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現世の英雄  作者: ぱっと見アラサーの高校生
第2章 万正、理想へと進み
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第二十四話「道は険しく美しく」

「白装束──地下組織の人ってことでいいんですよね?」

「知っていたのか。尚更殺すしか無くなったな」



冷徹な目で白装束はシノンを見下ろす。



「で、撃ってこないんですか?来ないならこっちから行きますよ!」

「騒ぐな。もう撃っている」

「!」



シノンが駆け出すと同時に白装束が動いていないのにも関わらず彼めがけて空から矢の雨が降って来る。それに対してシノン自身の上部に粒子を展開し全てを弾いて見せた。


また死角、それも挙動も見せずにか。俺が屋外に出てからも時間があった。やっぱり奴の生跡は軌道と速度の操作だな。

他にも矢がある可能性が高い。ここはまず屋内に入る。


シノンは近くの建物に入り窓から白装束の様子を伺うがすぐさま窓際に矢が突き刺さる。



「射撃の腕は当然あるか」



奴には爆弾がある。いつまでも屋内に居る訳にはいかない。

他にも矢がこの近くにあることを考えれば現状不利、あいつはいつでも俺のことを狙い打てる訳だ。

だが屋内に居る内の攻撃が射撃じゃないのは軌道の操作には限界があるから。屋内に居座れば爆弾で外に出される。

面白い。純粋に実力での勝負──全力でやってやる。


シノンは屋外に出て白装束へと走り出す。それに反応し白装束は5本の矢を放つ。シノンは不規則な軌道で迫るそれらを剣で弾き落とすが最後の1本を弾きかけた時突然軌道を上に変え即座に急降下しシノンを狙う。


迎撃に合わせた寸前の軌道変更──予想通りだ。


剣が間に合わない事を考えシノンはサマーソルトで矢の()を砕く。

着地と同時にさらに前進、と行こうとしたがシノンの眼前から白装束が消えていた。


移動したか?防がれる前提で視界から外すために撃ってきたな。狙撃手としては正解の行動、だがそれで俺が殺せないのは見たはずだ。



「どこからでも来い」



シノンは魔力探知での狙撃位置の特定に移る。


探知範囲の外からの狙撃だとしても矢の軌跡でなんとなくの位置は分かる。さぁ来い。完全意識外からの狙撃以外怖くはない。


シノンの意識が建物の隙間や上空、建物の窓のみに絞られた時、図ったかのようなタイミングで真横の壁が破壊される。



「!」



完全に意識外且つ高威力の1撃が建物の壁を幾重もぶち抜いてシノンに届いた。

剣の腹による弾きではなく防御を取ることでなんとか直撃を避けたシノンだがその1撃はシノンの意表を突いたという証明には十分すぎた。


さっきまでの狙撃ブラフかよ!俺の意識を完全に今の1撃から遠ざけたな。やり慣れてる気がするがなにか違う気がする。まるで森の中で狩人に狙われる獣の気分だ。

それに、魔力探知で気付きにくい1撃だった。もしかすると──


シノンが自身の疑問に答えを出す前に彼の頭上から踵落としが振るわれた。腕で受けきるがシノンの想像以上に威力は高く。その余波で地面に亀裂が入った。

白装束は距離を取ろうとするがそれを逃すシノンではない。白装束の足を掴み思い切り建物の壁に投げつける。



再構築(ディフトロシア)



追撃、シノンは粒子による質量攻撃を行いつつ距離を詰める。、また距離を取られることを防ぐための攻撃だったが白装束は逆にシノンに迫り近接での戦闘に誘い込んだ。


ここで近接?弓まで捨ててなんのつもりだ?まぁいい。近接なら俺の──



「!」



瞬間、シノンの視界を強力な光が満たした。


閃光玉!こいついくら手札を持ってる!?


