第55話 トッピングサンプル
「あっえっと、難しい話じゃなくて。チャーシューだけを乗せるシンプルな店もあるかもですけど、だいたい煮玉子とかネギなんかが乗ってると言いますか」
「煮玉子……玉子を煮るのか?」
「茹で玉子を調味液に漬けて味付けしといたヤツですね」
「なるほど、玉子のピクルスとは新しいな」
「あとは、モヤシ……はないか。メンマ、海苔、なると、このへんも絶望的だな。そうだ、豚骨といえば紅生姜に木耳、辛子高菜も欲しいところだ。うーん、めっちゃ遠いな」
「モヤシとは?」
「ああ、豆が芽を出してちょっと伸びたヤツです」
「それなら市場で豆を買ってきて作れるんじゃねぇか?」
「メンマ、ノリ、ナルトなんて聞いたことねぇぜ」
「えっとメンマは、竹を煮たヤツです。海苔は海藻を板状に乾かしたもの、なるとは魚のすり身を加工したものでして」
「はぁっ?! 竹を食うのか?!」
「魚を細かく刻むのはアリとして、海の草だと? そんなもん食うなんて聞いたことが……」
「そもそも海は、王都を挟んでずっと向こうですよ。ロドリゴ、あなたは海に行ったことがあるんですか?」
「いやティモテオ、思い出せ。コイツのレシピは夢の話だからな?」
そう。最初は情報源を先々代の本だとか手記だとか濁していたが、今では俺の見た夢だと話している。前世って言ったって、証明しようがないからだ。
「ひとまず、今この場にないものは試食しようがない。ロドリゴ、ここにある食材で心当たりのあるものを用意してみろ」
「それでは、私がご提案する組み合わせはこちらです」
ジャーン。ひとまずお店にあったものを分けてもらって、俺が作ったのが四種類。まずは塩鶏ガラに細麺、茹で玉子、ネギ、薄切りチャーシュー。それから塩豚骨に細麺、ネギ、フライドガーリック、薄切りチャーシュー別添。三つ目は塩豚骨に中太縮れ麺、しっかりチャーシュー、ほうれん草、玉ねぎのみじん切り。最後は豚骨に極太麺、茹でキャベツ盛り盛りに漉した脂身、刻みニンニク、極厚チャーシューだ。
「おい。最後のこれ、ヤバくねェか? 脂でドロドロだし、クッセェし……」
「こりゃもう料理っていうか、餌って呼んだ方が……」
「なんで鶏チャーシューがねぇんだよ」
「おうオメェら。最初っから否定しねェで、まずはどんな見た目でも食ってみるしかねェだろ」
「ふむ。品性という面で、試食するには少し勇気が要りますが……いいでしょう。いただいてみましょうか」
なんか全員から微妙にディスられてる気がする。だがまあ、俺の知るラーメンに近い組み合わせにはなっただろう。さあ、俺も試食をいただくとするか。
ズゾッ……ズゾゾッ。
阿鼻叫喚とはこのことを言うのだろう。危うく本日のランチ営業が飛ぶところだった。
「いいからお前らも食ってみろって!!」
「ええ……もう開店間際ですよ?」
「しかもなんかニンニク臭いし」
「カーッ!! 給仕たるもの、事前に味を知らずしてどうしてお客様に料理をお勧めできましょう! 恥を知りなさい!!」
「う、ティモテオさんがそこまでおっしゃるなら……」
「じゃあ俺は、こっちの色の薄い方を……」
からの、
「うんまあああい!!」
「なんだこれはあああ!!」
「だろだろだろぉぉ!! やっぱこのチキンのあっさりしたコクが!!」
「いやお前ら、こっちのポークスープの方もいってみろよ!!」
「鶏チャーシューがめっちゃ合うんだって!!」
「やはり小生は豚スープに細麺が好みですな!!」
まさにカオス。
「ちょっオーナー、これもうないんスか?! こんな量じゃとても足りないっスよ!!」
「馬ッ鹿ティト、お前そんなニンニク食いまくってヤッベェだろ! ――あ、いらっしゃいませセニョール。こちらのお席へどうぞ」
「ほほ、セニョリータはこちらへ。ようこそラ・ティエンダ・デ・ペドロへ」
「あらっ、ティモテオ様? お昼からお会いできるなんて!」
不幸中の幸いは、金曜日から店に居座っているティモテオさんがホールに参戦したこと。こうして月曜日のランチタイムは、なんとか切り抜けられたのだった。
皆様、いつもご愛読ありがとうございます!
毎日読者の皆様のお声に助けられながら、いつもギリギリでアップアップしながら執筆しております。
本来は、見よう見まねで中途半端にスキルを覚えるくだりをさらっと描きたかっただけなのに、なんか流れでラーメンバトル()な方向へ……どうして……(´Д⊂ヽ
そしてこうも本筋から離れていくのに、皆様の先読みが鋭すぎてもう……(´Д⊂ヽ
お客様困ります……(´Д⊂ヽ
こんなポンコツストーリーを温かく見守ってくださって、皆様本当にありがとうございます……。・゜・(ノД`)・゜・。




