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リプレイサブル・ライフ  作者: YeetedSushi
01-暗殺がもたらした出会い
12/17

第5話 逃亡という名の旅

バシッ!


「……!?」


顔に突然走った痛みで、俺はベッドから飛び起きた。


まさか【プロキシ】がもう追いついてきたのか――


「うっ……」


だが、さっきまで俺が寝ていた場所の隣を見ると、紗夜の仕業だと分かった。


正確には……


――こいつの寝相が悪すぎる。


「なんだよ、その寝相!?どうやって寝たら、頭と足が逆になるんだ?」


紗夜は上下逆さまになり、大の字でぐっすり眠っている。


そして、さっき俺の顔にぶつかったのは、彼女の脚だった。


……こいつ、いくらなんでもひどすぎないか?


「おい……一応、俺はお前を殺しに来たやつなんだぞ。少しは暗殺者としてのメンツも立ててくれよ」


いくら揺すっても、まるで起きる気配がない。


どれだけ熟睡してるんだよ……


「むふふ……三号、唇、なんで腫れてるの?すごく間抜けな顔~」


間抜けなのはお前だろ!?


いったいどんな夢を見たら、そんな寝言が出てくるんだ。


はぁ……


まったく。


【プロキシ】がこっそり忍び込んだのかと思ったら、とんだ取り越し苦労だった。


まあ、いいか。


どうせ起きたんだ。少し準備をしておこう。


蹴り起こされたせいで、もう眠れそうにない……


——————


浴室で身支度を済ませて戻ると、紗夜はまだ眠っていた。


俺はそばのソファに座り、天井を見上げてぼんやりしていた。


腹が減ってきたところで、朝食にカップ麺を取りに行った。


……


ついでに紗夜の分も持ってこよう。


「……」


部屋に戻ると、紗夜はもう目を覚ましていた。


ベッドの上に起き上がり、まだ寝ぼけた顔でぼーっとしている。


扉を開ける音を聞いて、ぼさぼさの髪のまま、ゆっくりこちらを振り向いた。


「はぁ……やっと起きたか、お前」


「三号、さっきどこ行ってたの?」


「朝飯にカップ麺を取ってきた。ついでにお前の分もな」


そういえば、まだ名前を教えていなかったな……


「あと、俺にも名前がある。シエンだ」


「え?三号って、名前じゃなかったの!?」


そんな世界の秘密を知ったみたいな声を出すなよ……


「ナンバーを名前にされるほど、俺の生い立ちは悲惨じゃない」


「そうなの?てっきりスター・◯ォーズみたいな感じかと思ってた」


どんな物語かは知らないが、俺たちを哀れな存在だと思っているらしい。


「なあ……前に見た物語だけで俺たちのことを決めつけるなよ!」


「仕方ないでしょ。あなたも異星から来た宇宙人なんだから」


俺のせいかよ?


朝からこいつ、ずいぶん生意気だな……


そろそろこの憎たらしいガキに、お灸を据えてやるか。


「これを見てみろ」


「なっ……!いつ撮ったの?」


銃口を向けられていたときは、あんなに冷静だったくせに。


こんなことで慌てるのか……


いったい何を考えてるんだか。


ただの、よだれを垂らした寝顔の写真じゃないか……?


「誰かさんの美脚に顔を踏まれて起こされたからな。証拠を残そうと思って撮った」


「私のスマホ返して!なんでパスコードまで知ってるの!?」


実は昨夜、偶然彼女のパスコードが目に入った。


さっき身支度を済ませたあと、好奇心から、この「スマホ」と呼ばれる端末をあれこれ触ってみた。


すると、意外にも普通の端末と同じように、写真を撮る機能がついていることに気づいた。


それで仕返しに、勝手に彼女の美しい寝姿を撮っておいたのだ。


ぷっ……


美(・)し(・)い(・)寝姿……ね?


