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現世の英雄  作者: ぱっと見アラサーの高校生
第2章 万正、理想へと進み
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第二十五話「犯人捜し」

「仲間になれだと?」

「はい。もう1回言いましょうか?」



突然の意味の分からない発言に白装束は目を見開き聞き返した。



「ふざけているのか!私はお前を殺そうとした相手だぞ!?」

「そうですね」

「爆撃も狙撃もした相手を何故仲間にする!」

「さっき言ったじゃないですか。期待したいんです」



シノンの言葉に白装束は目つきを鋭くする。



「何故、どうして今に至っているのかを話してくれれば僕たちは分かり合えるかもしれません」

「有り得ないな」

「それはどうしてですか?」



シノンの言葉に嘲笑を向ける白装束にシノンは淡々と疑問を向ける。



「お前に分かるのか?理不尽に奪われる苦しみが。正義の味方気取りをしているような子供に分かる訳が無いだろう!私は殺された同族の為にあの方に従うのみだ!」

「そうですか──仲間が殺されたら、そりゃ憎みますよね」

「黙れ!」



優しい口調、相手を肯定し受け入れようとする姿勢が白装束には気に入らなかったのかシノンの言葉に怒声を上げる。その声にも、シノンは表情すら変えることはない。



「分かったような言葉を並べるなよ。目の前に広がる絶望を、お前は知らないだ──」

「知ってますよ」



白装束の言葉を遮ってシノンは言った。



「地獄も絶望も喪失も全部知ってます」

「──」

「父と友人は僕を庇って死にました。僕を好いてくれた人は死体すら残りませんでした」

「貴様…」

「綺麗事かそうじゃないかって言う人の経験次第で変わると思います。

 理想、確かにそう笑われてもいい考えですね。でもそれを語る者が現実の、それも絶望の中心にいたらどうなるんでしょう」



再び白装束の目が見開かれる。それは先程の様な怒りではなく1種の恐れの様な感情だった。

シノンの瞳の奥に移る絶望は故郷の事だけではない。前世の失っている記憶さえも彼の中では絶望の余韻として今も残っている。



「お前は、一体どれほどの…」

「さあ、自分でも分かりません」

「何故、笑えている…」

「そうしなきゃいけないからです」

「!」



何気ない言葉だ。シノンの心は未だ旅立ちの日から成長していない。取り繕っているだけなのだ。

いつまでも泣いていては俯いていては守ってくれた人たちに怒られると、そう思っているか。


シノンの言葉を受けた白装束は乾いた笑いを少し零して下を向く。その顔はシノンにも見えない。

何も感じていないんだろうか。彼を愚かと笑っているんだろうか。それとも、泣いているんだろうか。


感情を見せないようにだろう。彼女は顔を下に向けたまま語り出した。



「少し前だ──妖精族(エルフ)の森が、故郷に会った私たちの村が何者かに襲われ、燃やされた。

 人族の盗賊だった。母は私を守ろうと攫われ村の者は多くが殺された。

 その光景に絶望するだけの私に手を差し伸べてくれてのが──()()()()だ」

「話してくれるんですね」

「お前は異常だ。家族を、友を殺されても相手の事情を知れば許すと言っているような物だ」

「少し違いますね。別に考えが救えない物なら僕は容赦なく殺します。

 人の命を見合う程の理由がないのならその命の全てを蹂躙されても文句は言えないでしょう?」

「!」



顔を上げた白装束は自身を見つめるシノンの瞳に固まった。

底の見えない深淵とそれすらも照らし尽くす灯火が同居する混沌の目、悍ましさか、それとも神々しさかシノンの瞳からは相反する2つの存在を感じた白装束は目を見開いた。



「許せないんです。快楽や利益の為だけに他人を傷つける人が、救いたいんです。復讐でその身を烈火にくべようとする人を。

 あのお方って人が何かを抱えているならそれも全部救って見せます」



力強く自身の手を握りシノンは白装束に宣言する。その言葉を聞いた白装束は再びを顔を下に向ける。



「いいだろう。組織を抜ける」

「本当ですか!?」

「だが仲間になるつもりもない」



やっぱりそれは無理か。ベストは仲間に情報以外も仲間として戦力になってもらいたかったんだがそうは上手くいかないらしい。



「では情報提供はしてくれるんですね?」

「…ああ」

「安心してください。ちゃんと全部終わらせますから」



こんな口約束では完全に信じ切れないのは分かっている。それでも何度も言い続けるしかない。

実現するためには自分にできると思わせ続けるしかないんだ。


先が見えない彼女への励ましと自分への暗示を込めた言葉をシノンは彼女に送り、他の面々を呼ぶために一度その場を離れた後、白装束の女性──リネファの拘束を解き情報を聞くことにした。



