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姑ですもの!  作者: K
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愛は世界を救わないけど

「覚えていません。ただ城で働く物が何人か言っていた気がします。それでサーシャに尋ねたのです」

「サーシャに?」


 オランジュのためにつけた侍女なのに彼女が原因だったらと望実は唇を噛み締める。


「安心してください。彼女はその時働いていなかったので知らないときっぱりいってくれました。王様と母は愛し合っていたから病気にならないように隔離しただけだと」

「そ、そう」


 さすがサーシャとほっとして望実が肩を下ろすとオランジュがその肩に手を置く。


「私は次にこっそりとペッシュに頼んで会いに行ったのです。大司祭様に」

「イルに?」

「大司祭様はペッシュの部屋で隠れていた私を見て驚いておられました。そして質問した私に一言『それを教えたら母上に王権を譲るか?』とお尋ねになりました。もちろん私は母上と王座を争う気などないので母上がそういうならと答えると大司祭様は嬉しそうに、わたしの……父の……ペッシュが手を握ってくれていてなんとか倒れずには、すみましたが……」

「……ペッシュも知っているの?」

「母上とかくれんぼをした日にペッシュとこの部屋に隠れたのです。何も知らないペッシュが『オランジュのお母上様と父上様ね』と言ったことがずっと胸に残っていました。私は……その言葉を否定できなかった。違うよ。父上はこちらだと言えなかった。だからこの部屋も調べました。母上が感じた通りなぜ愛し合っていたのなら肖像画を並べなかったのか混乱しました。大司祭様に言われた事で納得したのです」


 オランジュの手が熱く感じる。燃えているようだと望実は視界が揺らぐのを感じた。


「それからは宰相が言った通り、心が乾いて、軋んで、苦しくて……母上はいつも忙しそうに飛び回っている……その上宰相は挑発するように」

「う、ぐ……だ、めっ」

「貴女を皆を守るにはこんな小さな体では駄目なんです。もっと大きくなって、強くなって、王より偉大な男に母上の父上より立派な男に……だから」

「あなたの器はまだ小さいの。無理に入れ込んだら弾けて、しまう」


 オランジュの手首をつかんで引き剥がすことなく望実は目を閉じる。オランジュの中に大きな壺を見る。穴からは黄金の水が流れ、あちらこちらひび割れていて今にも壊れそうな壺。

 まずは一番勢いのある穴を強引に力を丸め粘土のようにこねるイメージを作り塞ぐ。そしてさらに力を流し込んで穴がわからないように熱する。


「ぐああああああ」

「オランジュ……痛みも辛さも全部一緒に飲み込むからあきらめないで」


 半数ほどの穴を塞ぎひび割れを修復すると今度は壺から水が勢いよくこぼれ始める。そして新たな穴が開く。修復されることへの拒絶を感じて望実は壺からこぼれている水をすべて飲み込む。そして暴れようとしてもがく壺が割れないように抱き抱える。


「いやだ……もっていかないで……それがないと」

「しっかりしなさい。あなたは誰が何を言おうと私の王。そして何者かだって? 何度でも言うわよ。オランジュ・リヤン。あなたは私の息子よ」


 頬をぐっと片手で持ち上げる。

 オランジュははっとしたように視線を合わせ手を離そうとする。


「今更逃げようとしても遅い」

「な、に……」

「私の愛を重い知ればいい」


 虚を突かれたのか壺が一瞬おとなしくなる。その瞬間壺をすべて光の糸で覆い完全に修復させる。

 望実は壺を置いて両手を離しオランジュと額を合わせると小さな身体を抱き締めた。


「そ、んなこと……したら、母上が」

「あら、ほしかったんでしょう? いらないっていうぐらいまであげるわ」


 顔を歪めながら笑う。気力体力全部持っていかれて闇の中に落ちそうになる。誰かの高笑いが聞こえた気がする。

 ママ、ポメロ、王様、呼びたくないけど父さん。誰でもいい、皆でもいい、力を私に贈り人としての役目を果たせるように力をください。


「も、ういい。わかった。わかったからやめて」

「オランジュ。大丈夫。母は強しなんだから」


 空っぽになったと望実が手を離すと誰かが受け止めてくれた気がした。




「ああああああああっ」

「殿下、お静まりください。彼女は大丈夫です」

「ははうえっ。いかないで、いってしまわないで」


 愛だけ残して帰ろうとしないで。オランジュが叫ぶ。エスクードは弟の名を読んだ。


「ペッシュ。頼みました」

「はい」


 桃色の髪を束ねるとペッシュは駆け寄ってオランジュの手をとる。


「そ、なたがいった、とおりになったな」

「私はオランジュ様にお二人がにていると言っただけです。オランジュ様、私と妃殿下に貰ったものを返しましょう。少しでいいんです。ゆっくり」


 オランジュとペッシュは望実の心臓に触れ同時に力を絡めながら送り込む。強い拒絶を感じて汗が吹き出る。倒れそうになるのをエスクードが二人の手の上から押さえて支えてくれる。


「エスクード様もうそろそろ限界です」

「うむ。それぐらいでいい」

「はあはあっ。こんなちょろっと流し込んだだけで全身が砕けそうなのに。望実さんはすごい」

「特別製ですからね」


 笑っていうエスクードをオランジュは睨んだ。

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