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姑ですもの!  作者: K
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救われぬもの

 声が聞こえる。


『なぜ……私には彼女に及ばずともほぼ同等の力があったはず。この追放の地は彼の方以外全ての力は無同然なのだろうか?』

『どうすればいい?どうすれば大切なものを助けられるのだろうか?』

『人の生など元より短い。少しぐらい継ぎ足したところで何の不都合があるというのだろう』


 望実はダメと叫ぶ。だが光の塊になったポメロには聞こえていない。そもそも望実は誰にも認識されていない。過去を映画のように見ているだけだ。


『我が父、我が君、全ての眷属、全ての女神の創造者。お願いいたします。どうか、どうか、彼らをたす……』


 ポメロが飛ぶようにして向かったさらにまばゆい光の中で先程庭にいた男が叫んでいた。


『ならばどうしても認められないと?』

『お父様』

『なぜだ。過去にも同じような例は山ほどある。貴方が干渉したことなど一度もなかったはずだ』

『この地を離れなければ私にも、私の子にも永遠につきまとうのです。ですから、お願いです。どうか彼と共に彼の故郷へいかせてください』


 既視感のある威圧的な光の塊が怒りを隠しもせず二人に視線を向ける。


『そなたたちのために作った世界を捨てるというのなら勝手にするがよい。そなたはもう娘ではない。よかろう。送り届けてやろう。残酷で残忍な恐ろしい世界だ。魔法も権力もそなたが持つものすべてが通用しないリヤン以上の地獄へ行くがいい』

『分かりました。彼がいれば、私はどんなところでも耐えていけるのです。ありがとうございます。お父様』

『許してもらえたのか?』

『そうでしょう? お、とう、さ……ま』


 男が宙吊りになりもがいている。助けようと女性が手を伸ばす。


『何度めだ?そなた何度愚かな行為を繰り返せば気がすむ』

『何度でも、お父様が百度彼を殺すのなら私は百一度目を目指し彼と生きる世界を待ちます』

『そんな愚かな娘など持つものではなかった』


 威圧的な光が地面を叩くと暗闇が広がる。彼は怒っていた。怒っていながら悲しんでいた。悲しみのなかに娘への愛を感じて望実は手を伸ばす。


『おまえは永遠に眠るがいい。このようなところまで踏み込んだ愚かさを悔やめ』


 水が光が伸ばしたの掌から吹き出し宙吊りになっていた男を包み込む。丸い球体をぞんざいに捨てるように投げると光は望実が確かに何かがあると確信している眼差しを向けた。


『ほう。珍しい魂がさまよっておる。あれについてきたのか? そなた。かわりにあれの座につくか?』


 望実ではない。振り返るとそこにはポメロがいた。正確に言えば光の玉だが、これが本来の彼女の姿なのかもしれない。


『ではリヤンを助けてくださいますか?』

『……リヤン?ああ。あれはもう捨ててもよいかもしれぬな』

『そんな……貴方が愛した子らがいるのです。彼らをも見捨てないでください』

『愛か、実に馬鹿馬鹿しい。そなたらは我を愛するように作られた。だが、それすらまやかしなのだ。あの娘が証明したではないか。この世界から離れようとまでして』


「ばっかじゃないの。そこの卑屈大魔人。めそめそぐだぐだ。どうしようもない。愛情にだって色々あるのに。なんでわからないの」


 叫んだって伝わらないことはわかっている。必死にすがりつくポメロはおいやられる。

 泣きながら望実は悲しい顛末を見ていた。

 王と王妃がなくなった事を知り絶望しながらさまようポメロ。


『また、間違えたのね』


 どこからか声がする。ポメロは踞って違うと叫ぶ。人はやり直しはできない。一度だけだ。だからこんなにも美しい。


『ははうえ?』


 望実は息を飲む。オランジュがそこにはいた。ポメロも同じように息を飲んで立ち上がる。


『この子は、なんとしても守らないといけない』


 その決意は望実がオランジュと出会った時に感じた思いと同じだった。否、この場でポメロが決意したからこそ望実もそうしたのかもしれない。


『必ず、お守りします。次代の王よ。この地から、この世界から、そして神々から』


 ポメロはオランジュを抱き締めると城から消えた。

 どこへいくのかとついていくとエスクードがあの地下に立っていた。


『私が目覚めるとき、私は私でないけれど、彼女は私の妹であり、姪であり、唯一無二の人の贈り物。いじめないでね』

『どこへいかれるのですか? 女神の元へ?』

『いえ、私は彼が愛した国を守りたいの。自分のために。だから、エスクード。貴女には真実を見せます。あの子は王になれない。祝福されていないから。けれど、もしあの方が言ったように彼女が現れたらすべてが変わる。彼女は人と神と世界に祝福されてこの地に来るから』

『……呪いのようですね』


 ポメロは笑った。


『そうね。呪いかもしれないわ。だから私から幾つか贈り物をおいておいたの。あの方に似ている子だといいのだけれど』

『どうでしょうか? 貴女のお姿を見てもあの男にそっくりだと思いますが』

『そうね。人は外見を見るものね。私がいっているのは本質よ』

『貴女を尊敬します。我らが王妃。リヤンのために尽くしたのは王でもなく、女神でもなく、贈り人でもない。貴女その人だ』

『あら、珍しい。きっと今日は雨ね』


 ふっとポメロが笑うとエスクードの腕に倒れ込む。脱け殻だけが残って彼は静かに目を閉じた。


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