怒らせてはいけない人
※今回は前半少しだけ穂乃果視点になります。
話は変わり入れ違うように約束の場所に来ていた穂乃果はと言うと……
「あのー大丈夫ですか?」
その近くで気を失っている望の彼氏の肩を揺すっていた。それも仕方ない。誰もが先ほどの状況を見ていた故の見て見ぬふり。しかしそれを穂乃果は知らない。
そんな穂乃果からすればここで何か起こって角田がいないのではないかと気が気でない。
「うっ」
「あ、大丈夫ですか?」
「ひっ!?」
男は起きるなりすごい勢いで物陰まで逃げていく。男の顔は腫れておりパンパンだった。
「あのー大丈夫ですか?」
「あ、あの男はいないのか?」
「あの男?」
「い、いやいないならいい……」
男は周りを見渡して男(角田)がいないことを確認してほっと一息して肩から力を抜く。
※どうも先ほどの角田の初号機並みの暴走は彼にとってトラウマのようです。
「いったい何があったんですか?」
私が男の人に聞くと視線を下に向けてぶつぶつと告げる。
「あれは……人間じゃない……」
「??」
何のことか分からないが相当怖い目にあったらしい。なら角田も巻き込まれているのではないのだろうか……
先ほどから連絡しているのだが、返事がないのもそのせいでは……
「くそ!!あいつのせいで望にも逃げられた!望の奴許さねーぞ!」
男が悪態漏らす。
それははっきりと穂乃果の耳に届いていた。それが男の二度目の男のトラウマの始まりとも知らず。
「望って辻井望のことですか?」
「あ?ああそれがどうかした……しましたでしょうか?」
男の視界には腕を鳴らしながらこちらを鬼の形相で見ている穂乃果が迫っていたのだった。
「ふふ、話聞かせてくださいね?」
「は、はい!!」
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そして場面は戻って彼と彼女。
「偽の恋人?」
「そう、僕と佐藤さんのようにね?」
「!?……知ってたの?」
僕は静かに頷く。
「じゃ、じゃあ罰ゲームだって知ってて付き合ってるの?なんで?普通怒ったり……」
「え?」
「え?」
あーそうかー怒るっていう手段もあったのかー……
角田の頭には全くそういう発想はなかった。所詮遊び。ただの学生のノリって言うやつだと思っていたし佐藤さんには多少は罪はあっても彼女も被害者みたいなものだしなって思っていた。
「はあ、角田ってさっきもそうだけどとんだお人よしだよね?」
僕は正直に考えを言うと辻井さんは呆れたように言ってくる。
「そ、そうかな?へへ」
「褒めてないからね!?」
「え!?そうなの!?」
「当たり前でしょう!?」
てっきり優しい人だと褒められているのかと思ったが、早とちりだったようだ。地味に落ち込み肩を落とす。
「ま、まあ。今回はそれに助けられたしいいけどさ……」
「ほ、ほんと!?」
「う、うん」
うんうん。僕も捨てたもんじゃないな。
角田は一人妙な満足感で胸を満たしていた。彼氏歴はまだ浅いが女性に褒められるほどの行動をとれたことは角田にとって嬉しい限りだった。
「ありがとう!辻井さん!」
僕は彼女の手を取ってその嬉しさと感謝を伝える。
「な、なんで角田がお礼を言うの?」
「え?だって辻井さんのおかげで男としてワンランク上に行けたというか、男の勲章をもらったというか」
「ふふ、何それ?」
自分でも何を言っているのかわからなかったが、どうも辻井さん的には面白かったようだ。
「それにこの偽恋人ライフを満喫させてくれている辻井さんには感謝してるんだ」
「満喫してるんだ……」
「うん!それはもう後悔の無いようにね!」
「はあ……」
(これは穂乃果も手ごわい相手を好きになっちゃったな……まあ、私もだけど……)
目をキラキラとさせている彼。本気で言っているらしい。
「あのさ、もし穂乃果が本気で角田のことが好きだってなったらどうするの?」
「え?うーん」
角田は考える。
それならば一石二鳥ではないかと。しかし、彼の頭では天使と悪魔(欲望)が戦っていた。
天使:いや!だめだろ?だって彼女は俺を騙してたんだぞ?
悪魔:ええい!うるさい!細かいことを気にするな!付き合えたらムフフな夢まで叶えることができるんだぞ!
天使:いけません!未成年でそのようなハレンチなことは!
「うっ!?」
「え!?か、角田?」
角田は頭を抱えていた。
(どちらの言い分も正しい!!)
※彼はまっさらな童貞ボーイです。なので、今時の子ならとは思いません。淫行ダメゼッタイ。
「ねえ、辻井さんはどう思う?」
「え?わ、私?」
そして彼女辻井望も頭を抱えた。
(いや!私に聞かれても!?)
天使:友達なんですから応援するためにここは付き合えばいいと言いなさい。
悪魔:へへ、角田は私のもんだ!
「うっ!?」
「え!?辻井さんも!?」
二人して頭を抱えていた。しかし、それは突然の来訪者によって終わりが来ることになった。
ピンポーン。
「あ、お、お客さんだ。私出てくるね?」
「う、うん」
そうして玄関に向かって彼女は歩いていく。そして彼女が扉を開けるとそこには驚くべき光景があった。
「ハロー望」
「え?穂乃果……と裕也君?」
にこやかな穂乃果とその隣に震えている元カレがいた。しかも、先ほど角田にやられたよりもぼこぼこな状態で。
「ど、どういうこと?」
「うん。実はねたまたま角田との待ち合わせ場所でこいつ見つけて、事情を洗いざらい吐いてもらったの。それで少しお灸を据えて二度と望に近づかないように誓わすために連れてきたの」
「へ、へえーそ、そうなんだー」
望はにこにこしている穂乃果に恐怖を覚えていた。それもそのはずだ。彼女は空手の有段者で中学では全国にも行った猛者だ。そんな彼女が怒るときは常に笑顔。そしてそんな彼女を怒らせてしまったのだ元カレは。
「ほら、言え」
穂乃果の声にびくっと反応して男がその大きな体を縮ませながら小さな声で話し出す。
「す、すみませんでした……」
「声が小さい」
「す、すみませんでした!!」
それは恐怖映像だった。それを角田は望の後ろから顔を覗かせて見ていた。
「あ、角田いたの!?い、嫌だ。は、恥ずかしい」
もじもじして照れる穂乃果だったが、そんなことより角田はあまりの恐怖映像に今までの悩みなど消し飛び決断する。
(もし、彼女が僕を好きでもし、慎重に交際は考えよう……)
穂乃果の友達思いな行動は皮肉なことに余計に角田を彼女から遠ざけることになっていた。
「で……なんで角田は望と二人っきりで望の家にいるの?」
先ほどまでの照れなど消えて一瞬で先ほどまでの殺気を取り戻して僕に聞いてくる。
(あ、死んだ……)
修羅は続く。ああ、どこまでも。
次回!やめて!角田のライフはもう0よ!をお楽しみに!
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