「それにしても良く懐柔で来たね」

「聞き耳立ててたのしってますからしらばっくれなくていいですよ」

「ひゅ~ひゅ~」



シノンが自身を褒めるアストルフォに盗み聞きがバレていることを指摘されると下手な口笛で胡麻化し他の全員も顔を逸らした。


バレてないとでも思っていたのか?ここを出たと思えば次の瞬間には踵を返して全員で扉の前に張り付いていただろう。



「まぁ聞かれたところでですけど…それじゃあ話してもらえますか?」

「分かった──組織の名はレドンプシオン、目的はリスティアの陥落だ。ボスの名前は誰にも分からない」



空気がピリつく。疑念と言う満たされた燃料にやっと日が投げ込まれたかのような空気が全体に流れる。



「その詳細はなんですか?」

「限界まで現種に近づけたタラスクの復活、今はそのために我々は動いている。

 何をしようとしているかに関しては、知識がない故教えられることはない」



そこまでは読み通りだな。今知りたいのは次に行う行動だ。



「現在計画はどれくらい進んでるんですか?」

「少なくとも半分以上だ。今回の工場襲撃で3割は進んだ」

「3割も!」



ジャンヌが驚きの声を上げるがシノンとオリヴィエに関しては以外にも納得しているように頷いている。


あそこから奪われた物を考えればその進行度は十分納得できるものだな。魔力リソースと魂の記憶を持つ血肉、逆に何が足りないのか聞きたいくらいだ。3割が少なくに聞こえる。



「では、次に組織が行うことはなんですか?」

「残念ながらもう必要な物を用意するのは終わった。あとは魔力式の完成を待つだけだ」

「ならこちらは攻め込むだけだな!」

「落ち着いてくださいローランさん、連中も無策で立て籠る訳はないでしょう。

 何かしているはずですよ」



組織について知っている情報があまりに少ない。下手に手を討てばこちらが痛手を負うこともある。

それに俺は奪われた2つの内の魔力体に何かを感じている。資料にも細かく目を通したが不明瞭な点が多くあったのに自然と理解できた。この違和感についても知る時間が欲しい。



「取り合えず明日、手に入れた情報を騎士団に渡しに行きましょう。できれば僕以外の人が行ってもらえると助かります」

「やることがあるのか?」

「気になることが多いので、騎士団には一度足を運びます。

 あとジオ、今日発見した要点の位置を示した3枚の紙を1つにまとめてくれると助かる」

「できることが少ないからね。やらせてもらうよ」



シノンが回収していた要点の位置をまとめた紙をジオに渡すと快く了承し紙を受け取った。

全員の目に疲労が浮かぶ。調査を行っていた者は言わずもがなジャンヌも他の者が調査を行っている間大聖堂で働いていたためかなり疲労をため込んでいる。

それを察した。訳ではなく単純な眠気に敗けローランが大きな欠伸を鳴らした。



「…一気に気が抜けましたよローランさん」

「だってもう深夜だぞ?若くない俺らにこの時間はきつい」

「まだ20代でしょ」



ローランさん、ここで年齢の話は良くない。俺の後ろに立ちランスさんとトゥルパンさんの顔が怖くなっている気がするから本当に良くない。


背後からの笑顔(怒り)の圧に耐え兼ねシノンが手を叩く。



「きょ、今日はここまでということで明日することは明日の朝話しましょう」

「そうだな」

「それじゃあ休みましょうか。あ、ランスさん少しいいですか?」



シノンが解散を告げたあと去っていくランスを呼び止める。

皆が去った後、シノンはランスに取ってきた資料の1ページを見せていた。



「この国は宗教の権力が中々に強いと聞いています。それ故に顔が広いであろうランスさんに聞きたいのですが、この人たちを知っていますか?」



魔力体と血肉の資料その両方の最初のページには人の名前が書かれていた。そこには研究へ投資を行っていた者の名前が書かれていた。



「トゥールーズ・シャルル、シモン・マルク、マクシミリアン。ロペスピエール、ジュリアン・ド・トネール、調べたところ全員が貴族です。何か知りませんか?」

「一応は知っていますが、何か知りたいことが?」

「ちょっとした探偵ごっこです。できれば全員の職業とどこに居るのかを教えてもらってもいいでしょうか」

「トゥルパン殿が協力をしている以上、私も協力は惜しみません」

「助かります」



ーーー



翌朝、大聖堂の1室での作戦会議によりローランたちは騎士団へ、シノンはジャンヌを連れてランスから貰った情報を頼りに投資を行った者たちの元を訪れている。



「はぁ朝からアストルフォさん元気すぎますよ」

「朝からあの声量は応えますよね」



アストルフォさんによるモーニングベッドダイブによって激痛と爆音で目を覚ます罅が続いている。

よく朝からあんなに元気でいられるものだ。



「そういえばどうしてここに来たんですか?」

「ちょっとしか違和感から出た推理を進めているんですよ」



最初に出た疑問は何故リネファさんが俺が資料を見つけた後に襲撃したのか。それは今日の朝聞き出して俺を殺すことと資料の確保を並行しようとしただけだと分かった。

ここで疑問が残る。何故戦力を十分に用意して奪取に向かわなかったのか。この答えとして得られるのは放火後戦闘可能な者がいないと踏んだから。あの後の確認で警備兵が殺害されていることが分かった。

