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社畜に異世界は生ぬるい〜奉公から始まる楽勝平民ライフ  作者: 明和里苳


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91/105

第91話 玄関開けたら

 玄関開けたら、二分で揉め事。


「改めて、ようこそ王都へ。私がここの主人、パトリシオだ。そしてこちらが妻のペネロペ、娘のバネサ」


「ふふっ。ピオにロドリゴ、お義父上から噂は聞いているわ。今日からよろしくね?」


「いいこと? 私が次代のペラモスことバネサよ。せいぜい私に媚びて尽くすことね?」


「おやおやバネサ、気が早いね?」


 ははは、うふふ、じゃねぇよ。とんだバカ親にクソガ……お転婆お嬢様じゃねぇか。世間を愛想だけで渡り歩くピオ氏がフリーズしてるぞ。ええい、仕方ない。


「あのっ、歓迎誠にありがとうございます。さて、本日からの我々の仕事と住まいのことなのですが」


「あらっ、そんなに急ぐ必要はなくてよ? 今日は客間でゆっくり過ごして、詳しい説明は明日からでも良くて?」


「え、ええ。ありがたきご配慮を賜りましt」


「そんなことはどうでもいいの。それよりアタシにレシピを提出しなさいって言ってるでしょう? お祖父様から聞いてないの?」


「はっ? プラシド様?」


「だから、ちっさい方は黙ってて! アンタ、アタシの婿に迎えてあげようって言ってるんだから、そのくらい用意しておくべきでしょう?!」


「婿?!」


 ドカーン。巨大爆弾が投下されて、呆気に取られていたピオ氏が目を剥いた。




「うわあああん! アタシの婿が、そっちの冴えないチビなんて! あんまりよ!!」


 自己紹介から、二分で爆死。


「だから言っただろう、バネサ。ロドリゴは君よりも年下だと」


「彼は才能ある若者よ? 将来有望だわ?」


「イヤよイヤよ! そっちのイケメンの方がいーい! そんなモサいチビは、パーティーでもえなぁい!!」


「ああー、ピオ君を婿にするわけには、うーん」


「バネサ、ワガママ言わないの。確かにロドリゴは映えないけれど、彼は金の卵を産むガチョウよ? 離してはいけないわ?」


「ママはまたそんなこと言って! お父様の顔に一目惚れして、外堀から埋めて嵌めたくせに! 自分だけイケメンを捕まえるなんて許せない!!」


「あらあら、またこの子は夢見がちなのだから。おほほほ」


「バネサ。私たちはちゃんと愛し合って、君が生まれたのだからね?」


 騒がしい対岸に、沈黙の此岸しがん。俺たちは、とんでもない魔境に足を踏み入れてしまった。アマゾンの奥地もびっくりだ。


「ああ、旦那様に奥様。彼らは長旅で疲れております。さあお二人、すぐに客室に案内しましょう」


「そうねバレリオ、そうしてちょうだい」


 そうして俺たちは、悲劇の爆心地から撤退したのだった。




「さてお前たち。今日は客間を用意してあるが、南の居住区に寮の準備も整っている。ただし、本店と違って借り上げのアパートだ。衣食住は基本的に自分で。だが、付近には安価な食堂や洗濯屋もあるので安心するといい。案内させよう」


「あ、ありがとうございます」


「くれぐれもバネサお嬢様に懸想などせぬように。今は大旦那様も奥方様も新事業に惑わされていらっしゃるが、お嬢様はこのペラモスを継がれる方。関連商家とっても大事なお方だ。間違っても庶民の婿などあってはならん。わかるな?」


 いや、頼まれたって無理だが。この三十分ほどで、王都転勤を死ぬほど後悔するほどには、心証最悪だ。


 目も合わせないバレリオ氏に一方的に捲し立てられた後、俺たちは追い立てられるようにして、裏口から出されたのだった。

追記・


「くれぐれもバネサお嬢様に〜」のセリフのうち、「まだ登場させていない固有名詞」→「関連商家」という表現に改変しました。


2026.07.25


皆様、いつもご愛読ありがとうございます!

さて、本日で拙作「スキルが生えてくる異世界に転生したっぽい話」一巻の発売より一年が経ちました。

https://www.kadokawa.co.jp/product/322503001138/

これもすべて、皆様の温かい応援の賜物です。

心より感謝申し上げます!


連日猛暑や大雨などが続きますが、皆様どうか御身お大事に。

どうか美味しいものを召し上がって、楽しいこといっぱいの素敵な夏をお過ごしくださいね!

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