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現世の英雄  作者: ぱっと見アラサーの高校生
第2章 万正、理想へと進み
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第二十三話「工場大炎上」

ジョイマン見たいなタイトルになっちゃった

一体何が起きている?明らかに爆煙が上がっている場所はジオが目星を立てた場所の付近だ。

それにあそこ一帯は工場が立ち並んでる。このままじゃ被害が!


生跡を使用し世写の四肢(ウィガール)を身に纏いながら都市を駆けるシノンにオリヴィエの俊足が追い付く。



「シノン、あそこは」

「最悪の展開ですよ。白装束でもそうじゃなくても予想外です!」



白装束の場合、こんな大事件を起こしてまでやりたいことはなんだ?考えられるケースは3つ、工場地帯に目的の何かがある。その場合狙われるのは動力になってる魔石だ。

工場の破壊自体が目的の可能性もある。その場合奴らにとっての不都合があると見て言い。そして最後に、民衆に自分たちの存在を知らしめるため、だがそんな浅はかな連中とは思えない。

必ず目的がある。



焦りと疑念を抱いたまま、オリヴィエと並走しシノンは爆煙の発生源へと急ぐ。



ーーー



2人が到着したころには工場が立つ区域全体が炎に包まれていた。燃え盛る工場には逃げることができた職員たちが絶望の目を向けている。



「大丈夫ですか!?」

「お怪我は!?」



シノンとオリヴィエが急いで職員の方へ駆け寄る。逃げ切れた者に重症の者は居らず経度の火傷や切り傷ばかりであったことに安堵する中、1人の職員が錯乱しながらシノンの服を掴んだ。



「!──どうしたんですか?」

「あ、あの中に、まだ俺の知り合いがいるんだ!あんたら騎士団だろ?

 頼む、助けてくれ!」

「まだ中に!──どこの建物ですか」

「真っ直ぐ行った先にある。製造の第1棟だ」

「すぐに向かいます!オリヴィエさんは他に行方不明者がいたら向かってください!」



シノンはオリヴィエを置いて、職員から教えられた棟へと炎の中に身を投じる。

熱気に気圧されるが直ぐに足を進め壁に「製造ー1」と書かれた建物の前に到着する。


熱い。入ったばかりなのに汗が止まらない。

こんな場所にずっと──爆発を確認した時間から考えれば意識を保ててる訳がない。

ここは魔力探知で探す!


魔力を展開し周囲の生存者の位置を探る。

基本的に常人は一定の量を下回る魔力の探知ができない。しかしシノンは幼少期の鍛錬の結果微細な魔力ですら逃すことなく探知することを可能にしている。


見つけた。この棟の中に3人、他の棟にも数人いる。


シノンは確認を終え、まず製造第1棟に入った。

工場の内部も外と変わらず、いやそれ以上に燃えている。

シノンが中を見渡せば内側から突き破った様に破壊されているタンクや配管が多く映った。


やっぱり火事によって誘爆が起きてる。生きているのが奇跡だな。


シノンが魔力探知を継続しつつ内部を探索していると、瓦礫の下に埋もれている人影を発見した。

慌てた様子で駆け寄り、気絶している男性の体を揺らす。



「大丈夫ですか!?」



脈はあるけど、活性化させた魔石の影響か。魔力過飽和に陥っている。


シノンが男性の容体を調べると男性のの体に薄っすらと力脈が浮かび上がっていた。

これは過剰な魔力を体内に取り込み留めてしまったことで陥る魔力過飽和という症状である。

初期症状は頭痛や眩暈に過ぎないが、症状が進むと力脈を蝕まれ魔力を扱う感覚を失うまでに至る。


シノンは急いで男性の上に落ちた瓦礫を粒子に変えて男性を救出する。その後同じ棟にいる2人も救出に成功しシノンは一度避難した職員たちの元へと戻った。



「第1棟に居た人はこれで全員です」

「ぁあ、ありがとう小さい騎士の兄ちゃん。本当に、本当にありがとう…」



シノンに救助を頼んだ職員がシノンの手を握り涙を流しながら感謝を伝える。



「彼らは魔力過飽和になっています。心苦しいかもしれませんが無理矢理にでも一度起こして魔力を消費させてください。僕は残っている人を救助に行きます」

「ああ、ありがとう。気を付けてくれ…」



職員に救助した人々の処置を教えてシノンは再び火中に脚を踏み入れる。


さっきの魔力探知で他にも人が残っているのは見つけた。それにあの場にオリヴィエさんが居なかったということはあの人も救助に向かってくれているはずだ。

今は目の前の問題に集中する!


