第54話 試作品第?号
「というわけで、散々だったんですよ……」
「あー、まぁ。な?」
月曜日。スープのアクを取るペドロさんにひたすら愚痴る俺だが、まったく聞き入れられずスルーされまくり。
「そりゃお前みたいなドン臭いの、冒険者なんか務まるかよ」
「ひ弱な緑頭が剣術とか、笑わせんなって」
弟子のパコさんとぺぺさんにも笑われる。ちょっと馬鹿にされてる感じはあるが、こないだより打ち解けたせいで俺もやりやすい。てか、料理人の彼らも一応冒険者資格は持っているそうだ。ちょっとしたハーブや小型の獣くらいなら、自分で採集できなきゃいけないらしい。ずっと前から予約が入ってるのに、今日は市場から入荷がなくて料理がありません、なんて言えないからな。
「そんなことはどうでもいいのです! ロドリゴ、あなたはちゃんとチャーシュメンを完成させる義務がある! わかっているのですか!!」
「あっはい」
そして、この場にいるはずのない人物が一人。夕方からの給仕、ティモテオさんだ。彼は月曜の朝から厨房に詰めかけ、ているのではなく、なんと金曜日の晩からここに居着いているんだそうな。
「ええい、このスープで八杯目。試作を重ねれば重ねるほど味わい深く、奥深くてキリがない。さあロドリゴ、一体どの味があなたのイメージと合致するのですかァ!!」
「グエッ」
「待て待て待て、ロドリゴが泡吹いてっだろ」
襟元掴んで揺さぶられ、危うく彼岸に渡りそうになった。サンキューパキト、一番塩対応だったお前に命を救われるとはな。
「ともかくあれだ。太麺、細麺、縮れ麺、それから骨と一緒に煮出すハーブの組み合わせ。チャーシュもアレだ、煮たのに焼いたのに低温調理。どんだけ試作してもキリがねェぜ」
「いやぁもう、初回のからすごい進歩ですよ。この明け方に出来たってスープが、一番塩豚骨に近いかな……いやでも、一周回ってこのハーブ入りも捨てがたい」
「改めて、お前が夢で食った味ってのは引き算なんだなァ。材料も香辛料も極めてシンプル。素材の味を邪魔しねェ感じは伝わってきたぜ」
「ありがとうございます。基本的なところを理解していただければ、あとはそれぞれの料理人さんがお好きな味付けにしていただければいいかと」
そう。最初に食べたのが、トマトの入ってないミートソースみたいなヤツだった。それから考えると、エラい進歩だ。
「大旦那から頼まれたのがゴマミソタンタンってヤツだったからよ、どんだけ珍しいハーブをブチ込んだもんかと思ったんだが」
「ですよね〜。あれはあれで美味しかったんですけど、まさか数日でここまで仕上げてこられるなんて。さすがですよ!」
「ハッハッハ、まあ大したこっちゃねェけどよ! っつーわけで、チキンは細麺に薄切りチャーシュ、豚の骨の方は中太縮れ麺と厚切りチャーシュで決まりだな。スープの方も、コイツが炊き上がれば味を微調整して終いだ。いやァ、今回のチャーシュメンは骨が折れたぜ!」
「いやでもペドロさん、俺はどうしても納得いかねぇっす。チキンには細麺はわかるんですが、豚の方も細麺の方が合うんじゃねぇかなって」
「いいやパコさん、俺は中太麺の方が合うと思うな」
「それより俺、低温調理の鶏チャーシュは豚の方にも乗せるべきかと」
「小生は麺とスープに絞った方がエレガントかと感じますな」
みんな思い思いにチャーシューメンについての感想を語る。てか、ティモテオさんの案はチャーシューが乗ってないからチャーシューメンとは言えないけども。というわけで、
「じゃあやっとトッピングの段階に移れますね!」
「ト?」
「え?」
お前ら、なに終わった感を出してんだよ。ラーメンの仕上げはこれからだぜ。