シノンの視界を潰した白装束はシノンの手から蹴りで剣を弾き落とし。シノンの鳩尾に蹴りを叩き込んだ。

蹴りの衝撃に仰け反るシノンとは裏腹に白装束は足に感じた感覚に対して眉間に皴を寄せた。



「防具を着けていない部分が丸裸だと思いましたか?」



あっぶな。生跡発動中は常に粒子のアーマーを来てて正解だったな。

正直相手が短剣でも持ってたら苦しかった。


互いに一瞬で詰まることができる間合い。交差する視線が動きを感じ取った時、2人は同時に動き出した。

互いに武器となる物を持たずして行われる徒手での戦闘、しかしそこにシノンは粒子の、白装束は手持ちと散らばった矢の軌道、速度操作を使った援護で敵を追い詰めようとする。


足での攻撃を主とした立ち回りで白装束はシノンへ攻めるが世写の四肢(ウィガール)を纏ったシノンはその全てを軽々と受け流す。

徐々に、そして確実に現れ出した両者の身体能力の差が白装束を追い詰める。


遠距離から狙撃をしていれば劣勢にはならなかっただろうに、どうして近距離の戦闘に持ち込んだ?

それに劣勢の中でも奴から感じるこの余裕はなんだ?



「狩人は、罠にかけて獲物を殺す者だ」

「は?」



こいつ一体なに言って──待て、この場所はまさか!


シノンは誘導されていた。そして騙されていた。

一度に操作できる矢の本数、そして操作した矢の威力には限界があると。現にシノンの意表を突いたあの1撃の軌道は曲がりもしなければただ全力の加速をしただけのものだった。それ故に騙された。

操作できる矢の本数は器量次第、そしてその威力は加速させ続ければ自ずと上昇する。

時間を掛ければ先程の1撃以上の出力を出すことも可能である。


ここは、矢の雨を受けた場所か!じゃあ矢はどこだ?

──まさか!


あまりに自然な魔力、自然に溶け込んだ魔力でシノンは気付くことができなかった。

自身の頭上で作り出されていた。無数の矢による光輪に。



「終わりだ」



言葉が告げられ白装束がシノンへと手を振り下ろすと光輪が崩れ矢がシノンへと振る。

降りしきる矢その全てが、先刻の1撃と同等以上の威力を持っている。


気付けなかった理由はこの際どうでもいい。捌き切れるか?無理だろ。数発受けたところで体勢を崩して終わりだ。

その前に発動者を討つ?間に合う訳が無い。剣も無いのに受けきれるのか?一か八かで避けるか?



「いや、そりゃないだろ」



シノンは意を決し腰を捻り体に纏う粒子を全て右腕に凝縮させる。


ジオは言っていた。生跡を使い戦う者ならばいつかは必殺に成り得る技を得るべきだと。

今だ。完成させずとも今ここで生み出してみせる。


意図している訳ではなかった。ただ無意識下で自身の生跡で可能としていることを掛け合わせた結果だった。

出力上限まで溜め、自身の腕を軸に超高速で粒子を公転、自転さえ加熱された粒子が崩壊、その際に発生したエネルギーとシノンの総量を活かした魔力放出を掛け合わせた1撃を放つ。