「人のパスコードを盗み見たうえに、勝手にスマホのロックまで解除して……あなた、本当に失礼!」


「俺に文句を言う前に、寝ている俺の顔を蹴って起こしたことを謝るべきじゃないか?」


「それとこれとは別。あなたにどうこう言われる筋合いはない」


紗夜は俺の手からスマホをひったくると、すぐにあの恥ずかしい写真を消した。


その間も、負けじと俺に悪態をついてくる。


「いっそあの写真を艦に送って、みんなに『優等生』の恥ずかしい姿を見せてやればよかったな」


「そんなことしたら、絶対に殺す……」


虫けらでも見るような目で俺を睨んできた。


「はいはい、俺の負けだ。勝手にスマホを使ったのは悪かった。これでいいか?」


【プロキシ】を殺すと堂々と言い放つ標的なんて、初めて見た。


「それにしても、お前みたいな完璧なやつでも、寝相はあんなに悪いんだな……どうやったらあんな格好になるんだ?」


「何?あなた、美少女はう◯こしないとでも思ってる哀れな童◯くんなの?」


「おい!女の子がそんな言葉を口にするなよ!」


しかも、自分で美少女って言ったぞ……


確かにそうだけど、そういうのは他人に言ってもらうものだろ?


「何?図星だった?」


図星じゃない!


こいつは本当に……


生意気すぎて腹が立つ。


「……カップ麺、食べるのか?いらないなら返してくるぞ」


「いるに決まってるでしょ!ちょっと……!」


「だったら、そういう下品なことを言うのはやめろ」


「ううう……私を殺しに来た暗殺者のくせに、なんでお母さんより口うるさいの!?」


まだ言い返すのか……


「分かった、分かった。直すから、私の朝ごはんを返さないで!」


俺が本当に個室のドアへ向かうと、紗夜は渋々俺を呼び止めた。


「あと、お湯も入れて」


「……注文が多いな!?自分で入れられないのか?」


「どうせあなたも、自分の分を作るんでしょ?」


俺はいつからこいつの世話係になったんだ……


     ◇


身支度を済ませた誰かさんは、すぐにテーブルへ戻り、カップ麺の蓋を開けて勢いよく食べ始めた。


「ずるずる……ふぅ~、満足!」


「ずいぶん簡単に満足するんだな?」


「立派な実績や肩書きより、私は湯気の立つカップ麺一杯のほうが好き」


紗夜は麺を食べ終えると、残ったスープまで飲み干した。


その姿は、これまで標的になったおっさんたちとそっくりだった。


それからようやく立ち上がり、空になったカップを部屋の外のゴミ箱に捨てた。


あ……


俺のカップもついでに持っていってくれた。


それはありがたい。


「紗夜、もう一度だけ確認させてくれ。ここにいられるのは九時までで、このあとネットカフェを出るんだよな?」


「ん?まだ一日いたいの?」


「いや……今日出るのが一番いい。もう一日いたら、艦にいる連中に居場所を特定されやすくなる」


「さっきは私の変な写真を艦に送るって言ってたのに……今度は居場所がばれるのを心配するんだ?」


「冗談だって、お前も分かってるだろ?」


紗夜は聞こえなかったふりをした。


ベッドに寝転び、残りの時間は目を閉じて休むつもりらしい。


というか、朝飯を食べたばかりでまた横になるなよ!


太るぞ?


「もういい。ここにあと一日いよう」


次の瞬間、そんな無責任な言葉が飛び出した。


「却下。お前、本当に少しも心配してないんだな?」


「だって、ここのベッド、寝心地がいいから。ほら、ブラックホールみたいに私を吸いつけて離さない。もう起きられない」


「ふざけてないで、早く支度しろ。もうすぐチェックアウトの時間だ」


「ちぇっ……ケチな男」


紗夜は無表情のまま、苦労してベッドから起き上がった。


伸びをしてから、昨夜洗った服を手に取り、ふらふらと浴室へ向かった。


「じゃあ、シャワーを浴びてくる。少し待ってて」


「また風呂に入るのか!?頼むから手早く済ませてくれよ」


「適切に対処する」


いや、そこは「急ぐ」って言うところだろ!?


