第66話 戦歴
ポルフィリオ氏の戦歴その1、隣町の商家。これから支店を出して規模拡大の機運に際し、契約魔法を使えるポルフィリオ氏に白羽の矢。しかし蓋を開けてみれば、彼が婿に入るはずの娘はすでに使用人と恋仲、申し訳ないが傍系の娘と結婚して下働きしてくれという計画的詐欺。破談。
戦歴その2、隣領の騎士爵家。気高き女騎士の当主に、領地経営のできる補佐的な役割を期待されての婿入り話。しかし当の女騎士様が「私より弱い男とは結婚しない」と断固拒否。破談。
戦歴その3、取引先の家具工房の一つ。しかし当の娘も工房主も、ポルフィリオ氏を「緑頭」と呼んで憚らず、風属性蔑視を隠す様子もないため破談。「学園を主席で卒業したらしいが、それがどうした」「ウチに来たからには存分に働いてもらわねば困る」と言われたのがここ、そして「愛せるかどうかわかりませんので」と辞したのもここ。まあこれじゃあ仕方ないよな。
これで風属性(商家)、火属性(騎士)、土属性(工房)がアウト。あとは水属性なんだが、水属性は基本的に全員ヒーラーで、女性が自分で治療院を開くことは稀だ。必然的に、お嫁さんに来てもらうことになる。
「じゃあポルフォリオさんも、入り婿狙いじゃなくてお嫁さんを迎えた方が」
「馬鹿ねぇ。水属性の女の子はお嫁さんに大人気よぉ? 激戦なんだからぁ」
「例え初歩でも治癒術が使えるってのは、心強いことこの上ないからな」
ほへぇ、そうなんだ。ウチは母も姉も水属性だから、そんなこと考えたこともなかった。
「風属性って婚活もままならないんですね……」
「まぁな。恋人にはちょうどいいが、伴侶となると話は別ってヤツだ」
「結婚って現実だものねぇ」
洋の東西を問わず、世の中ってのは世知辛いものらしい。
とりあえず、ポルフィリオ氏の恋愛運が皆無なのは理解した。そしてペトロナさんがやけに彼の肩を持つ理由もだ。彼は俺が奉公に入った時からずっとピリピリしていたが、裏でこんな惨憺たる婚活で辛酸を舐めていたということであれば、同情の余地がある。得てして職場のお局ってヤツは、異性運に恵まれないものだ。
「誰がお局だ、誰が」
「ウハッ。ロドリゴ、言い得て妙!」
「というわけで、もうこうなったら下手な鉄砲も数打つしかないと思うんです」
「誰が下手だ、誰が!」
「ブハッ!」
なんかポルフィリオ氏の青筋がピキピキしているが、そんなことで怯んではならない。
「というわけで、合コンでもセッティングしちゃおうかなって」
「いいねえ! ロドリゴ、お前やっぱ天才!」
「ええい、ただでさえ忙しい時期に余計な問題を起こすんじゃない!」
「ええ〜〜。だって俺……いや私、めっちゃ仕事してますよ?」
「そうですよポルフィリオさん。ロドリゴを準事務員に格上げしてから、一気に残業がなくなったじゃないっスかぁ」
「ぐぬぬ……」
そうなのだ。ポルフィリオ氏とピオ氏が連日残業でアップアップしていたため、プロスペロさんが俺を検算担当から臨時事務員に格上げしたのだ。簡単な書類ばかりとはいえ、文字を覚えたばかりの六歳児が書類を捌いていいのかという当惑。そしてそうまでして、ラーメン開発業に専念したいプロスペロさんの食に対する異常な情熱を思い知る。お前、家具屋の番頭やろ。音頭を取る大旦那といい、お前らなんしとん。
「とはいえ、俺も合コンなんてセッティングしたことないんですよね。ピオさん、知り合いの可愛い子に声掛けてくれません?」
「言い出しっぺが丸投げかよ! だけど六歳児が合コンをセッティングしたことあったら、逆に怖いってか?」
「だから二人ともやかましい! 俺は断固出席せんぞ!」
ポルフィリオ氏はプリプリしながら書類を仕上げているが、時折チラチラとこちらの様子を窺っている。合コン気になるよな、うん。ここはウェイ系のピオ氏を巻き込んで、一気に畳み掛けよう。
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2026.06.17
ラーメンといい合コンといい、いずれもそんな話を書くつもりは……。
いやでも上司が婚活で連戦連敗してたら、ロドリゴなら絶対こうするかなって……。
俺、合コンなんて行ったことねぇよ……ミリしらだよ……。
タスケテ……。(´Д⊂ヽ




