ものほんですよ!!角田君!!
い、今角田は何て言ったの?
私の気のせいでじゃなければかっこいいって言った?
ははは、ついに幻聴まで聞こえてきたかな?
「まさか、穂乃果にそこまで言ってもらえるなんて最高に感動したし最高にかっこよかった!!」
角田は私の手を握り目をキラキラさせながら私を見てくる。どうも角田の瞳の中の私は最高にかっこよく映っているようだった。
「そ、そんなに興奮することなの?」
「当たり前だよ!!」
あ、当たり前なんだ。
「彼女が彼氏を想って嫉妬で吐く言葉にはどの言葉よりも可愛いが含まれててなおかつ愛おしい物なんだよ!これを喜ばない男なんて男じゃないね!!そもそも!」
角田は本当に興奮しているようで私の手を握ったままで徐々に距離を詰めてきていて気づけば角田の顔がもう目の前にあった。
「い、いったん落ち着こう!?ね?」
私の言葉で角田も自分が思った以上に私に近いことを認識したのか顔が赤くなっていた。
「ご、ごめん!あまりにも理想のシチュエーションだったからつい……」
角田は慌てて私から距離を取って背を向ける。
「そ、そうなんだ」
嘘をついていないのは先ほどの様子から分かっていたがそこまで理想的だったとは思わなかった。角田は振り返り私に向かって先ほどまでが嘘のように落ち着いて言う。
「うん……だってさそこまで僕のことを好きでいてくれているって感じさせてくれるシチュエーションって最高じゃない?」
「!?」
好き!?
私が角田を?
そ、そうなの?
正直、自分自身でも驚いている。
確かに言われるとそういう風にも捉える事ができる。で、でもまだ好きじゃ……
そ、それに私は角田を騙してて……いや……正直もう自分でも自分の気持ちが分からない。
「えっと……」
何か答えないといけない。私たちは恋人なのだから。そう思っていながらも言葉がうまく出ない。そんな私を角田はただ静かに優しい顔で待っている。まるで時間が止ゆっくりと進んでいるようだった。
しかし、そんな時間は突然終わりを迎える。
「ねえ、もういいかな?」
「え?つ、辻井さん?」
「うん。こんにちわー角田」
「う、うん。こんにちわ」
望のいきなりの登場に角田は驚いていた。かくいう私も驚いていた。
(なんてタイミングで声かけるのよ!?馬鹿なの!?)
前々から望が空気を読めないのは分かっていたがここまで無粋だとは思わなかった。せっかく角田が待っててくれたのに!
「で、何か用なの望。あ、最近言ってた便秘が直ったの?ほら、トイレならあそこだよ」
私はびしっとトイレを指さして言う。
「なんで男の子のいる前で便秘の話題!?なんの恨みがあるの!?」
「自分の心に聞いてみたら?」
「な、なんで怒ってるの!?」
私は腕を組みそっぽ向く。
このくらいで済ませることを感謝してほしい。
「ま、まあそんなに怒らないであげたら?」
すると角田が私に向かって望を許してと言ってくる。
「へえー角田は望を庇うんだ?私じゃなくて望を優先するんだ?へえー……」
「す、すみません!何も言ってません!」
思った以上に感情が言葉に乗ったからか私の声は予想以上に冷たくて無機質なものだった。それに角田は以上に怯えてすぐに謝ってくる。
「はあ」
(これ以上雰囲気を悪くしても仕方ないか……)
「いいよ。許す」
「あ、ありがとう~~穂乃果~~」
「わ!?ちょっと、泣きながら抱き着かないでよ!」
泣きながら抱き着いてくる望を引き離して私は望に言う。
「今回は許すけどこれからは気を付けてね?」
「え、えっと私は何に気を付ければいいの?」
「私の気分を害さないようにかな?」
「む、難しすぎない?」
「頑張って」
「は、はい……」
うんうん。よろしい。
「で、結局なんで辻井さんがここにいるの?」
「ふふー今日は彼氏とデートに来てるんだ!」
自慢げに胸を張り言ってくるが、私たちもデートで来ているということを分かっているのだろうか?というかさっきは興味がなくて聞かなかったが、彼氏はどこにいるのだろうか。私は不思議に思って望に問いかける。
「で、その彼氏はどこにいるの?」
「………あ」
「??」
望は急に固まってみるみる額に汗が出ていた。まるで重要なことを思い出したように。そして、わずかに体が震わせながら頻繁に自分の腕を摩っていた。
「彼氏にアイス買ってもらってトイレに行くからって待っててもらってるんだった……や、やばい……」
「え?そんなにやばいかな?望と会ってからまだ五分くらいしか経ってないよ?」
夏ではないからアイスはすぐには溶けないし今から戻ればそんなに慌てる必要もないんじゃ…。
「も、戻らなくちゃ!!二人ともじゃあね!」
そう言って望は真っ青なまま駆け出していた。
「行っちゃったね…」
「そ、そうだね」
まるで嵐のようだった。
そして、決まって嵐の後には静けさが残る。
「とりあえず、飲み物飲もうか」
「う、うん」
ずずず。
二人とも椅子に座り何も言わず飲み物を飲む。
いつもなら角田が何か話してくれていたが、先ほどの空気を引きづっているのか何も喋らない。
(角田はいつも頑張ってくれてたんだ……)
私はこのままではいけないと先ほどの続きを口にしようとゆっくり口を開く。
「「あのさ」」
二人の言葉が重なる。
「さ、先どうぞ」
「うん」
角田は戸惑いながら口を開こうとする。しかし、その口が開くことはなかった。
「??、どうしたの?」
「いや…やっぱり何でもないや」
角田はそう言っていつもより少しぎこちなく笑う。
「そ、そう?」
「うん。で、穂乃果は何言おうとしてたの?」
「え、えっとね……その……私の気持ちが伝わってよかったなって…」
い、言っちゃった……
好きかどうかもまだ確定してないし騙してるのに……
ただ、純粋に彼に喜んでほしかった。それ故に自ら過ちを重ねた。
「うん……よく伝わったよ」
角田は少し寂しそうに笑う。
私はこの時ただ話すのに必死で角田の笑顔の意味を何も考えてなかった。そして、それを一生後悔することになるなんて夢にも思ってなかった。
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(危なかった……)
正直、あのシチュエーションは勘違いしそうだった。まさか本当に僕のことを好きになってくれたのかなって。
だけど、ここには辻井さんがいた。つまり先ほどの女の人たちに言った言葉は辻井さんにちゃんと罰ゲームをしてるって見せるためのムーブだったわけだ。演技であの破壊力なんて女の子はすごいな……
※演技ではありません。ものほんの反応です。
こうしてより一層、穂乃果に対して角田は勘違いをしないように警戒するようになる。それは穂乃果を今後苦しませることになるのだった。
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