オランジュの真実
流れるような動作で跪いたままエスクードは望実の手をとって指先に口付ける。触れた唇の感触に思わず頬が赤くなる。自分のような小娘に色気を垂れ流されないでほしい。こんな心の動きすら読まれているとしたら手のひらで転がる以外できないはないか。
望実が引っ込めた手をさすりながらぎゅっと握り締めるとエスクードは距離をつめ、望実に手を伸ばした。
いったい何をと望実が息を飲むと扉が開く。
「ははうえ……いったい何を」
駆け足で側によるとエスクードと望実の間にオランジュが入る。
「なにもしていないし、なんでもないわ」
「そうです。王の前で忠誠を誓っていただけのことです」
この言い方はオランジュが来るのをわかっていたなと望実はため息をつきたくなる。時折子供じみた事をするのはなぜなんだろう。とりあえずこの場にいても困ったことしかしてくれないだろうしオランジュの手を握って望実はエスクードに「とりあえず外に出て」と笑顔でいった。
エスクードは何をと呟いてその場に立っていた。
「護衛は外にいるしグルナードとノバまで待っていてくれてるのだから大丈夫よ」
「いえ、でもしかし」
オランジュをちらっと見て、望実を見るとエスクードは動かずにその場にいる。
「エスクード」
「私はお二人を心配して」
「ありがとう。でも私が言うのだから従って。王妃でなく私が言った言葉として」
そこまで言えばさすがのエスクードも動かざるをえななった。渋々というていで部屋から出ていく。
扉が閉まるのを確認すると望実はオランジュの手を引く。
「こうやって一緒に手を繋いで歩くのは久しぶりね。でも私が来てからまだ数ヶ月しかたってないだなんてびっくり。目まぐるしく時間が過ぎていったから」
「たしかに」
「オランジュ。私は……この国の王妃ではないの」
思えばここから始めないといけなかったのだ。特にオランジュにだけは言っておくべきだった。
「私は日本という国からきた津野望実。ポメロでもリヤンでもない。関係ない人なんだ。ずっと黙っててごめんなさい」
オランジュは首をかしげ小さく笑った。
「知っています」
「え……」
「だから母上としか呼ばなかったはずです」
舌足らずな話し方をやめて子供らしからぬ話し方でオランジュは望実に告げる。
「父上が、最後に言った言葉を覚えています。必ずおまえのために来てくれる人がいると。それはきっと父上を助けた二人の贈り物だと。それが母上なのでしょう?」
望実は言われた言葉が理解できずにオランジュを見つめる。
「貴女は父が残してくれた私への贈り人。だからポメロ様でなくてもいいのです」




