待望のピクニック②
「皆は皆で仕事をしていてね。お願いだから気にしないで」
「妃殿下」
顔色を変えていっせいに手を止め礼をしようとする皆を手で制して望実は仕事着で厨房にはいる。本当は侍女に紛れてとか、友達の手伝いでと潜り込むことも考えたのだが、それはそれで迷惑になるだろう。何かあったときのためにも妃殿下のわがままで通した方がいいと望実は思ったのだ。
「昨日頼んでおいたのだけどお米は炊けているかしら」
「へ、へい……はい」
ミリヤに視線を向けられた飯炊きの青年が背筋をただし真っ青になりながら頭を下げる。
「釜を開けてほしのだけれど」
「へ、はい」
「返事は気にしないで後で誰かが怒ることもないようにいっておくから」
「そ、んな。王妃様と口なんて聞いたらそれこそ」
「貴方の名前は?」
「いえそんな」
「名前は?」
「カリムといいます」
「ではカリム。私はポメロよ。王妃とかそういうのはおいておいてとりあえず今日はよろしくお願いします」
「ひえええそんな、頭、下げんでください。お願いします」
貧しさはあったけれど身分とか感じたことがない生活をしてきた望実はこの口を聞いただけで死にそうな顔をする気持ちがわからない。それこそ大統領や女王陛下と話すようにと言われたらこうなるのかもしれないがあまりにも雲の上すぎて想像もつかない。
ただ、それでは困るのだ。台所の一部を護衛と侍女で固めてただでさえ迷惑をかけているのだから円滑にスケジュールを進めるためにもこの状態ではいけない。
「では、命令するので従ってください。器に水をいれて塩を持ってきてください。とりあえず頼んでいた具材はどこですか?」
ミリヤと同じぐらいの女性がそぼろ、卵、味噌と頼んでいたネギそして鮭によくにた川魚を焼いたものを持ってきてくれた。昆布の佃煮か梅干しもあればと思うが贅沢は言わない。梅は食べられないとしょっぱずっぱいだけだろうし。
「同じようにお願いします。まず塩水に手をつけて米を手に取り中に具材をいれます。あつっ、あちっ、これぐらいで食べても美味しそう。ここにそぼろ卵をここにネギ味噌をこっちは鮭でお願いします。あ、もしかして味噌汁を作っているときの鰹節もあったりしますか?」
おずおずと頷く青年によしっとガッツポーズをとると望実はひとまず一種類ずつおにぎりを作っていく。ペッシュにも何か日本のものを食べさてもらいたかったのだが、得意料理というものがないためこれぐらいしか思い浮かばなかったのだ。味噌汁はネギだけ持っていて向こうで鍋にいれて配ろうと思っている。
削ってもらった鰹節のようなものをかじるとふんわりといい香りが広がる。醤油と砂糖をいれおかかにするとひたすら望実はおにぎりを握り続けた。カリムともう一人の女性ナンと一緒に百個ほど握ると箱にいれて包む。
「こんなにおにぎり握ったのはじめて、行く前からへとへとになりそう。二人ともありがとう。後でグルナードから臨時の給金もでるから。皆にも迷惑料多くはないけど出すからね。では、失礼」
嵐のようにやって来て望実は嵐のように去っていった。




