胸してるじゃない、あいつ!」
本当に安心していい……よね?
姉ちゃんの額に青筋が浮かんでいるのを見ていると、どうにも不安になる。
そうだ!
「姉ちゃん、もし本当にシエンを見つけたら、これを渡してもらえますか?」
ベッド脇の引き出しを開け、あるものを取り出して姉ちゃんに手渡した。
「これは?」
「……特別に暗号化した、個人用の通信装置です。どうしても説得できなかったら、これを渡してください」
正直、姉ちゃんがシエンを連れ戻せるとは、あまり思っていない……
シエンは一度決めたら、姉ちゃんや私が説得しても、きっと考えを変えないから。
だから……
「本当に帰るつもりがないなら、連絡が取れたところで意味があるの?」
「えへへ……普段から声を聞いて、おしゃべりできるだけでもいいんです。そのあとのことは、私がまた説得してみますから」
それに、おしゃべり以外にも……
こっそり彼に情報を伝えられるかもしれない。
上層部は私のやり方を認めてくれたけれど、私の下に配属される【プロキシ】たちが、上からシエンの抹殺命令を受ける可能性もある。
まだ会ったこともない【プロキシ】たちに、すべてを任せる気にはなれなかった。
「はぁ……あんたって、本当にお馬鹿さんね……」
「えへへ……」
「分かった。連れ戻せなかったら、あいつにこれを渡すわ」
姉ちゃんは私の頭を撫でてから、通信装置を自分の次元袋にしまった。
それから伸びをして、私を振り返り、部屋を出ようとした。
「そうだ……!姉ちゃん、どこから探すつもりですか?」
「まずはあの辺りのショッピングモールから探すつもり。今日の標的もちょうど近くにいるから、ついでに見てこようと思って。迷彩装置だって一日中は使えないし……人の多い場所で切るはずよ」
姉ちゃんはドアを閉め直し、私のベッドのそばに戻って腰を下ろすと、説明を続けた。
「どうしてショッピングモールなんですか?」
「ほら、あいつはあのとき急に出ていったでしょう?日用品なんて持っていないはずよ。しかも今は追われている。逃亡に必要なものを短時間で揃えたいなら、ショッピングモールへ行く可能性が高いと思うわ」
あっ……!
なるほど!
さすが姉ちゃん。そんなふうにシエンの次の行動を予測できるんだ……
「あっ……!私、前に私服を何着か彼の次元袋に入れたんです。だから、先に食べ物を売っている場所から探すといいかもしれませんよ?」
「……あの服のデザイン、見たことがある気がするわ。あいつだって、いくら面の皮が厚くても、あれを着て街には出ないでしょう……絶対に新しい服を買いに行くと思う」
「えっ?どうしてですか?私の自撮り写真を彼の私服にプリントするのって、そんなに変ですか?」
シエンが寂しくなったとき、あの服を見て私を思い出してくれたらと思っただけなのに。
でも、あの服を見たときのシエンは、固まっていた。
ふふっ。
あのときは、しばらく何も考えられなくなったみたいに固まっていた。
「へ、変ってわけじゃないわよ。そういう問題じゃなくて……」
姉ちゃんは私と目を合わせないまま、あっという間に部屋から逃げていった。
あとには、あれこれ考え込む私だけが残された。
……
本当に変なの!?