何故警備兵の場所が分かった?探し回ったのか?そんなことすれば確実に目立つ。そうとなれば分かったではなく知っていたの方が正しいだろう。

最後の疑問だ──何故知っている?

おそらくあの工場に近しい者が情報を組織に渡したと俺は推測した。最初は職員を疑ったが職員はほとんどの行動を指定された組のみで行うことを義務付けられている。団体で放火に動けばさすがにバレる。

その場合残る選択肢は工場の責任者や、工場との関わりが深い者だ。

とまぁ、そんな経緯で俺はここ、外港に来たという事だ。



「港の経営者に法律家…全員お金がありそうな人ですね」

「工場の研究に投資をする程余裕がありますからね」



呑気にこんなやり取りをしているが俺の推理があっていれば事態は一気に動き出す。

ただの偵察、話し合いにしても常に気を張って臨む必要がある。



「それじゃあ向かいますか。最初はシャルル伯爵です」

「でもどうやって話をさせてもらうんですか?」

「確かに貴族相手に子供が話をするなんて簡単ではないですね。

 ──という事で、ローランさんから名を借りてきました」

「誰の、でしょうか?」

「カール大帝、シャルルマーニュ王です」



表向きにはこれはシャルルマーニュ王から手を組もうと言う交渉、だがこれはただ王の名を借りて話す機会を作っただけだ。

シャルルマーニュ王の名はリスティアに住む者なら彼の威光と共に聞き及んでいるはず。情勢に詳しい貴族なら尚更だ。

朝一に手紙書き届けてくれたオリヴィエさんには感謝しかない。



「でも名だけではどうも信用してもらえないのでは?」

「それは大丈夫です。このオリフラムの勲章があれば信用してもらえます。

 シャルルマーニュ王の騎士団、その中でも最勇である十二勇士だけが受け取ることができる黄金のオリフラムです」



シノンはジャンヌにローランから拝しゃk──ではなく受け取った金のオリフラムを見せる。


大丈夫。オリヴィエさんに理由を話して取っていいか聞いたら即答で了承してくれた。終わってから返せば問題ないさ。


シノンとジャンヌは港の中でも一際大きな建物へ向かう。当然門番に停められはしたがオリフラムと交渉の話をした少し後に快く通してくれた。



「す、すごい建物ですね」

「絵画やら花瓶やら何から何まで高そうですね」



門番に案内をされている間、ジャンヌはシノンの横で家に飾られている物1つ1つに驚いている。美の完成は育っていなくとも圧倒する何かを感じ取っているんだろう。


確かにすごいが、リアの家によく言っていたせいかあまり驚くことが無いな。

同じく交易関係の仕事をしていたからか飾られている物も似ている。慣れとは怖いな。



「ここでお待ちです」



門番が1つの扉の前で立ち止まり手で示す。



「あ、ありがとうございます」

「ありがとうございます」



動揺ししどろもどろになるジャンヌの横でシノンは慣れた様子で頭を下げ、顔を上げてドアノブに手を掛けた。


作法云々は頭に入っているが、この空気感は慣れないな。ドアノブを回す手がこんなにも重い。


シノンは深く呼吸をしドアノブを捻り中に入る。



「おっと、思った以上に小さい子が来たね」

「ごきげんようシャルル伯爵、シャルルマーニュ陛下の代理として任を仰せつかりました。

 シノン・ウィットミアと──」

「じゃ、ジャンヌ・ダルクです」



右足を半歩引き、左手を胸に当て、軽く頭を下げる。この世界での貴族に伝わる挨拶の礼儀だ。



「ほぉ、慣れているね。話をしよう。掛けてくれ」

「では、失礼します」

「し、しつれいしましゅ!」



自身の横で小刻みに震え続けるジャンヌに苦笑しつつシノンは刺された席に腰を下ろす。

シノンは自身へ送られる友好的な眼差しにも探るような瞳で返す。



「それでは()()()の話を聞こうか?」

きそうな質問予想

・シャルルマーニュって国を持ってるの?

→持ってない。だが都市を持っている上に戦力が馬鹿でかいのでほぼ一国並みとして認識されている。


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