第15話 大事!!大事!!大惨事?!
俺はブレートの街が見えてきたところで、速度を落とした。
さすがに街の上空を翼を広げて飛んでいくわけにはいかない。
そんなことをしたら、昨日までただの田舎から来た新人冒険者だった俺が、一瞬で大騒ぎの中心になってしまう。
「まぁ、目立つのは避けたいしな」
そう呟き、俺は地面へ降りた。
翼を服の下へ折り畳んで隠す。
そして、何事もなかったかのように台車を押しながら街へ向かった。
――このときの俺は、まだ知らなかった。
昨日とは比べものにならないほど、街の門が慌ただしくなっている理由が、自分にあることを。
* * *
南門に近づく。
「……ん?」
昨日とは明らかに様子が違う。
門兵の人数が多い。
それだけではない。
兵士たちが何かを確認したり、周囲を警戒したりと、慌ただしく動き回っている。
「何かあったのかな?」
俺は首を傾げた。
しかし、自分が原因だとは夢にも思わなかった。
そんなことを考えていると――。
「おい、そこの台車を押しているやつ! 止まれ!」
「はい? なんでしょう?」
門兵の一人がこちらへ駆け寄ってきた。
「お前、その台車に乗っているのは……全部オークか?」
「はい、そうですけど」
「……全部?」
「はい」
門兵が台車を見つめる。
そして、俺の顔を見る。
もう一度台車を見る。
「……お前、一人でこれを?」
「そうですけど」
「いやいやいや!」
門兵が思わず声を上げた。
「お前、これだけの数のオークを一人で討伐したのか!?」
「討伐したやつですけど……」
「マジかよ……」
周囲にいた兵士たちまで台車を覗き込んでいる。
「高ランクの冒険者なのか?」
「いや、昨日から冒険者になったばかりですけど」
「昨日!?」
門兵の顔がさらに引きつった。
「と、とりあえず身分証を見せてもらえるか?」
「はい。これです」
俺は冒険者カードを取り出して渡す。
門兵が確認する。
「……Dランク」
「はい」
「Dランクで……この数?」
「そうみたいですね」
「どうやって倒したんだ?」
「雷魔法ですけど」
「……雷魔法?」
門兵は少し考えた。
「まぁ……魔法なら、あり得るのか……?」
どうやら納得したらしい。
俺は内心で首を傾げる。
そんなにおかしいことなのだろうか。
「これ以上ここで時間をかけるのもよくないな。よし、通っていいぞ!」
「ありがとうございます」
俺は台車を押して門を通過した。
背後から、
「……本当にDランクなのか?」
「昨日登録したばっかりって言ってたぞ」
「なんなんだ、あいつ……」
そんな声が聞こえてきた。
「……?」
まぁ、いいか。
俺はそのまま冒険者ギルドへ向かった。
* * *
街の中を歩いていると、妙に視線を感じる。
道行く人だけではない。
冒険者らしき人たちまで、俺の台車を見ている。
「そんなに珍しいのかな?」
まぁ、オークがこれだけ載っていれば目立つか。
俺は特に気にせず、冒険者ギルドへ向かった。
ギルドへ到着すると、入口付近に台車を置く。
「まずはラウさんに報告するか」
俺はギルドの中へ入った。
そして受付へ向かう。
「あ、ラウさん。今いいですか?」
「……ヴァルゼル様ですね」
ラウさんがこちらを見る。
「オーク五体討伐したので、報告に来ました」
「え?」
ラウさんが目を丸くした。
「もう討伐されたんですか?」
「はい」
「昨日依頼を受けたばかりですよね?」
「そうです」
「……随分早いですね」
「まぁ、たまたま近くにいたので」
俺はそう誤魔化して答えた。
実際には空を飛んだので近かったわけだが。
「それで、討伐したオークは……?」
「台車に載せて入口付近に置いてます」
「……入口付近?」
「はい。見ますか?」
「それなら、確認しに行きましょう」
俺とラウさんは一緒に入口へ向かった。
* * *
「……なんだこれ」
「何体いるんだ?」
「ちょっと待て……」
入口付近には、いつの間にか冒険者たちが集まっていた。
台車を中心に、人だかりができている。
「おい、これ何体オークがいるんだ?」
「ちょっと待て。この黒いオーク……」
一人の冒険者が、台車の上を指差した。
「……オークジェネラルじゃないか?」
「は?」
「オークジェネラルだよ。見たことある」
「マジか?」
俺とラウさんが近づく。
「ヴァルゼル様……」
ラウさんが恐る恐る俺を見る。
「オークが載せてある台車というのは……これでしょうか?」
「え? まぁ、そうですけど」
「何体倒したんですか!?」
「えーっと……五十体くらいですかね」
「五十体!?」
ラウさんが素っ頓狂な声を上げる。
周囲の冒険者たちもざわめいた。
「しかも、この黒いオーク……」
「はい?」
「ヴァルゼル様、これはオークジェネラルです」
「ジェネラル?」
「オークの上位種です。Bランクモンスターの中でも中位程度の危険度があると言われています」
「……え?」
俺は黒いオークを見る。
「そうなんですか?」
「そうなんですかって……」
ラウさんが頭を抱えそうになる。
「ヴァルゼル様は、これを知らずに討伐したんですか?」
「まぁ……はい」
「……」
ラウさんが黙った。
「いや、でも普通のオークとは雰囲気が違うとは思いましたよ」
「それはそうでしょうけど……」
ラウさんは台車のオークを改めて確認する。
「ヴァルゼル様、このオークたちは何をしていたんですか?」
「えーっとですね……」
俺は昼前のことを思い出す。
「集落を作ってましたね」
「……集落?」
ラウさんの顔から表情が消えた。
周囲の冒険者たちも同じだった。
「集落って言ったか?」
「オークの?」
「……それ、かなりまずくないか?」
「まさか……」
俺は周囲の反応を見ながら思った。
……あれ?
