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現世の英雄  作者: ぱっと見アラサーの高校生
第2章 万正、理想へと進み
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第二十二話「調査開始 二」

犯人を捕らえた後、シノンとオリヴィエは騎士団に渡す前に個人的な聞き取りを路地裏で行っていた。

あの後、被害者を建物の近くにいた人に任せ犯人の元へシノンは急行、その後犯人を起こして尋問を始めた。



「近くにあったから着てただけ!?」

「…ああ」

「手がかりだと思ったのに…」



尋問の結果、犯人は地下空間の組織とはまったくのむ関係者だと分かった。白い外套は顔を隠せる物を探していたら近くにあったから身に着けただけらしい。よく見ると白装束たちのデザインとはかなり異なっている。



「こいつから聞けることはなさそうですね。騎士団に引き渡しましょう」

「待てシノン、最後に聞きたいことがある」



シノンに断りを入れたオリヴィエが犯人の男へと顔を近づけ、鋭い目つきで問いただす。



「この都市に関する直近の噂で怪しい組織に関する物はなかったか?」

「組織?なんだよそれ…」

「やはり知らないか」



分かっていたと言ったリアクションでオリヴィエは男の傍から離れた。そう簡単に情報を得させてはくれないらしい。

聞き出すこともなくなったので捕縛した男をシノンが担ぎ、騎士団の元へと向かおうとした時、男が何かを思い出したかの様に口を開いた。



「そう言えば、関係あるか知らないがちょっとした噂を聞いたことがあるぜ」

「なんだ?」

「最近、裏社会の新人は減っててな。その理由が捕まりゃ殺されるって噂が立ってるからだ」

「罪人だ。死刑になることくらいあるだろう」



リスティアの法はかなりしっかりしている。富の独占も起こり辛く、多くの物が平穏を享受できる。未だ騎士団の届かないところで悪行が蔓延っているとはいえ、ここは治安が良い方だ。

刑罰に関しても罪状によってそれぞれ求刑されるに相応しいものが選ばれている。一定の水準を超えれば死刑になるのは当然だ。



「そうじゃねえ。殺されるのは国にじゃなく正体も分からない何者かにだ。聞いた話じゃ、追放刑を喰らった奴は追放の前日に殺されたらしいぜ」

「…何者かが独断で処刑をしているのか」

「ま、噂だ。俺は信じちゃいねえよ」



所詮噂だが、これもれっきとした情報だ。どこかでつながる可能性だってある。

独断で罪人に処罰を下す存在、正義感が振り切れるとそこまでいくのかね。


そうして罪人の噂話を聞いている間にシノンとオリヴィエは騎士団に到着した。石造の堅牢な作り。例えるならそう。小さな要塞とでも言うべきそれは大聖堂に勝る大きさを誇っていた。



「シノン、ここだ」

「でかいですね」

「リスティアの騎士団本部だからな」



リスティア騎士団本部、大陸の中でも目立った話は聞かないがその実力は市民に信頼されている。大陸に名が広がらないのもリスティアの領土自体が他の国より平和であるのが理由とも言われている。


ここに来た要は2つ、犯人の引き渡しと地下空間の調査要請だ。あと1つ調査すべき箇所を残しているが逆に好都合、最後の要点を見つけ掘り起こせば動かぬ証拠となる。騎士団もその場で調査の要請を受けてくれるだろうと考えた訳だ。


シノンとオリヴィエは早速犯人を渡そうと正面の門に槍を持って立っている門兵に話しかけにいった。



「失礼、重要な用でこちらに来た。犯人の引き渡しと調査の要請を行いたい」

「そちらの少年が担いでいるのが犯人か?調査要請とはそ奴とは別件か?」

「そうだ」



2人の門兵がシノンとオリヴィエに背を向け、こそこそと話しをし出した。何を話しているのか考えた時にシノンは1つの出来事を思い出す。


あれそういえばローランさんって一回騎士団に追われてるんだよな?それで確かオリヴィエさんとアストルフォさんは騎士に追われ出したところまで追えてたわけだから…

あれ?顔割れてない?張本人じゃなくともその仲間として顔割れてない?


