第71話 イベンターへの道
投稿遅刻しました、ごめんなさい!
「いやー、我ながらイベンター業って向いてると思うんですよね」
「イベ……なんだいそりゃ」
水曜日。パロマさんのお店でバイトを終え、お店を畳む時間だ。そろそろりんごが終わり、オレンジ一本の季節を迎える。だいぶん涼しくなってきたなぁ。
日曜日の合コン、無事に終わってよかった。思いついてすぐに開催したため、男女比にはいささか問題があったが、試食会に被せたため、会費もなし。一流店で最新グルメのおまけ付きだ。おかげで女性陣にはものすごく好評だった。次回はいつだと尋ねられたほどだ。
やはり成功の鍵は、スポンサーを得たことだと思う。財布が傷まなければ、男性陣も女性陣も気軽に参加できるだろう。大旦那様もしばらくラーメンの開発に力を入れられるだろうし、同様のイベントはあと何回か引っ張れる。その間に、また別のイベントとスポンサーを募れば、やがて定番行事として地域に定着するだろう。そうなればしめたものだ。若者の出会いから、文化博、工業博まで。そのうち同人誌即売会なんか開けるようになれば、濡れ手で粟のウハウハとなるに違いない。
やはり風属性は商売、情報を扱ってナンボのもの。イベント興行ビジネスからの早期リタイア、あると思います。
「前も言ったけどね、ロドリゴ。男女のご縁ってのは、付き合ったら終わりじゃないんだ。新しい家族を作るってこと、人の一生を左右することさ。だからよっぽど慎重にならなきゃいけない」
うっ、説教が始まった。パロマさんはお母さん世代、下手するとお婆ちゃん世代で、考え方が超保守的なのだ。
「いえその、俺が提供するのはチャンスだけっていうか……」
「いいかい。ウチからリンゴを買ったお客さんが、家でリンゴを切ったら中が腐ってたとするだろう。そしたらウチの信用はガタ落ちだ。次からは買ってもらえない。それがもし、店でお客さん自身が選んだリンゴだとしてもだよ」
「はぁ……」
「ましてや人のご縁なんて、リンゴ一個よりずっと重い。下手すりゃその人の人生だけじゃない、子供や周りの家族の人生まで変えちまう。簡単に手を出しちゃいけないモンなのさ」
うーむ、そう言われてみればそんな気もしてきたぞ。リンゴ一個が不良品だとしてもクレーム返金で終わるだろうが、痴情のもつれは下手をすると刃傷沙汰に発展する恐れがある。ヤバいな、取り扱いの難しい商材だ。
「まあ、なにがなんでもダメってことじゃない。実際、商売のついでに縁談を取り持つこともあるさね。だけど、アタシら商人にとって一番大事なものは、信用だ。縁談を扱うなら、リンゴと同じように人を目利きする眼力を養うことと、もしもの時に責任を引き受ける覚悟ができてからだね」
なるほど、パロマさんが迂闊に縁談に手を出すなと言う理由がよくわかった。こりゃ今の俺の手には負えないな。
「こうなったら同人誌即売会から手をつけるしか」
「どう……なんだいそりゃ」
目指せヒュージサイト。このポルセルを夏冬の聖地にしてやるのだ。
そして明るい話題はもう一つ。
「うまくやったな、ロドリゴ」
バイト終わり、いつものジューススタンド。静寂の翼の二人がジュースを奢ってくれるのも、そろそろ最後になるらしい。大旦那様たちがラーメン研究所を立ち上げ、領主様や商業ギルドを巻き込んだせいで、俄然そっちに注目が集まるようになった。おかげで、レシピの出所を探る動きが消えつつあるということだ。
「試食会にエルマノスを招待したのは正解ねぇ。彼らが冒険者ギルドで評判を広めたから、あちこちで火が点いてるわぁ」
「あはは、お口に合ったならなによりです」
「それでお前、レシピ登録に名前を残さなくて、本当によかったのか?」
「そうですねぇ、もうこうして護衛していただくなんて大変ですし」
「ウフフ、欲がないわねぇ」
いや、欲ならあるぞ。俺は名誉じゃなくてカネが欲しいんだ。先立つものは、老後の資金だからな。
「ま、気持ちはわかる。面倒臭いのは俺も御免だ。しっかし、久しぶりに若手を連れて森にも入れたし、楽しかったぜ」
「また試食会があったら呼んでねぇ」
二人は俺を寮まで送り届けると、さっさと帰って行った。こういうビジネスライクであっさりしたところ、嫌いじゃない。最初は耳が光ったり紫色に変色したり、怪しくて胡散臭いと警戒したものだが、思ったよりいい人たちだったな。学ぶところも多かった。また一緒に森に入れる日が来るといいんだが。
皆様、地震、雨、大丈夫ですか。
どうかご安全に、お健やかにお過ごしくださいね。
大難が小難、小難が無難となりますように。




