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クラスの陽キャが僕と罰ゲームで一ヶ月付き合うことに。別れる前提で全力で恋人を楽しんだら、彼女が別れたがらない。  作者: 水海雫
第二章 恋煩い

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濁った青い春。

角田の人生初の人工物で出来た春はそれは見事に満開だった。


それはふとした瞬間だったり。


「仙波さんの髪はきめ細やかそうで綺麗だね?」


「そう?ありがとうね角田君」


または学校の帰り道だったり。


「仙波さん、車道側は僕が歩くよ。危ないからね」


「あら、ありがとう」


とにかく様々な言葉や態度で彼女に自分の気持ちが届くように角田は徹した。それは穂乃果の時の偽物の恋人生活の時と違い上辺だけのものではなかった。


そうして彼女、仙波静流が転校してきて三日がそろそろ経とうとしていた。まさに角田は順調に彼女に尽くしていた。しかし……


「……ねえ、穂乃果。どうしてくれるの?角田本気だよ?」


「……ごめん……今更すっごい後悔してる……」


穂乃果と望は完全に角田に放置されていた。一時は友達以上恋人未満と言う席にいた二人だが、穂乃果の叱責で角田は覚醒。そのせいで現在二人の価値は完全に角田の中で薄らいでいた。


と言うより角田は夢中で視界の中には静流しかいないという状態だった。挨拶もするし話もする。しかし、前にあったぎこちなさはない。それはいいようにも思うがつまりある一定の緊張感がなくなったというわけであって決してプラスなものではなかった。


「でも、なんか変な感じがするんだよね」


「変な感じ?」


一件順調そうな角田の春だが、望は奥歯に何かが挟まっているかのような妙に居心地の悪さを感じていた。


「うん…なんていうか仙波さんの反応が気になってね」


「たしかに仙波さんは角田からの純粋な気持ちを受け取っても涼しげにしてるし……妙に冷めてるというか……」


「そう!それなの。望んだ結婚じゃないとか?」


「うーん。今回の結婚は角田の両親に助けてもらってその対価で結ばれたものだしそうなのかも?」


同じ女の子で女性の二人は仙波静流のその妙に落ち着いているところに気づき二人で議論を交わしていた。しかし…


「仙波さんは爪まで綺麗で素敵だね!」


「ふふ、ありがとう」


我らが角田は全く気付きなどしてなかった。それもそうだろう。今までの経緯を知ればだれでも予測はついたことだ。


「はあ、角田は全然気づいてなさそうだね?」


「……だね」


そんな滑稽に見える角田だが、二人の心は冷めはしていなかった。どこまでもまっすぐで素直な角田だからこその結果だ。それが角田の長所で短所だと分かっている。故に角田に呆れたりしても嫌いになどなるはずはなかった。


「……このまま本当に結婚するのかな……」


「……どうかな…」


望の問いに静かに答える穂乃果。分からないと言いながらその心はただ一つの思いが確かにあった。


(このままじゃ嫌だな…)


答えなど佐藤穂乃果は最初から決まっていた。このままで角田との関係が終わるなんて納得はしない。


「……私は諦めないから。絶対に」


「穂乃果……」


そう強く宣言する穂乃果を見て望は改めて彼女の決意を感じる。


(そうだよね。お母さんの分まで頑張らなっくちゃいけないもんね……)


※穂乃果ママは存命です。勝手に殺さないでください。


「私もあきらめたくない……」


望の勘違いは結果として望自身も奮い立たせるものになっていた。


だから、まずは手始めに自分達から角田と同じでまっすぐな好意を伝えようと席を立ちあがった。その瞬間、教室のドアが勢いよく開く。


「このクラスに角田栄吉ってやつはいるか!」


開くと同時にいかにも強面といった男が大きな声で告げた。その堂々さに席をちょうど立った穂乃果と望も唖然としていた。


「おい、あんた誰が角田だ?」


「え?」


男は偶然立っていた穂乃果に声をかける。


「だから、角田栄吉はどいつだって言ってるんだよ」


「あ、ああ。角田はあそこ」


そう言って穂乃果は角田を指さす。その先を見て男は舌打ちをする。


「ちっ、噂通りのイケメンかよ……」


男は小さく悪態をつきながら角田に近づいていく。そうして角田と静流の前に立つ。そして、角田を一瞬見てから口を開く。


「え?だ、誰?」


男は角田の問いに答えずに静流を一直線に見て言う。


「よう、静流」


それはまるで昔なじみのように気軽だった。


「……何の用なの……けんちゃん」


静流は少し目線を男、けんちゃんから逸らして答える。


「え?知り合いなの?そ、そのけんちゃんさんと…」


角田の問いに静流は何答えずにただ目線を逸らすばかりだった。その代わり男、けんちゃんは大きく反応する。


「お前がけんちゃん言うな!!」


「は、はい!ごめんなさい!」


あまりに勢いよく怒られたものだから角田は終始謝る。


「で、そ、その君と仙波さんはどういう関係なの?」


この地点で角田は背中に冷や汗をかいていた。それは勘違いを自覚したときと同様にとてつもなく嫌な予感がしていた。


「ふ、俺と静流は幼馴染で将来を約束した者同士なんだよ」


「ちょっと!昔のそれも幼稚園の頃の話でしょ!?」


「なんだよ。嫌だったのか?」


「そ、それは……」


尻すぼみに小さくなる声。耳まで真っ赤でまるで桜のようにピンク色の彼女。それはまさしく春を感じるものだった。


そんな彼女を見て一目で角田は分かってしまった。


(僕は彼女の春ではないんだな……)


彼女にはすでに春が来ていた。しかもずっと前から。


え?と言うかそれって……


ここで普段は鈍い角田も気づく。


自分が完全に悪役。いや、NTRをしようとしている立ち位置にいると。


(いや、いや。そ、そんなわけ……)


「と言うわけだ。見てわかるよな?俺と静流はお互い思いあってる。だから角田栄吉、お前は俺の敵だ!絶対に相手の弱みに付け込んだ婚約なんて俺は認めないからな!」


けんちゃんの中では完全に角田はエロゲで言う竿役になっていた。それは純愛ゲーマー全員の宿敵致し方ないものだった。


(僕も純愛派なんだけど!?)


と言うわけで改めて角田の間違いだらけの春は始まった。


______________


次回!


青い春を横から見るのも恋愛アニメを見てるみたいでいいよね。


お楽しみに!












読んでいただき、ありがとうございます。

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