角田ママンはお怒りです!
「おはようございます。ハーレム王!」
「「おはようございます!!」」
「お、おはよう。は、はは」
クラスメイトの男子の一人が挨拶をすると同時に挨拶をしてくる男子全員に苦笑いを浮かべながら返事をする角田。この異常な光景はここ最近の日常風景となりつつあった。
「はあ……ほんと、なんでこんなことに……」
角田は自分の席に着きため息を吐く。
「いいじゃないの?男子からは英雄扱いなんだし」
「よくはないけど……男子からまだいいけどさ……」
そう言って角田は何気なくクラスメイトの女子生徒に視線を向けるとこちらに熱い視線を向けてくる。今にも体に穴が開きそうなほど見られている。それに気づき角田は即座に視線を逸らす。
「ねえ、角田君がこっち見てるよ?私に気があるのかな?もしかしてハーレムの一員になれるかな?」
「馬鹿ね。そんなはずないでしょ?気のせいよ」
「やっぱりそうかなー」
見られた女子生徒はきゃっきゃとはしゃいでいる。
さて、この現象について説明しよう。角田は気づいてなくて不気味がっているが、現在、角田はハーレムの王として英雄扱い。もちろんクラスメイト達は何も本気で角田がハーレム王など目指しているわけでないのは知っている。
しかし、一度二つ名がつくとそこには尾ひれがつくもので……もしかしたら本気で角田はハーレム王を目指しているのでは?
____そんな噂が広がっていた。
しかも、それはクラス内だけではない。学校中でだ。なので角田はどこに行っても女子たちからわんちゃんあるのではないかと狙われているのであった。その結果、起きているのが角田への異常な視線の正体だった。
「ねえ、本当に何が起こっているの!?怖いんだけど!」
そうして本人だけが状況を把握できず怯えているのが現在であった。
「いいの、いいの。いつものだから」
「うん、うん。いつものだね」
「何が!?説明なしなの!?」
そんな状況だが、穂乃果と望は焦っていなかった。女子に狙われている。由々しき事態なはずなのだが、当の角田がこの状況なのだから万が一など起きないと高をくくっているのだ。
「ねえ、今日も一緒に帰ってくれる?なんだか怖くて…」
「ふふ、角田は仕方ないわね」
「仕方ないなー」
それに結果的に他の女子たちを怖がって角田は二人を頼って一緒に家までついて来てもらっているので帰り道が一緒になって穂乃果も望も満足なのだ。
「ありがとう!」
そんな複雑な乙女心など気づきもしない角田は純粋に感謝する。そして、それを最近は繰り返している。循環状態だった。
そうして三人で仲良く帰っている。はたから見ればまさにハーレム状態で。そんな三人を見て他校の女学生たちが呟いていた。
「ねえ、あれって……」
「え、あれがそうなの?」
「きっとそうよ。噂の……」
そして、その結果何が起こるか……皆さんはもう理解しただろう。
「ハーレム王よ」
そう、校内だけでなく町全体にハーレム王の噂が広がったのであった。
「うっ、なんだか寒気がする…」
本能的に角田はそれを感じ取ったのか背中に冷たいものを感じていた。
「風邪?」
「いや、なんというか悪寒的な……」
「何かの前触れだったりしてね?」
「え?や、やめてよ。辻井さん」
「ごめん、ごめん。冗談冗談」
「もう」
そんなのんきな会話をしていた三人だが事態の重さを理解してなかった。ここまで噂が大きくなればおのずとある人たちにも伝わるのだ。
「あれ?誰か角田の家の前で立ってるけど」
「なんだか綺麗な人だね?お姉さん?」
そこにいたのは綺麗で見た目は二十代後半にも見える女性だった。その立ち姿は凛としており、そのスーツ姿は仕事のできる女と言った感じだった。
「あれは……母さん」
「え?……お姉さんじゃなくて!?」
「う、うん」
「全然見えない……」
とても子供を産んでいる女性には見えない。二人は驚愕するも少し落ち着き理解する。あの母あってこの子ありかと。
「母さん……そこで何してるの?」
いつの間にか母親に近づき角田は尋ねる。
「あら、帰ったのね。栄吉」
「うん……」
家族のお出迎えではなさそうだと穂乃果は思った。お出迎えにしてはあまりにも冷たい。無機質なものだった。