粒子の崩壊によるエネルギーの発散という全方位攻撃を魔力の介入による指向性の付与で1筋の光線、または波動へとなった。



「吹っ飛べ!」

「!」



振り抜いた腕より蓄積されたエネルギーと魔力が解き放たれ迫りくる矢を焼き払い、辺り一帯にとてつもない風圧を放った。



「くっ」

「逃がすか!」



奥の手を防がれ打つ手を失くした白装束が後退し姿を隠そうとするが、すかさず距離を詰めたシノンによって粒子で拘束、手足を縛り馬乗りになることで行動を許さなくされた。



「もう逃がしませんよ」

「…殺せ」

「殺しませんし自害もさせません」



もうちょっと強めに拘束した方がいいか?舌を嚙み千切られでもしたら情報が得られなくなる。

さっきの1撃の負荷で腕が焼けてるし背負って運ぶか。


シノンは立ち上がり白装束を肩に背負った時、彼の肩に柔らかい何かが当たりシノンの思考と脚が1瞬停止する。



「…」

「一応──謝っておきます」



気まずい空気を気にしないようにしながらシノンは白装束と資料2つを持って避難所へと帰還した。



ーーー



シノンが戻った頃、避難所には職員のほとんどが避難を追えており死傷者は指で数えられる程度の数だった。

騎士団は未だ治療と消火を継続、オリヴィエとバヤールは既に帰還していた。



「オリヴィエさん!」

「?──シノンか。その背負っているのはまさか白装束か?それにその腕…」

「色々話したいことがありますけどそれはここを収めてからで、来るまでに気絶させたのでしばらくは起きません。それと地下空間ですがここにも問題なくありました」

「そうか」



帰還時にシノンは要点へと向かいその存在を確認しており、その位置はやはりと言うべきか僅かに東へとずれていた。

消火作業も終わりが見えた頃、ヒッポグリフに乗ったローランとアストルフォ、トゥルパンが到着する。



「あれ?皆さんどうしてここに?」

「以前言った信号装置だ。お前が居ない間に使った」



信号装置、すっかり忘れていたがそうか。便利な物があったんだったな。

全員がここにいるということは要点の操作は終了したということでいいんだろうか?


着地した3人がシノンとオリヴィエの元へと駆け寄る。



「おーいシノン、オリヴィエ!」

「お疲れ様です皆さん」

「シノン殿も活躍なさったようで、そちらの腕はよろしいのですか?」

「勲章ですよ。重傷ではないですし今は避難した人々の治療が優先です」



最後の1撃、あれは意図して出した物じゃなかった。

どこかから湧いて来た。こうすればできるという考えが湧いて来たんだ。

あの威力、俺が持っているどの技よりも高かった。その結果が丸焦げのこの腕なんだが、それは剣で撃てばいい話だ。



「あとはこれですね」



シノンは自身の鞄に入れておいた2冊の本を取り出して見せた。



「これは?」

「白装束がここを狙った理由となる物です。実際この本を見つけた後に僕は奇襲をされました」

「1つは魔力体、もう1つはタラスクの血肉についてか。確かに連中の欲しがりそうなものだな」

「そちらは地下空間を見つけ切ったのか」

「そりゃ勿論だよ!でも全部東にずれてたし潜れてないしでちょっと狂っちゃった」

「ん?お前たちもか?」

「なるほど。やはり全ての位置がずれているらしいな」



全てがズレていいる。やっぱり軸自体がズレている可能性が高いな。

潜入ができなかったのは工場の件を知って休校してくれたからだろう。



「合流は済んだ。この場は騎士団長に任せ一度白装束を聖堂に持ち帰る」

「勝手にやっていいんですか?」

「倒したのはお前だシノン、お前の自由だろう?」

「了解です」



その後、オリヴィエに白装束を預けて先に大聖堂へ行ってもらい。シノンはバヤールに向かった先で何があったかを聞き、腕の治療をしてもらった後に大聖堂へと向かった。



ーーー



そして現在、シノンは大聖堂で待機していたジオとジャンヌ、そしてランスを含めて全員に今回の事件で得た情報などを共有していた。



「と、言うのが僕が得た情報です。そしてここからはバヤールさんから受け取った情報です。

 まずさっきの話で出したこの2冊の資料に出て来る魔力体と血肉はどちらも奪われていました。

 何故情報を得たのかなど疑問は多いですが現状白装束はそれらがどんな物かはしっていても明確に何ができるなどは知らない状況です」



あの後、バヤールさんに聞いた話では到着したころには試験棟と分析棟は荒らされ尽くしていた。何かを補完していたと思われる一面がガラスで覆われていたタンクの様な物が幾つか破壊されていた