あとで店員に追い出されたら、恥をかくのは俺たち二人なんだぞ?


しばらくすると、浴室から水音が聞こえてきた……


それから、短いため息も。


何を考えているのやら。


さて、今度は俺が何をするかだ。


何もせずベッドで待っているのも退屈だしな。


彼女がシャワーを浴びている間に、今日の予定を相談しておこう。


「なあ、紗夜。聞こえるか?」


「今度は何、シエンさん?先に言っておくけど、早くしろって催促するつもりなら、かえって遅くなるよ。人に急かされるの、嫌いだから」


「チェックアウトしたあと、何をしてどこへ行くか相談したいだけだ。多少は計画を立てておいたほうがいいと思う」


「そんなの、どうでもいいでしょ。雨風をしのげて、できれば冷房もある場所で過ごして、夜になったら泊まれるところを探せばいいじゃない」


「適当すぎるだろ!?まさか、それで一日を丸ごと潰すつもりか?」


「ほかにどうするの?私たち、今追われてるんだよ?」


言われなくても分かってるっての。


まったく……


「服を買い替えたい。俺の服は目立つし、お前が昨夜着ていた服も、あいつらに見られている。ただ、買うとなるとお前に金を出してもらうことになる。だから……」


「ああ、服が欲しいの?ちょうどいい。あとでショッピングモールに行こう」


「ショッピングモールって、いろんなものを売っていて、人も大勢いる場所だよな?」


「そう」


それだ。


人混みに紛れられるし、【プロキシ】とばったり出くわす可能性も減らせる。


【プロキシ】はたいてい人けのない場所で動く。ショッピングモールの中なら、そのぶん安全なはずだ。


……


たぶんな。


少なくとも、俺の知る【プロキシ】の大半はそうやって動く。


俺たちだって、そこまで運が悪くはないだろう。


「シャワーを浴び終わったら、私のキャッシュカードを渡す。口座のお金は好きに使っていいよ。あ、でも一日に引き出せる額には上限があるから、そこは覚えておいて。いざというときにお金を引き出せなくなっても、私にはどうしようもないから」


「俺をヒモにするみたいな言い方は何だよ?」


「そんなつもりじゃない。ただ……私が死んでも、あなたはそのカードを持って生きていけるでしょ。預金を銀行で眠らせたままにするより、誰かに使ってもらったほうがいい」


「おいおい、自分が死ぬ前提で考えるなよ!」


どうやら……


紗夜のこういう考え方は、しばらく直りそうにない。


別に、何が何でも生き延びろと押しつけたいわけじゃない。でも……


せめて、そこまで悲観しなくてもいいだろ?


ずっとそんな後ろ向きなことばかり言われたら、こっちまで気が滅入ってくる。


「俺たち二人とも、これからどうするかまだ決めてないし、いっそ……」


何か理由を見つけないとな。


先へ進む理由があれば、紗夜も少しは前向きになるんじゃないか?


「俺にお前たちの世界(エラリス)を見せてくれないか?」


「どういう意味?」


「お前に案内役を頼みたいんだ。この世界を、俺に見せてほしい」


「うわ……そんなこと言って、自分では格好いいと思ってるの?正直、ちょっと中二病っぽい……」


中二病って何だ?


……いや。


意味は分からなくても、こいつが俺をからかっているのは分かる。


「何だよ?俺は宇宙人なんだから、これから暮らす世界のことを知りたいと思うのは普通だろ?」


「はいはい。じゃあ、そういうことで決まりね~」


水音が一瞬止んだ。


続いて、浴室からまたあきれたようなため息が聞こえた。


紗夜はもう考えるのも面倒になったのか、投げやりに返事をした。


「どうせ私も、やりたいことなんてないし。宇宙人の案内役っていうのも、ちょっと新鮮かもね」


「じゃあ、これからの旅、よろしく頼むな?」


「逃亡でしょ?」


「普段はあんなに適当なのに、そういう細かいところにはこだわるんだな……逃げながら旅をするのも悪くないだろ?」


「だから、中二病っぽいって言ってるの」

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