とてつもない事実に気付いたシノンは、額から冷や汗を滝の様に流し出す。その様子を不思議そうに見るオリヴィエだが自分が原因のことを彼女はまだ知らない。


少しして、門兵が話を終えたのかシノンたちの元へと戻ってきた。戻ってきた門兵はシノンとオリヴィエをじっくりと観察した後、腕を組んで少し考える様子を見せ頷いた。



「よしいいだろう。ここを通す」

「感謝する」

「ありがとうございます。ははは…」



終始落ち着かない様子でシノンは許可され1人の門兵に着いて行き本部の中へと入っていく。


騎士団本部には訓練場、演舞場、兵舎、武器庫、医療棟と指揮棟の6つの施設があり訓練場を囲むように兵舎などが並んでいる。

訓練場では多くの騎士と思しき者たちが剣、槍などの多様な武器を使い案山子に技を打ち込んでいる。

向かう先は騎士団本部の右手側の外と何1つ変わった所も見えない建物だ。


何が起こるかと心配するシノンを置いてここからはとんとん拍子だった。犯人を引き渡し、人を呼んでくると言われて部屋で待たされ、そして8人の騎士に囲まれながら大柄の男を目の前にしている。


ど う し て こ う な っ た。

人を呼んでくるって言ってたよな。なんで目の前のガチムチのおっさん呼びに行ったらセットで8人騎士が付いてくるんだ!それでなんでオリヴィエさんはそんな堂々としてるんだ!?


ジャンヌとジオへの申し訳なさを抱き始めたシノンは諦めきった顔で涙を浮かべている。目の前に座る男は椅子に腰を掛け、腕を組んだ状態で話し出した。



「昨日の事だ。街を全裸で走る男と、それを追う女と男が目撃された」

「…」

「…」



男の鋭い目つきに滝汗がさらに激しさを増す。



「その中にお前の様な女を見かけたと聞いたぞ」

「…」



なんて答えるんだオリヴィエさん、返答によってはここでゲームオーバーになる。聡明なあなたならできるはずだ。この状況を穏便に済ませる返答が!


シノンの鼓動が早くなる。この状況で4人、それも手練れも手練れの戦力を失うことは大きすぎる。シノンの緊張を孕んだ視線を受けてオリヴィエは答える。



「ああ、私の仲間だ」



終わった。認めたかぁ。認めちゃったかぁ。

さようならローランさん、あなたのことは忘れません。ここにいる間は顔も出しますし手紙も出します。


堂々とした姿勢でローランの行いを認めるオリヴィエ、その態度を見て黙っていた男が高笑いをしだした。部屋に、いやこの建物全体に響き渡る程の大声で笑う男の声にシノンは手で耳を塞いだ。



「ふはははあ!いやいやまさかそこまで堂々とされるとはな。自首、ではなさそうだな」

「ああ、そもそも全裸で走ったところで大した処罰にもならないだろう。奴はこちらで半殺しにしておいた」



なるほど、全裸じゃ問題にならないことを分かっていたから言ったのか。肝を冷やした。



「門兵にも言ったが調査の要請をしたい」

「調査、騎士団に取り囲まれてもそのまま突き進み騎士団を薙ぎ倒し男がいてもか?」

「その通りだ」



何してんだローランさん、しっかり騎士団に危害加えてるじゃないか。



「担当直入に言えば、この都市の地下空間の調査だ」

「地下だと?」



内容を聞いた男の繭がぴくりと動いた。どうやら話に少し興味を持たせることに成功したようだ。



「同じく昨日の事だ。この少年と露出狂が地下に大規模な空間を見つけ出し不審な組織を発見した。

 現状その組織は多数の殺人、そしてその果てにこの都市の魔石の主を蘇らせようとしている」

「何!?」

「虚言では許されないぞ!」

「黙れぃ!!」



オリヴィエの報告に部屋中の騎士団が驚愕を示し、その発言に疑いを向ける者も出た。その結果がやがやと意見が飛び交い騒々しくなった部屋の空気を男の声が一括した。男の声は大変大きく、一瞬で騎士たちが黙っただけでなく数名は震えだしている。



「それで本当であると言う証拠は?」

「既に復活の魔力式の設定図を抑え、発見した地下空間の場所をマーキングしてある」

「なるほど証拠は十分か。だが事が事だ。実際目で見るまでは」

「それなら丁度後1つ、調査箇所を残してるのでそこをご一緒に見に行きませんか?」

「用意周到だな」

「うちの参謀が優秀でしてね」



ここまで順調に動けているのはジオのおかげ、どこで得たかは分からないが奴の持つの知識の数々は重宝できる。



「よしならば見に行こうと言いたいが、その前に名を名乗っておこう。

 バヤール・ゲクラン、ここの団長をしている」

「オリヴィエだ」

「シノン・ウィットミアです」

「ウィットミア?小僧お前ウィットミアと言ったのか?」

「はい。言いましたけどぉ!?」



シノンの姓を聞いた瞬間に男はシノンに顔をずいと近づけその顔をじろじろと見始めた。目をすぼめ、見開き、隅々まで観察を行った末に納得した様子で手を叩きそうだと声にした。



