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社畜に異世界は生ぬるい〜奉公から始まる楽勝平民ライフ  作者: 明和里苳


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第40話 二連撃問題

「さあ、見せてみたまえ」


「おうよオッサン、見とけよォ。ゴマミソォ、タンターン!」


 ヒョヒョン!


「どうですかギルマス。これは二連撃ということで?」


「ううむ。にわかには信じがたいが……」


 日曜日の冒険者ギルド。俺たちはギルドの訓練場で、ギルド幹部に囲まれている。みんな目つきが鋭い。どうしてこんなことに。




 遡ること日曜の朝。いつもと同じように森に向かい、いつもと同じように狩猟採集を始めた俺たちだったのだが。


「そういやサバス兄ィ。俺、二連撃を覚えたぜ!」


「はっ? なんだそれ」


「いいか見とけよォ、ゴマミソォ、タンターン!」


 ヒョヒョン!


「そんなバカな。プリニオにはまだ早いはず……?」


「掛け声はともかく、ちゃんと二連撃っぽいな……?」


「違うよセベ兄ィ、掛け声はロドリゴが考えたんだかんな!」


「そうそう。急にゴマミソとか言い出して、キモいんだって」


「キモくねぇし!!」


 そこで探索は一旦中断。奉公組の三人は、エルマノスの皆さんにこれまでの経緯を洗いざらい吐かされた。そこで「こうしてはいられない」と森からトンボ返り、からのギルドの訓練場、なう。




「それで発見者の君から、なにか申し開きはあるかね?」


「はっ? あのっ、申し開きとは」


「これはスキル習得の根幹を揺るがす大問題だと理解しているのかね?!」


「ヒエッ」


 いきなり剣術指南のおじさんから矛先が向けられる。俺、なんで怒られてんの?!


「まあまあ。ソードマスターの君が、この発見に興奮するのもわかる。だが相手は小さな子供じゃないか。もう少し語気を和らげたまえ」


「は。ですがギルマス」


 大人たちがなにやらヒソヒソと話し合っている。そうだよな、胡麻味噌坦々でスキルが覚えられたら、ギルドの大事な収入源であるスキル刻印が台無しになってしまう。今更ながら、秘密にしとくべきだった。


「それでギルマス。こいつは二連撃ってことでいいのかァ?」


「待てサバス、これは慎重に吟味すべき課題だ。今すぐに答えを出すことはできん」


「んなこと言ったってよォ、チビどがもさっさと強くなった方が戦力になんだろ?」


「ギルドとしても、若手冒険者の強化と全体的戦力の底上げは急務のはずですが」


 一方、エルマノスの皆さんが俺たちをギルドに連れてきたのは、この胡麻味噌坦々が本当に二連撃相当のスキルなのかどうかを確認するためだ。もしそれで高度な技が覚えられるなら、冒険者を目指す孤児たちにさっさと教えてやりたいところ。


「しかしセベリノ、各冒険者の正確な能力把握はなににも増して重要だ。あやふやな方法でスキルを得た気になって、己の力を見誤って命でも落とそうものなら、ギルドとしても悔やみきれん」


「それもそうですが……」


「だから言ったのよ。こういうのは大抵利権が絡んでるんだから、黙って使っときゃ良かったんだって」


「む、聞き捨てならんな。剣の道は遊びではないのだぞ。ヒーラー如きにはわからんだろうがな」


「なんですって? 剣を振り回すことしか能のない脳筋が!」


「なんだと?」


 ヤバい。場外乱闘まで発生している。どうやらソードマスターとスサニタさんは、仲が悪いっぽい。


「まあまあ、ここで言い争っても仕方ないでしょう。冒険者に憧れた少年が、スキルの真似をしたがる。そういうことはままあることです。そしてその過程で、偶然それっぽい技ができてしまう、そういうケースもあるでしょう」


 おっと。ここでカウンターの奥の偉いさんが、レフェリーストップをかけた。


「しかしその偶然に、再現性があるとは限らない。現にプリニオくんのその……ゴマミソでしたっけ? それは二連撃相当の技に見えますが、ペピトくんとロドリゴくんについては二連撃の威力とスピードを満たしているとは言えない。当ギルドとしてもそのゴマミソ? を二連撃と認定するわけにはいきませんし、一人一人についてしっかりと我々が判定を下したのち、認定をするほかないでしょうね」


「あァ? んで結局どういうことだよ、サブマス?」


「要は、君たちがゴマミソナントカと叫びながら素振りの鍛錬をするのは自由。しかし、二連撃をスキルとして認めるためには、従来通り一人一人が講習を受けていただいて、刻印を刻んでいただくことになるでしょう」


「まあ、そうだな。それが冒険者の安全のためでもある。――サブマスの裁定に異論のある者はいるか」


 こうして貴重な日曜日は、胡麻味噌坦々二連撃問題で終わった。

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