謝って済むなら警察はいりません。
「ねえ、辻井さんなんでだと思う?」
「……それ本気で聞いてる?」
涼しい店内の中ゆっくりと飲み物を飲んでいた辻井さんに佐藤さんが別れてくれないのだけど何故かと聞いていた。彼女とはネックレスを上げてからというもの順調に友情を育んでおりよく二人っきりで会うことが増えた。しかし、そんな彼女からの返答は凍えるような冷たい声だった。
※望は穂乃果に気を使って隠れて二人っきりで会ってハーレムが壊れないようにしているだけです。
「ど、どういう意味?」
「自分の言動を思い返したら?」
冷たく言い放され、僕は改めて過去を振り返る。
しかし、どうにもうまくいってたように思う。僕は恋人ライフをエンジョイしていたし、佐藤さんも嫌ながらも恋人を演じてくれて途中からは快く僕に付き合ってもらった。うまくいってたはずなんだけど……なんで別れてくれないの?
「…………将来はもっと仲良くなろうねって……それにネックレスも……自分やったことでしょ?」
「え?う、うん。将来(別れた後)はもっと仲良くなろうって言ったね?ネックレスはこれからも仲良くしようねって……それがどうしたの?」
「は?……あれは期限が来ても別れる気がないって宣言でしょ。そしてネックレスは私と穂乃果への愛の言葉でしょ?」
「え?」
「え?」
ここで二人の勘違いが交差し交わる。簡単なことのはずだった。少し考えれば違和感に気づけたはずだ。しかし、角田は恋人ライフに、望は恋というものに酔っていた。それが原因で気づけなかった。
「ま、待ってあれは将来。つまり別れることになってもお友達でいようねって言う話で……つ、辻井さん?」
よく見れば望はフルフル震えていた。それは火山で言いうなら噴火の直前の合図だった。
「このアホーーーーーーー!!」
店内に大きく望の声が響き渡る。それは自然と注目を浴びることになり周りからすさまじい視線を感じる角田。だが、望は決して止まらない。
「ぐえ!?」
そのまま望は勢いよく角田の胸ぐらを掴み鬼の形相で角田を睨みつける。ほとんど顔と顔が0距離だった。
「角田……少し面かせ」
「ひ、ひいいいいいい」
そうして角田は望に引きづられながら連行される。二人が去った店内は嵐が去った後の荒野のように静かだったとか。
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「………つまり一切求愛的な行動をとったつもりはなく偶然の産物だと?」
「は、はい……」
望は自分の家に角田を連れ込み正座させて徹底的に今までの言動の意味のすべて聞いた。結果、そのとんでもない言動の本当の意味をすべて知ることになった。そんな彼女の心の内は非常に複雑なものだった。
(あっぶなかった!あと少しで取り返しのつかないところだったよ……)
そう喜ぶ彼女と……
(そうか……私のことを好きなわけではないのか……)
という自分でも分かるほどの不謹慎なものだった。
彼女からすれば自分には可能性がないと思った矢先のハーレム宣言。そして、あのネックレス。自分だけを選んでほしいと思いながらもその実もう少しで完全に二番手でもと納得するとこだった。
「角田、アイビーの花言葉は?」
「友情……だけだと思ってました……」
「はあ……」
望は角田に呆れて大きくため息を吐く。そして、角田は角田で自分の過ちにひたすら冷や汗をかいていた。
(ど、どうすれば……どうすればいいの!?)
状況はまさにカオスそのもの。
自分のせいだが知らぬ間に結婚の約束+密かにハーレム建築。と言うとんでもない事態になっていた。しかも、ハーレムは佐藤さんは知らない。
「ぼ、僕二人に……殺されるかな?」
「……殺しはしない……ただ、私はともかく穂乃果には泣かれるし怒られるだろうね」
「だよね……」
むしろ殺されたほうが楽だと角田は思う。何せ罰ゲームだと知ってそれを利用して恋人生活をエンジョイ。そして紛らわしい言動で彼女たちにとんでもない勘違いをさせた。いくら初めは彼女たちが悪くてもここまでくれば十分許されがたい事態だ。
「……責任を取って佐藤さんと付き合えばいいかな?」
「……私に聞かないでよ」
「そ、そうだよね……」
それもそうだ。望も角田が好きでハーレムを受け入れた。そんな自分に好意のある人間に聞くことではなかった。
「……少なくても私はそんな気持ちの無い交際は嫌だ」
「……」
それでも望は小さく答えてくれた。しかし、それは角田も分かっていた答えだった。それは誠意とは言わないし謝罪にもならない。むしろもっと相手を傷つける行為。
「はあ……とにかく穂乃果の誤解を何とか解かないとね」
「え?協力してくれるの?」
「……そもそも私が原因でもあるしね」
「つ、辻井さん!!ありがとう!!」
「ちょっと!?」
角田はこんな自分のために協力を申し出てくる女神のような存在に感動し望足に強く抱き着いた。
望はこれが勘違いの元になると分かっていながらも惚れた弱み故強く引き離すことができなかった。
「ちょっと、いい加減に……」
さすがに何とか引き離そうと望が声を大きくしようとした瞬間だった。
「私の望ちゃんから離れなさい!!」
玄関から大きな声が響く。そこには望によく似た綺麗な女性が包丁を握り締めながら立っていた。その声に二人は完全に動きを止めて固まっていた。
「つ、辻井さんのお姉さん?」
「えーと……私のママだよ……」
「え?」
角田の目の前にいる女性はどう見ても若く大学生にも見えるほど。とてもじゃないが一児の母親には見えなかった。
「ほ、褒めても見逃さないからね!変質者!」
「へ、変質者!?」
「そうでしょ!望ちゃんの足に欲情して抱き着いてるんだから!」
「え!?い、いやこれは違うんです!ご、誤解なんです!!」
「ひ、近づかないで!」
角田は先ほどのこともあり勘違いには敏感になっており慌てて誤解を解こうと望の母親に近づく。しかし、包丁を握っているのでお互いお見合い状態だった。
「はあ……ママ……誤解だよ」
「え?………い、いつもの?」
「うん。今日も勘違いだよ」
「よ、よかった……」
望の言葉を聞き望の母親は包丁を床に落として安心したのか座り込む。
「ちょっとママ大丈夫?」
「ええ……何時もごめんなさいね」
「気にしないで……ただ、包丁はやめてね?」
「う、うう。ごめんなさい」
そんな親子の不思議なやり取りを見ながら角田は呆然としていた。いつも?どういうことだと。
「ねえ、いつもってどういうこと?」
そう角田が聞くと望は少し顔を微笑ませながら告げた。
「……私のママは勘違いをよくするの」
「勘違い?」
「そう、今の穂乃果みたいにね」
佐藤さんのように……
その言葉は角田の脳内に電流を走らせる!
「師匠たち!!」
「え?な、なに!?」
角田は即座に辻井親子の前に膝を着き頭を深く下げる。
「どうかうまい誤解の解き方をお二人に伝授いただきたく思います!!」
それはそれは深く下げられた頭に望は母は目を丸くして言う。
「望ちゃんこの子は私以上に変な子ね?」
「……みたいだね……はあ」
角田の受難?は始まる。そして望の惚れた故の苦労生活も。
次回!
必勝!誤解達人の教え!
行くよー! ジャンケン パー!
ふふ、次回もお楽しみに!
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