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姑ですもの!  作者: K
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あとしまつ

「ふう」


 欠伸を無理矢理噛み殺して望実は本で顔を隠す。こんなふうにしていると教室の隅で桜を眺めていた平穏な日々と変わらないなと思ってしまう。

 オランジュとペッシュがイルと共に簡単な単語のかきとりをしてイルのを見ながら読んでいた本を机に置く。二人が書いているのは望実にも読める文字で、机、花瓶、扉、服等の分かりやすい言葉だ。

 ペッシュは連れ去れるまでは小さいながら神殿でも評判になるほどだったとサガが言っていたが、既にオランジュの倍の量を書き上げている。ミネオラは規格外の天才だが、ペッシュだってすごい。

 望実はオランジュに親近感を覚えながら、いや五才の時点で読み書きできるだけですごいのでは? と考える。結局私が一番底辺だと各国の歴史をまとめていく。要点しかまだ書けないのだがメモとしてはそれでいいだろう。単語帳みたいなものだ。

 昨日は結局何時まで外にいたのかもわからない。気がつけば城のベッドで寝ていたのだ。

 送ってくれたのか、それともなんとか自力でベッドまでたどり着いたのかそれすら覚えていないが、なんとなくノアの笑顔が破壊力満点だったのは覚えている。できればノバにはきちんと躾をしていただき、全うな思考を刷り込んでから城に連れてきてほしいものだ。ペッシュと心中エンドなんて冗談じゃない。

 途中色々ノバと色々あった気もするのだが、記憶がない。専門用語でも聞かされて右から左へ流れたのかもしれない。

 オランジュの手をとって「ここ違うわよ」と長い棒が入っている文字をふにゃっとしたミミズに変える。


「ありがとうははうえ」

「ゆっくりでいいから正確に覚えたほうがいいわ」


 ルーペがないとひねくれたミミズの集まりにしか見えないのだが、本もうっすらと読めるようにはなってきている。そのうち執務室でグルナードや書記官と一緒に書類をチェックしなければいけなくなるのだが、そうなる前にひたすら暗記である。

 最終的にはエスクードにヘルプしてもらうことになるのだろうけれど。


「ペッシュ、非常に良いですよ。読みやすく綺麗な文字が書けています。殿下は個性的ですがほぼ間違いもなく書けています。結構です」

「ありがとうございます。先生」

「宿題は少しが良い」


 優等生とやんちゃ坊主そのものな両極端な解答にイルがそっと口元をおおって笑いを噛み殺す。ミラベルまでいたらさらにカオスに違いない教師も大変だ。

 もう少し普通の子とも触れあえた方がいいのではと望実はふと思う。コラーダの息子も攻略対象だし経過観察するにも皆一緒の方がいいと思う。ネビルのところの末っ子は城に出れるだろうか?

 今日はこれから伯爵が娘さんと来るのだ。話し合いと晩餐会がある。この時期なので舞踏会はないが、ポメロ派の望実に近い貴族たちも来るのでそれなりにしなければいけない。


「ペッシュは今日はイルといてね。バタバタしててごめんなさい」

「いえ、そんな。大司祭様から学びたいことが沢山あるのでありがたいです」

「並外れた力があり努力家で、真面目。妃殿下さえ口を突っ込まなけれもば、私の跡を継いでほしいのですけれど」

「む、むりです。そんな大それた」


 ぶんぶんと首を振るペッシュにイルがにっこりと笑う。


「才能はあるのですよ。ただ、鍵は貴女が来たときも反応してくれなかったのです。鍵が選らばなければ大司祭にはなれません。私も三回目で選ばれたので、ペッシュはまだまだ磨きどころがありますし大丈夫だと思うのですけれど」

「勝手にスカウトしないで、ペッシュはここにいてもらいたいの。もちろん大司祭を目指したいのなら無理に引き留めはしないけれど、あまりプレッシャーはかけないであげて」


 そうでなくともイルはいけないけなところがあるからなと望実はため息をつく。

 あのーとペッシュが小さくてをあげる。


「今はまだ、わかりません。生活が変わりすぎて覚えるだけで手いっぱいで、だから自分がどうなれるのか、どうしたらここにいれるのか考えていきたいと思います」

「それでいいのですよ」


 イルが優しく微笑む。当初緊張しまくっていた頃と比べればだいぶペッシュもイルと話せるようになったと思う。


「では、また明日」

「イル、気をつけて。ペッシュをよろしくね。ペッシュも無理せずに。何でも言っていいから部屋からはでないようにね」

「わかりました」


 本当はサガにも会わせてあげたいのだが、ネビルから当分お互いのためにもダメと言われているのだ。特にネビルは妹より国のために働けるようにならないと騎士としてやっていけないだろうとはっきりと言われている。確かにそうなので納得はしているのだが。

 それにしても久しぶりのコルセットは地獄の苦痛だ。


「あら、姫様。少しサイズが変わっているようですね」

「まだ成長期ですからね」

「ではもう少し絞めましょう」

「な、なんでそうなるの。いやああああああ」


 晩餐会で何が出ても食べれそうにないと思うぐらいには絞められた。

 ミリヤを無言で睨んでも弛めてくれるわけもなく、望実はふうふう言いながら椅子に座った。髪が綺麗に整えられ、化粧をされる。ペッシュの村でめちゃくちゃに切ってしまった髪もきちんと切り揃えてもらった。酷すぎる髪の状態に、非常に憤慨したミリヤとコラーダはドペリを敵と認定したらしい。敵なのでいいのだけれど。


「さあ、これでどんな方の前でも大丈夫です」

「うっ、うん。ありがとう」


 もう今の時点で胃が出そうだけどねと言いたくなるのを我慢して、応接室に降りていく。

 オランジュも支度を終えて応接室の前にたっていた。王族の礼服を着ていると小さくても王子様なのだと分かる姿になっている。


「さあ、いきましょう」

「はい」


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