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クラスの陽キャが僕と罰ゲームで一ヶ月付き合うことに。別れる前提で全力で恋人を楽しんだら、彼女が別れたがらない。  作者: 水海雫
第二章 恋煩い

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新たなる道。

「はあ……」


角田は授業の内容など聞けずに机に項垂れ大きなため息を吐いていた。それもこれも先日の静流の幼馴染。通称けんちゃんのせいだった。


(……僕だけが浮かれてた……そして、NTR野郎になっちゃったよ……)


二重苦だった。


一つは自分の思いが一方通行だったこと。もう一つは意識せずにNTRをやる側に回っていたこと。どちらも角田にはショッキングな話だった。


角田は横目でちらりと少し離れた席にいる彼女、仙波静流を視界に入れる。彼女は凛とした顔で黒板を見て教師の話を聞いている。そこには先日見せた恥ずかしがって照れて慌てている様子など微塵も感じなかった。


(あんな顔するんだな……)


先日、けんちゃんと話していた彼女はまさに角田が知るアニメや漫画などでよく見る恋する乙女の顔だった。


「……僕じゃああんな顔させられない……でもなんだろうこの気持ち……」


小さな呟きは誰にも聞こえない。実の両親すら笑顔にできなかった。そんなコンプレックスが彼を苦しめる。だが、同時に角田は何故か興奮していた。


それは不思議な感覚だった。そう、まるで恋愛アニメや恋愛漫画の風景、いやヒロインを見ているような気持になっていた。そして、自然と彼女を応援したくなっていた。


(まさか……これが推し!?)


※角田の人生で初めて推しができた瞬間だったとか。


それも納得の結果だったのだろう。あくまでタイプの女性だった。故に緊張してドキドキした。それは性欲と言うものから来る大量のシグナル。それを角田は恋愛感情と勘違いした。言葉にすれば簡単な話だ。


そもそも角田に性欲から来るドキドキと恋愛感情から来るドキドキの区別などできるはずもなかったのが原因だった。


____青い春は幻だった。つまりはそういうことだ。


(何とかしたいな)


見る限り静流にはけんちゃんと言う想い人がおりけんちゃんも静流を想っている。つまり両思い。ぜひとも二人には幸せなハッピーエンドを味わってほしい。なので角田のやることは決まっていた。


キーンコーンカーンコーン。


そうしているうちに授業は終わり角田は即座に席を立つ。


「うん?角田どうかした?」


あまりに真剣な目をした角田を見て穂乃果は心配そうに聞く。


「……なんでもないよ」


ただ一言そう告げて彼は教室を一人出て行くのだった。


________________


「……もしもし?父さん久しぶり……」


「ああ、栄吉か……何の用だ?」


久しぶりに聞く《《息子》》の声は少し元気がなさそうで、何か言いたげだった。


「婚約の件なんだけどさ……やめられないかな?」


「やめる?なぜだ?」


相手は栄吉の好みのはずだったはずだが……


「えっと、彼女には好きな人がいて応援してあげたいんだ…」


息子の声はまっすぐだった。それだけで十分だった。


「そうか……お前の好きにしなさい」


「好きにしていいの!?」


※いつものやつ発動しました。


「うん?あ、ああ」


角田の異常に嬉しそうな反応にパパンは違和感を覚えながらも肯定する。


「ありがとう!父さん!僕、推し活頑張るよ!じゃあ!」


「お、おい!推し活ってなんだ!?……切れたな……」


そうして息子から久しぶりにかかってきた電話は切れることになった。しかし、パパンは満足していた。


「……まあいいか」


なんだか楽しそうな息子の声を聴けただけでいいとしよう。あとは些細なことだとパパンは少し口角を上げるのだった。


※些細じゃない!止めてくれ奴を!


________________


角田が教室に戻り一番にしたことは単純なことだった。それは静流への応援だった。


「仙波さん、今日はけんちゃんは来ないの?」


「え、ど、どうかしらね」


「来てくれるといいね」


「な、なんで?」


角田は動揺している静流ににっこりしながら告げる。


「だって、好きでしょ?けんちゃんのこと」


「!?」


その言葉に静流だけではなく教室中が凍り付いた。


(何言ってるの!?この人!?)


それは教室にいる全員が思ったことだった。もちろんその中には穂乃果や望もいた。


「い、いきなりどうしたの角田?」


「そ、そうだよ。あんなに浮かれてたじゃん」


二人からすれば先ほどまでは初恋に浮かれていたのに急に変な方向にノリノリなのだから驚くのも無理はない。


「……うん。佐藤さんも辻井さんもごめん。僕は分かってなかった。僕にとって彼女、仙波千鶴さんは……推しだったんだ!!」


「え?……うん?推し?」


「うん!推し!僕に今、必要なのは新たなエンジョイライフ!つまり推し活だってね!」


「えー……」


二人はまさかの方向転換に呆れていた。そして思う。これが角田だと。


「じゃ、じゃあ仙波さんに恋愛感情はないの?」


「うん。今あるのは推しへの愛だけだよ」


「そ、そう」


その言葉を聞いてようやく穂乃果は安心した。


※自分で塩を送ったのに不憫なものだ。


「……推し活……」


しかし、静流は完全に引いていた。角田の突然の発言に笑顔はなく引きつった顔をしていた。しかし、そんな彼女のことなど気にすることもなく角田は静流の手を取って両手で掴む。


「安心して!父さんからも許可はもらったから!これからは推しとして全力で仙波さんの恋を応援するよ!」


「え?お、お父様も許可してくれたのですか?」


「うん!好きにしなさいって」


「そ、そうですか」


(ど、どうなってるの!?この親子!?)


推し活に目覚めパワーがみなぎっている角田と違い静流はこの状況に恐怖していた。


(あちらから婚約を頼んできたのに急に推し活希望!?というか推し活って私アイドルとかじゃないんですが!?)


意味が分からないしもはや普通に怖かった。それが静流の感想だった。


「と言うことでこれから改めてよろしくね?」


「……は、はい」


目の前の理解しがたい状況に抗うこともできずにただ、静流は静かに肯定するしかできなかったのだった。


_______________


次回!!


第二のエンジョイライフ!!


角田の推し活は止まらない。


お楽しみに!ふふふふ










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