「で、その後ろの二人が噂の子達ね?」
「え?噂?何の話?」
「はあ……聞いたわ。あなたハーレム王なんですってね?」
「え?……いや!?違うけど!?」
ここまで大きくなった噂は両親にも届いていた。それを看過できず息子の帰りを待っていたということだった。
「じゃあ、その二人とはどういう関係なの?」
「え、えっと……なんというか……友達…いや……その」
ここで今まで関係をはっきりさせなかったことが仇になった。今までの経緯を話すと結果的にはハーレム王だと言われても言い返せない。何せ勘違いとはいえ一時はハーレム状態だったのだから。
そう考え言い淀んでいるとため息をつきながら角田の母は額に手をやり呆れたように言う。
「……まさか噂が本当だったとはね……本当に……」
「い、いや!ち、違うからね!?」
「どこがよ!後ろの子たちも気まずそうな顔してるじゃない!」
「え!?」
ばっと後ろを向くと確かに二人とも気まずそうな顔をして顔を逸らしていた。
「ちょっと!二人とも!?」
「い、いやね?角田と私はその……友達ではないし……恋人でもないし」
「そ、そうだねー」
「うっ!?」
二人からすればここで話を合わせれば友達認定に無理やり持っていかれる。それは二人にとって今後の恋の戦いには不利になる。故に認めるわけにはいかなかったのだ。そして角田からすれば誤解させたのは自分の責任だと追及しずらい。そういうわけだ。
「つまり本当なのね?」
「そ、それは……」
「はあ、あなたは本当にダメな子ね?」
「え?」
穂乃果は角田の母からでた言葉に心臓が締め付けられた。
「なんでいつもうまくやれないの?ほんと…」
「……ごめんなさい」
(なんで謝るのよ……)
穂乃果からすれば我が子をそんな風に言う角田の母も素直に謝る角田も理解できなかった。親は子の最大の味方のはずだ。それなのに……
「あの!」
「……何かしら?」
角田の母はきつい視線を穂乃果に向ける。それに負けそうになりながら必死に穂乃果は言葉を口に出す。
「え、栄吉君はダメな子ではありません!」
「……それはこの子への愛があるからかしら?」
「そ、それは……ひ、否定しません。でも否定もします!」
穂乃果の言葉に角田の母は呆気に取られていた。しかし、すぐに少し口角を上げて答える。
「それはどういう意味なの?」
「えっと、栄吉君は確かに色々その……」
(母親の前でこんなこと言っていいのかな?)
「いいわ。はっきり言ってごらんなさい」
穂乃果の心を透かすように角田の母は穂乃果に言う。
「は、はい。その栄吉君は残念なところも多々……それは多々ありますが」
「二度言った!?」
「栄吉は黙ってなさい」
「はい……」
母の叱責で反論を封じ込められる。そんな角田を気にしつつ穂乃果は続ける。
「そんな栄吉君ですが、まっすぐで純粋で一生懸命なところがあって、素直に人のいいところを言えたりできるそんな素敵な息子さんです」
仮の恋人だったから穂乃果にはそれがよくわかる。恋人のために身だしなみを整えたり自分が嫉妬して勘違いした際にはカッコいいと言ってくれたり。
「そんな栄吉君のことが私は大好きです!」
そんな角田のことが穂乃果はずっと好きなのだ。
「へーなかなか男前な子ね?ね?栄吉?」
「う、うん……」
さすがにここまでまっすぐな感情を向けられたら角田も恥ずかしくて顔を赤くなる。
「うん……気に入ったわ!」
そう言って角田の母は穂乃果の肩を抱き笑う。
「上がって行きなさい!」
「は、はい!お、お邪魔します」
そうして二人は家に入っていく。残されたのは角田と望だけ。
「えっと、僕たちも上がろうか?」
「……私も好きだから…」
「え?」
ぽつりと望は告げて角田の家に上がって行く。
そしてついには角田だけになった。
「これって……ハーレム……なの?」
そうしてやっと角田は現状があまり否定できない状態だと改めて自覚するのであった。
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ういー角田だぜー!
オレ・ハーレム・確変・突入!!
イエーイ!
次回!!
え?親公認のハーレム?何それ?おいしいの?
お楽しみに!




