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社畜に異世界は生ぬるい〜奉公から始まる楽勝平民ライフ  作者: 明和里苳


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第25話 見える化

 チャクラに目覚めた翌日。


「おう。疲れは取れたかよ」


 身支度をして食堂に行けば、パウリノさんが声をかけてくれた。てか、食堂に集まった奉公人や住み込みの店員全員から「うわぁ……」っていう視線を感じる。


「えっと、昨日はお騒がせしました」


 俺は不本意ながら頭を下げた。こういうのは頭を下げた者勝ちだ。職場の悩みのおよそ八割は、人間関係の悩みだと言われる。日常業務の円滑な進行のため、頭を下げるくらいお安いご用だ。


「まったく。突然頭がおかしくなったかと思ったぜ」


「心配させんなよな!」


 昨日から口を聞いてくれなかったプリニオとポンシオが、あからさまにホッとしている。怖いか。新たな力に目覚めた俺が。


「ほらロドリゴ。物騒な目をしない」


 そんな俺を、ペピトが嗜める。そうだな。強大な力は秘めておかねば。




 まあそんな冗談はさておき。今の俺には、このうっすらオーラが見える力、それと生活魔法のウィンドしかない。手のひらから風を起こしてみれば、前髪がそよぐくらいのほんのりそよ風。夏場のハンディファンほどの風量もない。


 これがもっと強力だったら、メレンゲ作りにでも役立つんだろうか。しかし、ウィンドカッターみたいな技を覚えた日には、ボウルごと切断しかねない。いや、そんな強力な攻撃魔法は存在するのだろうか? あったら「風属性は微妙」とか言われなさそうだけど。


 しかし、収穫はゼロではなかった。第三の目、眉間に意識を集めてウィンドを観察すると、手のひらを覆う緑の光がブワッと膨張するのだ。それでは他の属性の生活魔法、ライトとファイアとウォーターはどうかというと、ライトは白、ファイアは赤、ウォーターは青い光に見える。今の俺は、生命力と魔力の属性が判別できるようだ。そして、両者は一体となって繋がっている。例えばウィンドの場合は、俺の緑のオーラが手のひらのところだけ大きく膨れたみたいな。そして他の属性のスキルは、緑のオーラからグラデーションのように色が変わって見える。どうも生命力と魔力は、同じもののようだ。


 そうやってしばらく観察しているうちに気づいた。魔法を視覚的に捉えられるようになったのは、俺にとって非常にラッキーだったということに。ライトとファイアとウォーターは、それぞれ発光したり水になったりして目に見えるが、ウィンドは目に見えないわけだから。


 魔法はイメージが大事だと言われる。例えばライトもファイアも、集中すれば光量や大きさはある程度コントロールできる。ウォーターもだ。これらは、目に見えるからイメージしやすい。同様に、ウィンドだって見えるようになれば、風の強さや範囲が自在に変えられる。もちろん元が生活魔法なので、出力には限りがある。しかし、手のひらの上で漫然と起こしていた風が、細く細く繰り出すとスプレーくらいの威力にはなる。これならキーボードの埃も一発だ。この世界にキーボードはないが。


「こうしてインクが乾くのもあっという間です!」


「いや、普通に置いておいても乾くだろう」


「ロドリゴ、お前は黒板で検算するだけだろうが」


 プロスペロさんから冷静なツッコミ、そしてポルフィリオさんからは氷点下のツッコミ。くそっ、誰も俺の力を理解できないのか。


「それにしても、ウィンドなんて生活魔法あったんですね。あんまり使えそうにないですけど」


「実際、なんの役にも立たんな。ほとんど誰も知らないのも無理はない」


「まあ、遊びはほどほどにしておくんだな。生活魔法とはいえ魔力を消費するのだし、魔力切れにならんとも限らん」


 いや、遊びじゃないのよウィンドは。魔法が見えるようになった今、どうにかして活路を見出そうとしている最中でしょうが。しかも俺、魔力切れに関してはもう心配ない。


「大丈夫です。私、魔力が見えるようになりましたので」


「「!!」」


 プロスペロさんとポルフィリオさんが、同時に振り返った。

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