事態の悪化を防げた。とはお世辞にも言えない状況だが、まだ最悪ではないのは確かだ。



「それで、そこに座らせてる人に尋問をしようと」

「そういうことです」



シノンたちの振り返った先には、チャーチチェアに拘束状態のまま座らされている白装束の女がいた。



「私は何をされても答える気はないぞ」

「って言ってるけど?」

「どうする?指でも落としていくか?」

「ちょ、ちょっと待ってください!騎士団に引き渡すのに勝手なことは駄目です!」



代用の剣を引き抜こうとするローランと白装束の前にシノンが割って入る。


流石この世界に生きる騎士たち、血になんの躊躇いもない。別にそれを辞めろなんて言うつもりはないが今は騎士団に隠して尋問している訳だから、この後を考えれば怪我を負わせるのはまずい。



「でもどうやって聞き出すんだいシノン?彼女は妖精族(エルフ)だ。掟や決まり関しては他種族の中でもかなり口が堅いよ」

「え、エルフなのか?」

「気付かなかったのかい?君の魔力探知なら違和感くらいあっただろうに」



確かに魔力探知にひっかりにくいとは感じていたが、妖精族特有の技術だったのか。

妖精族──確かに口を割らせるのは至難の業だな。でも貴重な情報源として逃がす訳にはいかない。



「僕に任せてもらえませんか?」

「何?」

「僕が必ずどうにかします。だから──」

「人を甘く見るなシノン、時には痛みが必要な時もある」



ローランさんの言葉はごもっともだ。でも少し違う所もある。

俺が人を甘く見てるなんてことはない。醜さだって見てきたつもりだ。



「ずっと思ってました。悪人だからとか罪を犯したからとかそれだけで捌いたり痛めつけていい訳じゃないって」

「シノン」

「!」



シノンが絞り出そうとする言葉をジオが止める。



「それを口に出してしまえば、君の道はより険しくなるよ。敵も味方も救うなんてただの理想だ」



シノンの思いを見透かしているからこそ、ジオはそれを良しとはしない。

彼の目に映る未来のシノンはきっと、その道を歩み続けることで自分を擦り減らし続けているから。



「いいじゃないか。理想で──笑ってそれを叶えるのが英雄だ」

「──そうか」



納得はせずとも尊重はしようとジオはシノンの行いに目を瞑った。

ジオの反対を押し切ったシノンはオリヴィエたちの方を向く。



「悪とか善とか、そういうのは見方で変わりますよ。色んなことを経験して分かり合えないから手を染めるんです」



6歳の誕生日、怒りに任せて人を殺した。捕縛して話を聞くこともできたかもしれなかった。

彼らにも──家族や守るべきものがあったのかもしれない。そのための行いだったのかもしれない。

その人のことを何も知らずに断じて裁くのは違うんじゃないかと思った。

だってそうだろ?



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



分かっている。ジオの言った通りこれは理想だ。

分かっている。誰も彼も分かり合えるなんて思ってない。

俺の故郷を滅ぼした奴にもこれが言えるかは分からない。他人事だから言えることなのかもしれない。



「僕は少しでも、人に()()()()()んです」



醜い世界を見て来た。凄惨な物を見て来た。

それでも俺はこの世界の、人の持つ美しさに目を向けたい。



「…分かった。では任せるぞ」

「ありがとうございます」



シノンはオリヴィエに深々と頭を下げ、その空間を自身と白装束だけの場にしてもらう。

シノンは白装束の前に椅子を持って来て座る。


月明かりで良く映える顔だ。流石は妖精族、敵意剝き出しでも顔の良さを分からせられるな。



「それじゃあ、僕たちの仲間になってもらいましょうか」

「──は?」



聞き耳を立てるオリヴィエたちでさえ、その言葉には素っ頓狂な声を出した。

ちょっとだけ触れた誘拐犯といの戦いですがシノン君は怒りに任せたことを少しだけ後悔しているんで行くことは無くても街のはずれに誘拐犯たちの墓を作ってます。

行ったことはないです。

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