第60話 採集
「だってトリニダードさん、ベテランなのに若く見えるじゃないですかぁ……」
「いやだから、『若く見えますね』で止めときゃよかったんじゃね……」
「だって、気になることがあるか聞かれたので……」
「女性に年齢を聞くのはどんな場合でもアウトだよ……」
俺は悪くない。質問があるかと言われたから質問しただけだ。確かに思い変えせば、女性に年齢を聞くのはマズかったかもしれない。だが、下手したら駆け出し冒険者のスサニタさんと同じか、それよりも下に見えるんだぞ。美魔女だって褒めてんのに、答えがゲンコツとか酷い仕打ちだ。
そしてここでトラップがもう一つ。そのスサニタさんまで年齢を気にしているらしい。なんでだ。まだ十八だぞ。
「なんでって、もうガッツリ適齢期じゃねぇか。王都でイケメンを探すって躍起になってんだから、刺激すんなよ」
「ッカーっ、ダメだ! やっぱ俺もスサ姉と抜ける! 王都の男なんかにスサ姉をやれるかよ!」
「おいお前ら、静かに歩け」
そうか。こっちの世界、婚活が早いんだ。俺、ちょっと大きめの地雷を踏み抜いたのかもしれない。
「悪ィが、あんま時間ねェからパパッとな」
トマスさんとトリニダードさんが周囲を警戒する中、俺たちは森の中で小休憩を取ることになった。さすがは森の中層、ここでのんびり弁当を広げるわけにはいかない。音を立てないように干し肉を齧り、水でふやかしながら流し込む。こうしていると、これまでの森の探索が、いかにお遊びだったかを思い知らされる。
そしてお遊びだったのは、休憩だけじゃない。
「おお……これも、これも!」
「ちょっとアンタ、噂には聞いてたけどやるわねぇ」
さっきからフルシカトだったトリニダードさんの声がする。しかしそんなことはどうでもいい。薬草だ。ここには、強い光を放つ植物がたくさん生えている。そして草が光ってるということは、地面も光ってる。おお、よく見ると木も光ってるヤツあるな。幹じゃなくて実かな。
「おおロドリゴ。コイツとコイツはわかるけどよ、そっちのちっこいのは気づかんかったぜ」
「あら珍しい。神殿で習ったけど、実物を見たのは初めてね。こんな森にも生えてるなんて」
「スサ姉が珍しいっつうんなら相当だな」
「なあプリ兄ィ、俺どれが薬草かなんてわかんねぇよ」
気がつけば、みんな俺の背後でギャラリーになっている。「コイツは薬草採集中にスライムにやられる」と知れ渡っているからだ。
「しっかし冒険者ギルドで話題になってたが、こんな迷いもなく薬草を集めるとはな。中層に声をかけて正解だったぜ」
「料理レシピに、刻印なしでスキル習得だけでも相当なものなのにぃ。ペピト坊ちゃん、すごい手駒を見つけたわねぇ?」
「ふふっ。まあその分、目が離せないんだけどね」
「それにしてもそんな薬草の知識、どこで手に入れたんだ? ロドリゴはまだ見習いになったばかりだし、スサ姉すら見たことのない薬草を簡単に見分けるなんて」
「ヒッ、セベリノさん……そ、その、勉強部屋の本で読んだっていうか」
「プリ兄ィ、そんな本あったかァ?」
「ああっ、変わった形の葉っぱダナー。スサニタさん、これって薬草ですかぁ?」
「どうしたの急に? 今までそんなこと聞いてきたことなかったわよね?」
チッ、勘のいい孤児院組は嫌いだよ。てか、薬草かどうかなんて俺にはこれっぽっちもわからない。俺が知ってるのは、冒険者ギルドに置いてある初心者用の薬草見本だけだ。あとは、第三の目()で見て光ってるヤツを摘んでるだけだから知らん。
「ロドリゴ、あんまり一箇所に留まれねェからほどほどにな。後で帰ってから仕分けてもいいんだからよ」
「はぁい」
トマスさんの援護射撃が地味にありがたい。しかしアラスの二人とペピトは、なんだか訳知り顔でヒソヒソしている。くそっ、手駒認定ってやつか……ッ!
すみません、前話までに「パロマの雫」か「パロマの涙」どっち?というご指摘をいただきました。
最初は涙にするつもりが、後で「涙だとちょっと悲しいかなぁ」と思って雫に変えたつもりでした。
後で雫に訂正させていただきますね。
ご指摘ありがとうございます!




