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クラスの陽キャが僕と罰ゲームで一ヶ月付き合うことに。別れる前提で全力で恋人を楽しんだら、彼女が別れたがらない。  作者: 水海雫


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3/3

角田君にはお見通し

※引き続き穂乃果視点になります。


角田が近づいてきて私は壁際に追いつめられる。


(く、来る)


私は覚悟を決めて目を閉じる。さらに角田が近づいてきているのを感じる。彼の吐息が私の耳元で鮮明に聞こえる。来る!?


(く、来るなら来いやー!!)


穂乃果はやけくそで心の中で叫びをあげる。今の彼女ならどんなえげつないプレイでもいけるだろう。それほどの覚悟だった。


「よし、まずは原作の話からしよう!」


角田は穂乃果の後ろにある本棚から漫画を取りだしてそう告げる。


「え?」


「うん?」


ま、漫画?

ど、どういうことなの?

私はこれから角田にどぎついプレイを要求されるんじゃないの?


※完全に飛躍した彼女の想像です。


「ね、ねえ。今から何するの?」


穂乃果は言い淀みながら恐る恐る聞く。


「何って、アニメトークでしょ?そのためにまずは原作から見ていこうかなって……どうしたの?」


角田は私を見て心配そうにこちらの様子をうかがってきていた。私は羞恥でただただ、顔を赤くさせることしかできなかった。


「な、なんでもない。アニメの話ね。オーケー……」


「そう!アニメの話!で、教えたアニメ見てきてくれた?」


「す、少しだけなら……」


嘘であった。昨日の穂乃果はアニメどころではなくアニメは一切視聴していなかった。


「分かった!じゃあ、原作の一巻から改めて見てみよう!」


「わ、分かった」


そうして穂乃果の予想した展開とは違うが彼との濃密な時間が始まった。


二時間後。


「この作品すっごい面白いね!」


「でしょ!特に一話の主人公の迷いながらヒロインを守ることを選ぶシーン何て最高だよ!」


「分かる!エモいよね!」


二人は完全に同調する。初めは仕方なくだった穂乃果も思いのほか面白くて今では純粋に角田とのトークを楽しんでいた。


「ふふ」


急に角田がとても嬉しそうに微笑みだした。その笑みは穂乃果の体温を一気に熱くさせる。まるで夏のような暑さだった。


「な、なに?」


私はなるべく平静を保ちながら彼に尋ねる。しかし、背中には大量の冷や汗を流していた。


「あのね、僕すごくうれしいんだ」


「嬉しい?」


「そう、嬉しいんだ。誰かとこうして好きなアニメの話をできて、しかも一緒に原作まで読んでくれてこんなに楽しさを共有できるなんて夢みたいだ……」


彼は宙に視線を彷徨わせてまるでこの空間や雰囲気をを楽しむように噛み締めるように語る。その顔はなんだか夢の中にいるようでふわふわしているように見えた。


「大げさじゃない?そんな大したことじゃ……」


「大したことだよ!」


角田は興奮のあまり穂乃果にずいっと体を近づけて強く言う。そのせいで穂乃果の体温はさらに急上昇する。もはや沸騰前であった。


「そ、そんなになの?」


「うん!」


角田の笑顔は純粋でとてもにこやかだった。それは本当に純粋な喜びなのだろう。今の彼からは一切の下心も気遣いも感じない。きっと本当に素直な気持ちなのだろう。


(本当に嬉しいんだ……)


そう理解した瞬間、穂乃果の中の熱は急激に冷めていった。そして、なくなった熱の代わりに胸の中は罪悪感でいっぱいになった。


角田はただ純粋に私と付き合えて喜んでくれている。なのに私は彼の顔が好みだったからってはしゃいで浮かれていた。私にはそんな資格はないのに……


(このままじゃいけない……)


「角田、あのね……」


穂乃果は足の指をもぞもぞさせながらなんとか彼に真実を打ち明けようと口を開くが言葉は出てこない。そんな穂乃果を見て角田は小さく微笑みながら言う。


「全部、分かってるよ」


「え?」


角田の言葉に穂乃果は固まった。


「そ、そうなの?」


「うん」


静かに頷く角田。真剣な表情の彼を見て穂乃果は確信する。彼はすべてをお見通しなんだと。


「あのね!私!」


「いいんだ。いいんだよ」


彼は優しく笑う。その表情に私の胸の痛みは激しくなる。


(そんな顔しないでよ……優しくしないで)


私は何も言えずにただうつむき膝の上で手を強く握っていた。


「いいんだ、お泊りしたって」


「え?」


お、お泊り?聞き間違い?


「お、お泊りって……どいうこと?」


「穂乃果は僕とまだまだ語りたかったんだよね?だから泊りたかった。でしょ?」


えーー……


角田の回答は完全に斜め上のもので穂乃果は困惑していた。しかし、不思議と安心もしていた。


「ごめんね。いきなり彼氏の家にお泊りなんて言いずらかったよね。僕が早く察していればよかったよ」


「い、いやそうじゃなくて……」


「大丈夫!あとは僕に任せて!」


彼はそう言ってどこかに電話をかける。


「あ、もしもし母さん?実はお願いがあって家に彼女泊めてもいいかな?」


え!?お母さんに素直に言った!?

さすがにまだ付き合いたての息子の彼女を家にお泊りなんて許してくれるわけ……


「うん。うん。分かった」


角田は電話切ってこちらに満面の笑みで言う。


「許可とれたよ!」


「え……」


それでいいの角田家……

さすがに貞操観念ゆるゆるじゃない?

やっぱり普段から女の子を招き入れていたのかな……


「他の女もこうして家に招き入れてるの?」


穂乃果の口からは自然とそんな言葉が漏れる。その声は彼女が思っているよりもとげとげしくきついものだった。


「え?穂乃果が初めてだけど?どうして?」


「だって、お母さんがあっさり許可出してくれたから普段から女を招き入れてると思ったの……」


「ああ、それはうちの両親が基本的に放任主義で家に帰ることも少ないから適当なんだよ。両親は仕事の邪魔にさえならなければ基本寛容だから」


「それって……」


私は小さく呟くが完全に言い切る前に口を閉じる。触れてはいけないような気がしたからだ。しかし、あまり言いたくはないが角田の両親は息子のことに興味がないのではないのだろうか……


そう考えると彼が異様に人と楽しいことを共有して喜んでいたことが自然に思えてくる。一番共感して喜んでくれるはずの両親がそんな状態ならそうなっても不思議じゃない。


「これで、問題なく泊まれるね?」


「そ、そうだね」


そんな彼の背景をうっすらと知った穂乃果に断るという選択肢などなかったのだった。


______________________


そんなことをつゆも知らず角田は考えていた。


よし、よし。

これで、まだまだ佐藤さんと語り合えるぞ!しかも、彼女とのお泊りって言う重大なイベントを体験できて一石二鳥だ!


(次はアニメのほうも見て見ようかな!ああ、楽しみすぎてたまらないなー!ほんと恋人ライフ最高!!)


 





読んでいただき、ありがとうございます。

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