イケメン金持ち角田君
翌日、いつもの通学路。
「ちょっと、あれ誰?」
「え?誰だろう?すごいイケメン……」
角田は目立っていた。
背筋はまっすぐ、髪は短く切り揃えられており清潔勘強め。眼鏡はコンタクトに。恋人ライフを楽しむため、彼は全力だった。
(やけに、視線を感じるけど……まあいいか)
しかし、当本人はそのあまりの変わりように無頓着だった。少し整えたぐらいにしか考えていなかった。故に周りからの評価がうなぎのぼりなことに気づかなかった。
教室のドアを開けると視線が一斉にこちらに向かって注がれる。角田は少し緊張して一歩踏み出し教室に入る。
「え?何あのイケメン?」
「ほかのクラスの人かな?」
女子たちは一瞬で分析開始する。
「すげーイケメンだな。羨ましいな」
「だなー」
男子からは尊敬のまなざしが注がれる。
そんな視線の嵐の中、角田は一直線にある場所に向かって進む。
「おはよ、穂乃果」
「え?」
目の前にいる角田を前に佐藤穂乃果は固まった。どう見てもタイプど真ん中男性が目の前に立っていた。しかし、驚くべきはその男性には見覚えがあったことだ。
「か、角田なの?」
彼女は顔を引きつらせながら、尋ねる。
「う、うん。どうかな?眼鏡じゃなくてコンタクトにしてみたんだけど……似合ってる?」
角田の言葉に教室が一斉に静まり返る。そして、慌てふためきだす。
「う、嘘でしょ!?あの角田!?」
「お、俺角田なんかに憧れたのか……」
女子はその変わりように動揺し、男子は謎の敗北感を味わっていた。まさに下克上だった。しかし、当の本人はそんな周りの声など聞こえておらずただ、彼女の返事を持っていた。
「い、いいと思う。うん…いい」
「よかった……」
角田安堵し笑みを浮かべる。彼からすればたわいない笑顔。だが、その笑みは女生徒たちを虜にしていく魅惑の笑顔だった。
「はあ、メロい……」
「やばい……」
全自動沼らせ機の完成であった。
「で、でもいきなりどうしたの?」
「そ、それは……」
さすがに偽恋人ライフエンジョイのためとは言えない。角田は視線を宙に彷徨わせて言い淀む。
「それは?」
背中に冷や汗が流れる。脈は加速していく。何か言わなければ。
「穂乃果に見合う男になりたくて……」
とっさに出た言葉は完全に口から出まかせだった。
(何言ってるの僕!?そんな薄っぺらい嘘ばれるに決まって……)
「そ、そう……へへ」
穂乃果はご満悦だった。
無理もない。タイプの男性にそんなことを言われて喜ばない女性はいない。頬を赤らめうつむき彼女はだらしがない笑みを浮かべる。
(よ、よかった……何とかごまかせた)
しかし、そんな彼女の様子は角田の目には一切映っていない。そんなことより恋人ライフが破綻しないかそれだけに意識が持っていかれていた。
「でね。放課後、僕の家来ない?」
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※ここからは穂乃果視点です。
「え!?」
(こ、この童貞勝負を仕掛けてきてる!?)
穂乃果の内心は大騒ぎであった。生まれてこの方、穂乃果は異性と手をつなぐのでさえ昨日が初めてだった。なのに、この急展開。
(も、もしかして意外と慣れてるの?)
素材はいいのだし、もしかしてそういうお友達が一杯で酒池肉林なの!?彼女の思考は加速していく。
※角田君は純粋なる童貞です。
「だめかな?穂乃果とたくさん……したいんだ……」
※彼はアニメの話をしたいだけです。
まるで子犬のような角田の瞳。その瞳は穂乃果のハートを正確に打ち抜く。
キュン
「い、いいよ」
「本当!?じゃあ、今日の放課後ね!絶対だからね!」
角田は嬉しそうに微笑み無邪気に喜ぶ。その心には一切の邪念はない。ただ、彼は最高の恋人ライフを楽しみたいだけなのだから。
「そ、その下準備はどうするの?」
「それなら任せて!こんなこともあろうかと昨日のうちに準備は済ませてあるんだ!」
※食べ物や飲み物のことです。ゴムのことではありません。
「そ、そう……やる気満々なのね?」
「うん!」
あまりの無邪気さに穂乃果は角田が輝いて見えた。今まで言いよって来た男たちも皆下心が丸出しだった。しかし、ここまで純粋な下心は見たことがない。
※完全に彼女の勘違いです。角田はただの童貞です。
楽しみだな。
初めて二人の気持ちがリンクした。
そんな時は時間の流れは速い。あっという間に放課後だった。穂乃果は彼に手を引かれて彼の家に向かう。
「ここが僕の家だよ」
「え?こ、ここ?」
角田の家は大きかった。庭にはプールがついておりまるで外国の富豪たちの家のようだった。
「か、角田ってお金持ち?」
「僕じゃないよ。両親がお金持ちなだけだよ。それより入って」
「う、うん。お邪魔します」
角田に言われるまま家に入るとそこは広い玄関。
(私の家の何倍あるんだろう……)
「うん?どうしたの?」
「え、いや。広いなって思って……」
「ああ、無駄だよね」
彼からすれば庭のプールもこんな大層な玄関もいらない。角田が求めるものは順風満帆な恋人ライフのみなのだから。
「二階が僕の部屋だよ」
ずんずん進む角田の後姿に穂乃果は緊張がピークに達していた。部屋に入ればもう後戻りできない。しかし、不思議とためらいもなかった。
(あんなまっすぐな好意を向けてくれる人なら初めてを捧げてもいいのかも……)
「どうぞ」
角田がドアを開けて私を誘っている。まさに魅惑の誘いだ……
※そんな事実はありません。
私はそんな誘いに逆らえず足を一歩部屋に踏み入れる。
(あ、入っちゃった……)
ここで、私は大人になるんだな……
もはや彼女は悟っていた。まさに賢者モードであった。
ガチャン。
角田が部屋のドアを閉める。
「さあ、始めようか?」
そう言って微笑む彼は無邪気そのものだった。しかし、その裏にはいったいどんな欲望が隠されているのだろう……
次回、楽しいアニメトーク!
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