シノンは魔力探知を展開し、避難できていない職員たちの救助へと向かう。

厚生棟、寮棟など地帯の建物を駆けまわり、探知次第すぐに救出及び避難場所へ運び出す。

それを繰り返すことでシノンは10人の職員を火事の中から救い出すことができた。



「これで、10人──」



確認できた10人目の職員を背中に背負い、シノンは避難所へと向かう。

何度か出てはいるものの、長時間火の中に居続けたことでシノンの意識は擦り減っている。


幾ら工場内を探し回っても白装束の尻尾すら掴めない。もしかすれば、これは単なる事故の可能性もある。

でもそれにしては火が広がり過ぎだ。事故で1区画だけでなく全体にまで広がるとは到底考えられない。


逡巡しつつもシノンは避難所に到着し背負ってきた職員を任せた。シノンはさらに救助に向かおうと工場へ振り向いた時空気をも降らす声に呼び止められる。



「シノーン!!」

「バヤールさん?」



後ろに連れているのは騎士団員たちか。なるほど団員を集めるまでに時間が掛かったということか。



「団員を動かすのに遅れてしまった。だが後は任せろ水系統の生跡を持つ団員を多く読んで来た!」

「それは助かります。では避難者の手当と消火をお願いできますか?」

「いいだろう。では団員たちよ直ちにかかれ!」

「は!」



バヤールの指示で騎士団が一斉に動き出す。連れてこられた団員は回復系統、水系統の生跡を持つ者ばかり、バヤールは到着が遅れてしまうことを考慮して人選をしていた。

水系統の生跡を持つ者は水や濃霧、泥を生成し鎮火、回復系統の者は重症者から順に手当と手慣れた様子でこなしていく。


到着までの時間がネックだが流石は騎士団、そこからが早いな。これなら俺も──



「バヤールさん、僕はさらに奥に向かいます。できれば救助の手伝いを!」

「元からそのつもりだ!」



バヤールは重厚な装備を身に着けているにも関わらずシノンと変わらない速度で走り工場地帯へと入っていった。

入った瞬間にシノンとバヤールは別れそれぞれ別方向への救助に向かう。

向かった先はシノンが管理棟、事務棟咆哮。バヤールが試験棟、分析棟方向だ。


危険物の多い方をバヤールさんに任せてしまった。あの人ならローランさんじゃないしそうそう下手なことをしなければ大丈夫だと思うが、まぁ俺が行くとなったら止めてきてただろう。2手に分かれる時も無言の圧を感じたし。


事務棟に到着し魔力探知で周囲を探知、しかし探知に反応する者は1人もいない。

それでもシノンは事務棟の中に入っていった。


正直バヤールさんが来てくれて助かったな。俺とオリヴィエさんだけで調べていれば時間が足りなかったかもしれない。

十中八九、これは事故ではなく事件だ。何者かによる放火であると断定していい。ならば犯人は何を狙っているのかが知りたい。工場で何か重要な物があるとすれば?

その答えは明白、今俺とバヤールさんの向かっている4つのどれかだ。物ならあちらに、情報ならこちらにある。

バヤールさんもその辺り理解して動いてくれてるといいけど…



「それにしても、よく分からない資料だらけだな」



事務棟の資料を収めている部屋まで到着したシノンは本としてまとめられている資料を幾つか手に取り捲って中を確かめている。


建物の奥にあるおかげでどうにかまだ燃えてなかったけど、時間はないな。


動かす手を速めシノンは次々と資料を漁る。

人員、設計図、製造製品、この世界の工場ならばどこでも置いてあるような資料の中にシノンは1冊、厚さはないが他の本とは雰囲気が違う本を見つけた。



「高密度具現魔力体の研究──」



本の表紙に描かれた研究内容を読み上げてからシノンはページを捲る。

そこに描かれた内容はこの大陸の南東、ドレアン諸領とタラヴェル森域の境に存在する遺跡より回収された膨大な魔力を持つ物質の研究についてだった。

この一帯は工場という名ではあるものの研究施設と工場が併設されている。


今の所魔力リソース以上の役割は無いらしいな。検証の数は多いが最終的な結論にはやはり失敗以外書かれていない。

だが危険物──貴重な物なのは確かだ。情報としてこの本は貰っておこう。あとの本は多分燃えても問題ないだろう。


シノンは携帯していた鞄に入れて部屋を出て管理棟へと向かう。

避難所付近の炎は騎士団により消えかけているがシノンの周囲は未だ激しく燃え盛っている。

火の回る速度を危惧して、シノンは工場の屋根を伝いショートカットしつつ向かう。


それにしても放火した奴は一体どこに?目的の物を取ったからすぐに逃げた?だとしたら放火の理由が分からなくなるから困るな。

理想は俺が漁り終わった後に来てくれるのが理想なんだけどな。



「敵に合わないのが1ば、ん?──!」



屋根から屋根を伝い走るシノンの下に強弓の一矢が迫る。

シノンを避けるが、着地した彼の頬から血が流れる。


掠ったか。あれ矢だよな?弓って強化したらこんな威力出るのか。

一体どこから撃たれた?


