第26話 大ボラ
「魔力が見えるだと! そんな大ボラを吹くんじゃない!」
「そうだぞロドリゴ。魔力が見えるなんて才能、魔力循環の比じゃないだろう。即刻魔法省に届けなければならん」
「うぇっ」
えっちょっと待って。なんか大事に?
「ああプロスペロさん、ロドリゴは昨日から変なんですよ。孤児院の冒険者と薬草摘みに出かけて、なんかかぶれて帰ってきたみたいで」
ピオさんが呆れた感じでツッコミを入れる。彼も寮で暮らしているので、昨夜から俺がチャクラチャクラと騒いでいたのを知っていた。
「ふん。いくら子供とはいえ、空想と現実の区別もつかんとは。そんな大賢者みたいな能力、お前のような凡庸な幼児にあるわけないだろう」
「こらポルフィリオ、お前は下の者に当たりが強すぎるぞ。いくら風変わりでも、ロドリゴは洗礼したての幼児だ。物語の主人公に憧れることもあるだろう」
「まあまあ、誰だってそんな頃はあるさ。俺も昔は木の棒を振り回して、プロスペロさんに怒られたもんだよ」
「本当にお前には手を焼いたぞ、ピオ」
「うおっ、藪蛇だった」
エルマノスの皆さん、奉公人仲間、寮の皆さん、誰も俺のチャクラパワーを信じてくれなかった。そして事務室もだ。みんな子供の空想だと思ってやがる。まあ仕方ない、六歳といえば日曜日の朝のヒーロー番組に首っ丈の頃だからな。
「ともかく、本当に魔力が見えるとなったら学園どころの騒ぎではない。塔の賢者に弟子入りし、将来は賢者として宮廷魔術師の幹部に据えられるだろう。それほど大変な才能だ。空想するのはいいが、決して大きな声で言い回ってはならん」
「プロスペロさんのおっしゃる通りだ。見栄を張るにも、もっとマシな嘘をつくんだな」
「まあまあポルフィリオさん。ロドリゴはまだなにもわからない幼児ですんで」
しかし、魔力が見える説を信じてもらえなかったのが良かったようだ。学園をすっ飛ばして魔法省で宮廷魔術師とか、ロクなことにならなさそう。大学の同期には、省庁で働くヤツや研究職に就いたヤツもいるが、彼らの職場は総じて俺よりもっとブラックだった。福利厚生や給与面では文句なしだが、あんな激務を続けていたら過労で死んでしまう。まあ、俺も過労で死んだんだが。
省庁や研究職と言っても、どこも激務とは限らない。この国の魔法省のことだって、なにも知らない。だが、俺が勤めていたみたいな中小でさえ、派閥や学閥めいたものがあって、出世や待遇に響いていた。この身分社会においては言わずもがなだ。ここペラモス家具店の小さな事務室でさえ、ポルフィリオ氏からの強い風当たりを受けるというのに、知識階級や貴族の絡む魔法省において、後ろ盾のない平民の俺がどんな待遇を受けるのか、想像に難くない。
「えっと……チャクラごっこは終わりにします」
「うむ、それがいいだろう」
「ふん」
「まあ、職場ではほどほどにな」
三者三様、俺の能力については幼児の遊びだったと納得してくれた。よかった、魔法省になんて行きたくないからな。




