只今修行中②
どちらの息もかかっていない教師をグルナードが探している間は、ミリヤがオランジュの講師をしてくれている。隣で十二の女神の話が始まったので耳をすませながら歴史の本をめくる。ポメロの講師はと思ったのだが、こちらは例の病で亡くなっており、その事もありポメロは隔離されていたのだそうだ。
それじゃあ部屋から飛び出したり、王子さまをつれてきたり唐突すぎて回りも生きた心地がしなかっただろうなと今までの自分の突発的な行動を望実は反省する。
「では女神の名前をオランジュ様、書いていただけますか?」
「はい」
ミリヤが書いた文字をそのままゆっくり写すオランジュに望実はようやく終わった冒頭部分にほっとしてページをめくった。
転移者は必ず無の国に召喚され神ザンザールから贈られた恩寵をもって選びし国を栄えさせる。そうなるとこの国のどこかに転移召喚される場所があるはずだ。
望実の場合は唐突にここに来て、気づけば城にいたため国を選ぶ儀式的なものはなかった。今後はどうなるのだろうか?
「ミリヤは前王からどこの場所に召喚されたとか聞いたことがあるの?」
「いいえございません。そもそも召喚される場所は贈り人のみがご存じなので、我々は知らされておりません」
「ありがとう」
となると今度はその召喚される場所がどこなのかを調べるのもしないといけないようだ。
なおかつ貴族たちが復帰しお披露目が終わったらヒロイン探しも始めないといけない。
もう一つ来年はうるう年なので特別なお祭りがあるため、半年がかりで用意するとか。色々行事などもつまっているが今年はこれでも絞っているのだとグルナードはいっていた。
「まんなかにいるのはははうえで、これはぼくです」
十二の女神に囲まれた二人なのだろうが、丸が一杯描いてあるので誰がどれか望実にはぱっと見では分からない。文字も懸命に書いているのがわかる。
「ありがとう。女神達の祝福を受けているのね」
「そうです!」
パーッと表情が明るくなるオランジュにミリヤは微笑むと「これは来年の鍵明けの儀のお話を聞いてオランジュ様が描かれたものです」と説明してくれる。
「色々覚えることも多いものね。頑張りましょう」
「はい!ははうえにはじをかかせないようにがんばります」
「ただ私もオランジュも始めてのことだから、多少は仕方ないと思うの。一緒に勉強していくのよ」
「ははうえはやさしいですね」
「オランジュも優しい人になってくれると嬉しいな」
優しいと言うより必死なだけなんだけどねと望実は少し胸がチクリとしたのを誤魔化して笑顔を作る。オランジュと勉強をしているのも望実の知識量ではそれぐらいの勉強量でないと着いていけないからだ。
皆の前でモノクルを出すのもおかしいし、夜に詰め込んで覚えてはいるが、やっぱり教師がいないと正確な事は分からない。
ミリヤの教え方ははっきりとしていて分かりやすいので部屋に戻って持っていたノートに忘れないように書いている。貴族の制度や地方の文化などは本を探すのも大変なので非常にありがたい。
「女神方の絵姿とかはないのかしら?」
「そうですね。絵はございませんが、各神殿に彫刻がございます」
「ありがとう。もう少し落ち着いたら一つ一つ回ってみたいのだけど、王としてどの神殿にいっておくべきとかいってはならないとかそういった規則はあるの?」
「規則はございませんが、やはり神々の父ザンザール様の元へ行かれるのは民のためにもよろしいかと。また一の女神ガーネット様は門の守り手、今後鍵の守り手になるお二人には縁深い神かと」
宝石から生まれた女神たちはそれぞれの宝石の名がつけられている。
「わかったわ、もっとお二方の見聞も深めておかねば」
やる気のある姿を見せていると周りも喜ぶものだ。ネビルにまでどうしたのかときかれてしまった。




