chapter63 勇者の権能
みんなが能力の上昇について騒いでいる間、
オレは一歩引いた位置でステータスを開いた。
――勇者。
その二文字に触れる。
視界に文章が流れ込む。
■◆■◆■◆
〖勇者〗
《英雄補正》
基礎能力に成長補正。
(……まあ、主役補正ってやつか)
《戦場適応》
未知の敵・環境に自動最適化。
異世界即戦力。
(用意周到だな)
用意されすぎている、とも言える。
《聖導威光》
士気上昇、交渉補正、威圧。
(人を動かすための力ね)
勇者は、戦うだけじゃないらしい。
《神々の庇護》
致命傷を一度耐える。
(死なせない仕様か)
《運命逆転》
極限状態での成功補正。
(――負けさせない、か)
勝たせるための設計。
《勇者の証》
国家・ギルドが感知。
そこで、指が止まる。
(……識別)
管理。
なるほど。
《真実視》
あらゆる偽りを見抜く。
国の腐敗。
人の裏切り。
世界の嘘。
(そこまで書く必要があるのか?)
まるで――
「見ろ」と命じられているみたいだ。
《夢界結縁》
眠りの中で魂を結ぶ加護。
(……仲間を育てる力か)
■◆■◆■◆
画面を閉じる。
祝福、というより設計図だ。
勇者はこうあるべきだ、と
最初から決められている。
オレは小さく息を吐いた。
勇者、ね。
その肩書きは使う。
だが、使われるつもりはない。
そのとき、扉がノックされた。
「皆さま、お食事の用意ができますので、ご案内致します」
メイドの声。
みんなが慌ててステータスを閉じる。
オレも画面を消し、後ろについた。
今はまだ、従う。
――今は。
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