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姑ですもの!  作者: K
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予想もつかないこと

 馬車で待っているようにと言われイルがボロボロの扉の前に立っているのを望実は窓から見ていた。周りは先回りした守衛達で取り囲んでいるのでイルが何かされると言うことはなさそうだ。

 それより殺気と言えばいいのだろうか?

 この馬車に向けられる気配の方が気になる。脱け出す時に外をうろついていた男達かもしれない。もちろん馬車が止まっている周囲にも神殿の守衛だと見てわかる男性が幾人も立っているので急に襲われることはないとは思うが。


「そういえばネビルとサガは別れた場所にいるかしら。無茶してないといいんだけど」


 思わず望実が呟くと目を丸くしたペッシュが「のぞみさんよりはしてないと思います」といって笑った。


「え、そうかな? あと一応周りに人がいるからポメロで呼んでほしいかな。面倒で申し訳ないけど」

「はい。ポメロ様」

「様……うん」

「さすがにそのよびすては……もともと敬語しゃべりがくせだったのであまりふかく考えないでください」


 敬語で一生懸命に話す姿がとても可愛いので問題なしとちょっぴり寂しく感じた自分を放り投げて望実は「気にしない」と頷く。


「オランジュ様はどんな方ですか?」

「オランジュ? オランジュは太陽みたいな子かな。かなり寂しがりやだから心配なんだけどね。頭のよさはたぶん父親譲りなんじゃないかな」


 ペッシュは前世持ちだから別としても、ミラベルもオランジュも頭が良すぎて望実が情けなくなるぐらいなのだ。もっと子供らしく遊んだり悪戯したりしてもいいとおもうのだけれど、そんなこと言ったら望実がグルナードにお尻を叩かれるか、廊下に立たされそうだ。


「王様のことはしってるんですか」

「ううん、肖像画をちらっ見ただけ。私も見たいから今度一緒にじっくり見に行こう。あ、イルがチャーシューと出てきた」

「……チャーシュー」

「ラーメンにのせるために切る前のチャーシュー。帯紐とかサンダルからお肉がとびて出るから、ペッシュならわかるでしょ」


 この世界のえらい人に当たる人物に向けて言っていいことではないのだろう。なんといっていいのかわからないというかのようなペッシュの顔にちょっとだけ罪悪感が浮かぶ。そもそもペッシュを売り飛ばしたのがいけないのだ。


「な、内緒にしてね。この世界にラーメンがあるかはわからないけど」

「うーん、ラーメンは見たことないです」

「パスタはあるんですけどね」

「そうね。でもラーメン一から作るのはできないかな。ラーメン屋で修行でもしとけばよかった」

「わたしももうすこし勉強しておけばよかったです」


 二人が盛り上がっているとイルはドペリと共にこちらにやって来た。そういえばペッシュはドペリが自分を売ったことを知らないような反応だった。


「偉大なる妃殿下。このような辺境の地までよくお越しになりました。なにか大きな勘違いがあったようです。大司祭様の使いは私の部屋を荒し従僕から馬を奪い挙げ句の果てに監禁し逃亡しました。けっして違法な事や神の前に恥ずべきことはしておりません」


 馬車は開けなくていいと言われているので扇子を広げ顔を隠す。正式な場でない限り望実は顔を見せなくていいらしい。そうすると王妃詐称とかできるんじゃないだろうかと思うのだが、今回は大司祭であるイルがその証拠になってくれるので問題はないようだ。

 それでいいのかと聞いたら全司祭は大司祭の前で神への誓いをのべ司祭になれるのだそう。ビックリしたがイルは今までその儀式をつとめた全員を覚えているそうだ。

 周囲との格差が酷いと望実が言えばペッシュが袖を引いて自分を指差す。ペッシュは聖女で潜在能力もりもりなのでやっぱり異世界から来た以外ノースペックは目立つ。

 ともかく望実は意識してゆっくりと話し始める。


「イル・ザール・メディク。どう思いますか?」

「はい。妃殿下。司祭の私物はすべて家族からの贈り物であり、多少華美ではありましたが特に問題はありませんでした。また未亡人が自らを税のかわりに差し出すこと、親が育てきれない子供を城主に差し出すことは法律で認められています」


 そうなの? と目でペッシュに尋ねてみるがペッシュは知らないようで首を振っている。

 なにも知らないで余計なことをしてしまったと目眩がする。望実の中ではどう考えてもあり得ないのだが、この世界で常識と言われると言葉がなくなる。

 ドペリの満足げな顔は腹立たしいがここで非道と叫んでも理解できないと言われるだけだろう。


「分かりました。ドペリ、迷惑をかけました。この詫びは必ずします」

「妃殿下のお言葉胸に染み入ります」


 ニタァといやらしい笑顔を見せるドペリに生理的嫌悪が浮かんでしまい望実は顔に出さないよう気を付けながらペッシュの手を握る。それにネビルはどこにいるのだろう。


「では使者はどんな罰を受けるべきだと思いますか? 彼女には私の騎士をつけているのです」

「あ、あの方が……」


 汗をかくドペリに望実は嫌な予感がして扇子を振るわせる。


「あの方と子供は法に則り処刑致しました」


 音を立てて持っていた扇子が床に落ちた。

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