「お前、タリアさんの息子か?」

「え…父を知ってるんですか?」

「顔はあの人に似てないから母親似か。だがその剣、あの人が使っていた物だな」



男が視線を落とした先にあるのは、シノンが父から受け取った剣だ。シノンが男の目を見ると、彼はなんとも懐かしそうにシノンの持つ剣を見詰めている。


父さんがこの剣を使っていたのを知っている。どうやら知り合いなのは本当らしい。でも俺が生まれてから父さんが長期間家を空ける事はなかったし、となれば俺が生まれる前の知り合いか。



「タリアさん、お父上は元気か?」

「…サリオーンの災害で死にました」

「そうか、悪いことを聞いた。タリアさんにはそれはお世話になってな。抜けているようで全て見えているような人だった」



俺の知らない父さんの話だ。俺の知っている父さんは、いつもおちゃらけていて思春期の男子のように振舞っている時の方が多かった。

だが、立派で尊敬のできる人間であることは知っている。俺はあの人を自分の父だと胸を張って言える。



「苦しいだろうが頑張れ。あの人の息子ならば俺がお前に乗せる期待は大きいぞ」



やっぱり父さんは意外とすごい人だったんだろうか?故郷の街でも騎士団の中なら行為職についていたくらいだし。実力はあるのは知ってたけど…でも母さんの話だと仕事サボってたんだよな。

父さんの顔は多い。とりあえずは自分の見て来た父さんを信じることに使用。

俺の見てきた父さん…


それはある日の怯えた様子



『何してるの父さん母さんから隠れて』

『ああ、シノンか。大人のお店言ったのがバレてな』

『母さん父さんここにいるよー!』

『おいシノン!!』



それはある日の楽しそうな様子



『やっぱり酒は美味いな』

『そうなの?』

「ああ、でもこれをもっと美味く飲む方法があってな」

『なんだろ。つまみとか?』

『それもいいがやっぱり女のk』

『あなた、シノンに何を教えてるの?』

『あ』



あれ?頼もしかった思い出の方が少なくないか?思えば俺が2人の喧嘩を仲裁してる時もあったしあの人その時俺の後ろに隠れてたよな?

でも、何より父さんは強かった。剣の腕もさることながらそれ以外もだ。あの人の戦闘のセンスに俺は憧れていた。


父の背中は未だ遠く、手が届くとはとてもじゃないが言えないだろう。シノンはそれを自覚している。だから今も自分を守ったあの背中を追っている。



「その期待、全力で応えますよ」

「いい顔だ。男はそうでなくてはな」

「2人の話が一段落したのなたそろそろ最後の要点へと向かわせてもらおうか」

「あ、すみません」

「すまん」



2人の世界に入ってしまい全く話についていけず気まずそうにしていたオリヴィエがこれ以上話を長引かせないために声を上げる。シノンもバヤールもタリアの話となり盛り上がっていたせいでオリヴィエを置いてけぼりにしたことに気付いていなかったのだろう。2人とも彼女に申し訳なさそうに謝罪をした。


犯人の引き渡しも終わり、騎士団での話し合いも終了、あとは最後の要点へと向かい地下空間を発見、騎士団の力を借りて組織を鎮圧…順調、極めて順調に進んでいる。

アストルフォやトゥルパン、ローランが順調に要点を見つけていれば鎮圧という最終局面に進める。

はずだった。


門から騎士団本部を出て、すぐのことだった。凄まじい突風がシノンの髪を揺らした。いきなりの休風に驚きつつも収まるのは早く。一体なんだったのかとあたりを見渡したシノンの目はある方向で止まった。


煙が上がっている。それも先程の比ではない大きさでだ。今の突風は爆風だったのだ。突然の爆破に驚くシノン、すぐさま現場へ急行せんと世写の四肢(ウィガール)で身体能力を引き上げ向かう彼の頭の中には自身でも考えないようにするような考えが過っていた。



「この距離に方角これは──」



最後の要点が危ない!!

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