彼女の笑顔が見たかった
「ふあー」
僕はベッドから降りて部屋の窓を開ける。外からは小鳥の鳴き声が聞こえて清々しい。体は軽くてまるで羽が生えたみたいだった。
ああ、空気がおいしい。
昨日は楽しかった。ちょっとアクシデントあったけど最高のデートだったなー。
あの後、角田は気持ちを切り替え改めて遊園地を楽しんだ。それはもう最高に。しかし、角田は気づかなかった。その横でニヤニヤしていた彼女の変化に。
「佐藤さんが頑張って彼女を全うしてくれたおかげで助かったな」
※穂乃果は純粋に気持ちを伝えられたと喜んでいただけです。
「でも、いくら罰ゲームでも少し罪悪感が出てきたな……」
あくまで彼女は辻井さんやお友達のみんなに強要されているだけだし、彼女がすべて悪いわけではない。
(うーん。そう考えると彼女にも何か日頃のお礼がしたいな……)
角田は考える。ない脳みそをフル回転させて、童貞パワーで。
「うん!恋人いたことないし分からないな!」
それはそうだ。
恋人もいたこともない角田。女性の喜びそうなものなど思いつくはずがない。しかし、そこは角田ただでは終わらない。
「本人に聞いてみよう!それが一番だよね!」
開き直った人間は強い。
それを証明するように朝日は彼を強く照らす。
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「おはよう。角田」
「??、お、おはよう?」
「どうしたの?」
「え?いや、穂乃果から挨拶するなんて珍しいなって」
この前までは決して僕があいさつするまでしてこなかったのに。僕は不思議に思って彼女の顔をよく眺める。よく見ると彼女の口角は少し上がっていた。
「な、なに?」
「なんかいいことあった?」
「え!?そ、そう見えるかな?」
「うん。口角が上がってて可愛らしく見えるよ」
「えへへへ」
そういうと余計に彼女は溶けるように顔が綻ぶ。ど、どういうことなんだろう?ここまで彼女が顔を綻ばせるような出来事って…まさか!?
僕の恥ずかしげもなくはしゃいでた遊園地のことを笑ってる!?
※著しく間違ってます。
あそこには辻井さんもいた。僕に関しての情報はお友達間で共有されているのかもしれない。そう考えると途端に恥ずかしくなった僕の顔は赤くなる。
「??、角田大丈夫?顔真っ赤だよ?」
「う、うん。大丈夫!僕は元気だよ!!」
勢いでその場でスクワットするくらいにはね。
「そ、そう?」
そうしていると次々教室にクラスメイト達が入ってくる。
「あ、角田おはよう」
「おはよう!辻井さん!」
「で、この状況何?」
辻井さんはスクワッドをする僕と困惑している穂乃果を見て告げた。僕が聞きたい状況だった。
「えっと、元気が有り余ってスクワッドしてたら穂乃果が心配したんだよ」
「へえー聞いてもわけわかんないことってあるんだねー」
彼女は聞いておくながらもはや興味がなかったのか自分の席に座る。
「あ、そういえば穂乃果。あの件マジ?」
「う、うん。マジ」
「そうかーよかったね!」
「うん!」
二人はとても楽しそうに話している。どうもよほど嬉しいことがあったようだった。そこまで二人を嬉しくさせる事とは何なんだろうか?やはり、僕の無様なはしゃぎようについてだろうか?
にしては楽しいという感じではなく嬉しそうだった。わ、分からない。いったい彼女たちは何をそんなに嬉しがっているんだろう?
「で、角田はどうなの?満更でもないんでしょ?」
「え?う、うん!とっても嬉しかったから何か穂乃果にプレゼントしようかなって考えてたんだ」
「へえーなかなかやるじゃん!いいね!」
辻井さんが僕に向けてサムズアップしてきた。僕も返しておくことにした。
「じゃあ、今日は放課後デートしてプレゼント選んでもらいなよ穂乃果」
「う、うん!」
とっても嬉しそうな彼女を見て言えるわけなかった。
一体何の話なの?とは。
(や、やばい!何か流れに任せて嬉しいとかプレゼントとか言っちゃったけど何の話かも分からないよ!)
なんに佐藤さんがあんなに嬉しそうかは分からなかったけどあんなに嬉しそうな彼女を見て何のことか分かりませんなんて言えなかった。
ステイステイ!
落ち着くんだ僕!
元々プレゼントは上げる予定だったしいいじゃないか!それにこれも楽しんでしまえばいいんだ。どうせ期間限定の恋人だしね!
(よし!仕切り直して放課後は楽しもう!)
「ふふ、今日は私も彼氏と放課後デートなんだよ。だからお互い頑張ろうね!」
「う、うん」
辻井さんもデートなんだ……
でも、大丈夫なのかな。
遊園地で穂乃果に言えなかった事がある。それは辻井さんに関することだ。決して何か確信があるわけではない。しかし、今になって後悔していた。
(もし、勘違いじゃないなら……)
そう考える事すら角田は怖かったのだった。
そうして角田の予想を見事に的中させるように事態は放課後に起こった。
「ここかな」
僕は穂佐藤さんとの約束で有名な犬の石像の前で彼女を待っていた。なんでも着替えてからデートしたとかで彼女は一回家に帰った。
そうして僕は暇を持て余していた。暇を解消するために携帯をいじっていたら偶然それは聞こえてきた。
「おい!何とろとろしてんだ!このボケ!」
男の拳が綺麗に女性の頭めがけて振り下ろされる。
「いたた……ご、ごめんね」
女性は殴られてなお笑っていた。いや、笑顔を心掛けるようにしていた。現にその顔は今にも泣きそうだった。
「ごめんで済むなら警察はいらねーんだよ!」
男は彼女を威圧するように怒鳴りつける。周りにはたくさんの人がいた。しかし、誰も見知らぬふりをする。それもそうだろう。男はガタイがよくとてもじゃないが対打ちできそうにない。
僕も見ぬ振りが出来ればよかった。でも、最高の恋人ライフを知って恋人のありがたさを知った僕にはとてもできなかった。
男が再度拳を振り上げる。僕は男の腕を掴んで止める。
「彼女謝ってるんだから許してあげたら?」
「ああ?なんだ?お前!」
男は僕を威圧するように声を強める。それに少し膝が震えるが構わずしゃべり続ける。
「彼女の笑顔はもっと綺麗でとっても嬉しいが詰まった笑顔なはずだ。なのに彼氏がそんな顔させるなんて彼氏失格じゃないかな?ね?辻井さん」
僕が呼び掛けると女性、辻井さんは困惑して目でこちらを眺めていた。その目は普段の図々しい彼女とは遠く離れていた。怯えていた。
「な、なんで助けてくれるの?」
「君には恋人のありがたさを教えてもらった。その恩返しだよ」
「え?な、なんのこと?」
「まあ、見ててよ。僕がこんな彼氏の風上にも置けないやつは成敗するよ!」
「む、無茶だよ!」
彼女の呼びかけなど無視して彼は駆ける。
さあ、ここから角田の熱い戦いが幕を開けるのだ!
※次回、角田死す!お楽しみに!
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