シノンは頬の血を拭い、腰から剣を引き抜く。


360度どこからでも狙える位置だけど、位置を探るにはこれしかない。

目的は変更しない!攻撃されたなら全力で迎え撃つ!


位置を探りつつ管理棟へ向かうためシノンは工場の屋根から降りることなくそのまま進行する。



「!──来た」



シノンは自身の元へ山なりに飛来する2本の矢を剣で弾き落とし発射されたであろう地点へ視線を移す。


もうあそこにはいないな。1度ならず2度までも高台も遮蔽物もない俺の死角からあの速度の攻撃、それに2発目はあからさまだった。

山なりに撃ってあの速度はでない。おそらく生跡による軌道か速度、又はその両方の操作だな。

となれば狙撃手はバレない場所で、尚かつ俺の位置を視認できる場所であればどこでもいい訳だ。



「ならこのまま進ませてもらう!」



移動中の俺にも合わせる腕、生跡ありでもかなりの腕がある。下に降りるか建物の中に入りたいが火の回りが気になる今、それはしたくない。

回避も防御もできた。ならここで退避は選ばない。

それに、俺が屋内に入れば屋内でも矢を当てられる精密性が無ければ撃ってこない。


足を止めることなくシノンは管理棟へと直行、途中何度か矢による妨害があったが全て撃ち落としシノンは管理棟に窓を破壊して侵入した。



「よし到着」



さすがに建物中まで狙撃はないと思いたいけど、剣は持ったままにしておこう。


管理棟は管理する者の少なさの影響で他の棟に比べて一回り小さく作られている。それにより漁る時間も少なくなる。

訳ではなく、事務室以上の資料が置かれているので今シノンは事務室の数倍の速度で資料に目を通している。



「各棟の説明はどうでもいい。魔石の運用の許可証も、土地の権利書も、全部どうでもいい!

 資料が多すぎるぞ管理棟!」



落ち着け俺、まず闇雲に探すのが間違っている。ここは1度落ち着いて整理しよう。

さっきの狙撃手、あれがおそらく放火犯だろう。それか工場に火が付いたことを知って急いで何かを回収に来た第3者かだ。どちらにしても既に目的の物を手にしているなら俺を殺しに来るのはおかしい。

つまり俺が行く方向、管理棟に何かある。これは確定だ。

ではここに何があるか。



「もう少し都市の事を調べておくんだったな」



シノンは後悔を冗談口調で零しつつ資料だなに並べられた本の背に書かれている名前を見ていると1つの本に目を止めた。



「タラスクの血肉の研究成果…」



魔石だけが利用されている訳はないとどこかで考えていたが、まさか本当に研究しているとはな。


シノンは本を手に取りすぐさま内容を確認する。


読めば読む程見えて来るな。ここの研究施設はタラスクの血肉にまで可能性を見出そうとしている。

それにこの1文は奴らにバレてはならない。


シノンが手を止めた最後の1ページ、その文末にはこう書かれている。


『タラスクの血肉は魔石からの魔力供給がなくとも1日に極少量肉体を再生させる。このことからこの血肉には元の肉体もしくはより深くにある魂の情報が残っていることが分かった』


これを蘇生の際に使えば、タラスクはおそらくより生前の姿になって復活するだろう。

この情報は絶対に渡せない。これがある事をあの狙撃手は知っているのか?だとすれば確定で白装束だ。


シノンは本を自身の鞄に入れてその場を立ち去ろうとする。その時屋外からの爆弾の爆撃によりシノンがいる管理棟が崩壊する。

建物の倒壊による砂煙と爆煙があたりを包む中、そこから白い粒子の球体に身を包んだシノンが跳び出す。



「あっぶねえ。あと少しで丸焦げだったな」



球体から出て周囲を伺うシノンの顔には避け切れなかったのか少しの火傷が残っている。

手に持っていた剣を構え、崩落した管理棟の瓦礫、その頂上に立つ弓を構えた白装束を睨む。



「全身を隠せるフード付きの白いローブに口元を隠した白いマスク──今度こそ、白装束だな」

・タラヴェル林域…妖精族が住まうとされる常若のコル・ナ・ノーグを含む巨大な森林地帯のことであり、自然魔力が濃いとされている。原因は初代妖精王の貼った結界によるもの。

タラヴェル林域で迷い常若の森に迷い込んでしまった妖精族以外の者は門番である巨大なゴーレム──スプリガンによって出口まで連れていかれる。妖精族の場合は森の中なら行きたい場所に連れて行ってくれる。


多分出ないけど出したい。

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