第106話 マシンガントーク
すみません、体調不良でお休みしておりました。
皆様どうかお身体をお大事になさってくださいね。
「ふぅん。銀の魔女と電撃婚約ねぇ? ふふん、あちらもなかなかいい手を打ってくるじゃなぁい」
さっさとキケロ商店から帰ろうとするペネロペ様を「まあまあまあまあ」と宥め、流れるようにスレマ様のプライベートなお茶室に運ばれ。うーん。この姉、妹の扱いを心得ている。
「商業ギルド付きの銀級は厄介だけどぉ、まぁ崩せない手じゃないわね〜。そもそもロドリゴ、その銀の魔女と本当にお付き合いしちゃってるわけじゃないんでしょ?」
「うぇっ、そのっ、発展途上と言いますかっ」
「い〜のい〜の! どうせバネサちゃんのお相手は務まらなさそうだしぃ、ロドリゴの引く手はこれからじゃんじゃん出てくるだろうしぃ。縁談避けはこっちにも好都合ってワケ。ネッ?」
「もうお姉様! 私の味方じゃないんですの?!」
「あっはは、だってウチに養子に来るにはなんの問題もないんだもの! ね〜ロドリゴ、来年は学園に行くでしょ〜? そしたら可愛いお嬢さんと恋に落ちちゃったりして! そん時ウチの子になっといた方が、銀の魔女と婚約破棄も、彼女との縁談もスムーズよぉ?」
「だから、俺は学園には行きませんので!」
「あらぁ、なんでぇ? もったいなぁい!」
「ほらお姉様。ロドリゴはずっとこうですのよ? 本当にこの子は攻めにくいったら」
「まぁ、王都に一年もいれば気が変わると思うわよぉ。学園を出た者と出ない者とでは、その後の人生の選択肢も待遇も大きく変わるものぉ。ロドリゴの目指してる、早期リタイア? っていうのも、学園を出といた方が断然近道よぉ?」
ぐぬぬ。それはこれまでプロスペロさんにもポルフィリオさんにも散々言われた。だけど、彼らには理詰めでノーと言えたのに、スレマさんには妙な説得力がある。危うくペネロペ奥様と一緒に丸め込まれそうだ。
「あっはは。まだ王都に来たばっかりだもん、ゆっくり考えればいいわよねぇ? ウチはウチで奉公人もいるし、いろいろ見聞きしてから決めるといいわぁ。あっそれでねっ、こないだお母様から手紙が来たんだけど、ペネロペちゃんとこにも届いたぁ?」
「あ、ええ……」
こうして俺たちは、贋作トラブルに関してキケロ商店との合同調査という目的は果たした。本当は何日もかかる算段だったから、着いて早々に問題が終結したのは良かったと思う。だが、その代わりにスレマ奥様とのおしゃべり(一方通行マシンガントーク)に午前中丸々付き合わされ、ペネロペ奥様と俺は数日分以上の精神力を奪われたのだった。
そして翌日水曜日。
「ずっとテレサと顔を突き合わせているのも息苦しいだろう。どうだい、今日は僕と商談に同行してみるかい?」
王都ペラモス邸に出勤した俺に、意外なお声がかかった。ペラモス商店の現当主ことパトリシオ様。
前当主こと大旦那のプラシド様がポルセル本店を実質担当しているおかげで、俺はこれまで彼のことをよく知らなかった。影が薄いっていうか。そして王都に来て、その印象はさらに強まった。彼は主にペラモス商店王都支店の担当だが、肝心の王都支店の中身は、実質キケロ商店みたいなものだ。プロスペロさんは彼に関してちょっと渋い評価を下しているようだが、大旦那様はあまり気にしていない様子。策略家という噂もある。さて、彼の商談とは一体どんなものなのだろうか。