「俺、なんか突っついちゃいけないところを突っついた?」
と、囁いた後ラウさんがすぐに口を開く。
「しゅ、集落ですか……」
「はい」
「……少々、問題があるかもしれません」
「問題?」
「詳しい話はギルド長に報告してきます」
「は、はい」
「ヴァルゼル様は、とりあえずオークを解体所へ預けてください」
「分かりました」
その言葉を聞いた冒険者たちも、何かを察したように少しずつその場を離れていった。
さっきまでの騒がしさが、嘘のように消えていく。
「……やっぱり何かまずかったのかな」
俺はそう思いながら、台車を解体所へ向かわせた。
* * *
ギルド裏の解体所。
大きな倉庫のような建物になっている。
中では何人もの解体士が、魔物の処理をしていた。
俺は台車ごと中へ入る。
「すみませーん」
「おう! なんだ?」
カウンターのような場所から、大柄な男が顔を出した。
「これを解体してほしいんですけど」
「お前、見ない顔だな。名前は?」
「ヴァルゼルと言います」
「ああ……」
男は俺の顔を見て、何か思い出したように頷いた。
「お前が今噂になってる、雷魔法を使う新人か」
「まぁ……そうですね」
「そうかそうか」
男は台車へ目を向けた。
「ここへ持ってきたってことは、こいつらを解体してほしいんだろ?」
「はい」
「どれどれ……」
男が台車へ近づく。
「……お、おう」
そして、しばらく固まった。
「すげぇ数だな……。どんだけ倒したんだよ?」
「五十体くらいです」
「五十……」
男は頭を掻いた。
「それに……」
黒いオークを見る。
「おいおい、これオークジェネラルじゃねぇか」
「そうらしいですね」
「なんだぁ、お前、知らずに倒したのかよ」
「はい」
「……すげぇ新人が入ったもんだな」
「ありがとうございます?」
褒められているのか、呆れられているのかよく分からない。
「おい、お前ら!」
男が奥へ向かって叫ぶ。
「仕事が入ったぞぉ! 気合い入れていけよぉ!」
「「おっす!」」
解体士たちから返事が返ってくる。
「……あ」
俺は男を見る。
「お名前を聞いてもいいですか?」
「おっと、そうだったな」
男は笑った。
「俺はゴルド。この解体所のまとめ役みたいなもんだ」
「ゴルドさんですね。分かりました」
「それと、この数を解体するとなると結構時間がかかる」
「はい」
「三日後くらいに来てくれ」
「分かりました」
俺はゴルドさんに頭を下げ、解体所を後にした。
* * *
冒険者ギルドへ戻ると、受付にはラウさんがいた。
「あの~、ラウさん」
「はい?」
「解体所に預けてきました」
「分かりました」
ラウさんは頷いた。
「それと、ヴァルゼル様」
「はい?」
「ギルド長から呼び出しが掛かっています」
「……俺が?」
「はい」
「何で?」
「その……オークの件についてだと思います」
「なるほど」
まぁ、確かに五十体も持って帰ってきたのだから、何か聞きたいことがあるのだろう。
「分かりました」
俺はラウさんについていった。
* * *
ギルド長の執務室らしき部屋の前まで来る。
ラウさんが扉を叩いた。
「ギルド長。ヴァルゼル様をお連れしました」
「よし、入ってくれ」
「かしこまりました」
扉が開く。
「失礼します」
俺もラウさんの後ろに続いて中へ入った。
「よう、ヴァルゼル。昨日ぶりだな!」
そこには昨日会ったギルド長――フリークがいた。
「お前、何やらかしてんだよ!」
フリークは大声で笑う。
「ワッハッハ!」
「ギルド長、笑い事ではありませんよ」
「ラウは硬いなぁ」
「……」
ラウさんが無言でフリークを睨む。
「……おっほん」
フリークが咳払いをする。
「まぁ、本題に入るか」
フリークは俺を見る。
「ヴァルゼル。お前、あの数のオークをどこで倒した?」
俺は少し考える。
俺が悪魔であることは隠している。
空を飛べることも、言わないほうがいいだろう。
魔の森までは飛んで一時間程度だった。
普通に歩けば……まぁ、二時間半くらいと言っておけば大きくは外れないだろう。
「歩いて、だいたい二時間半くらいのところです」
「結構深いところまで入ったんだな」
「はい。最初は全然見つからなかったので」
と言ったらラウさんに睨まれた、そういえばさっきは近いところで見つけたと咄嗟に誤魔化したんだった…
「それで?」
「あ、はい探していたらオークの集落を見つけまして」
「……」
フリークの表情が変わる。
「五体討伐の依頼だったので、どうしようかと思ったんですけど……」
「うん」
「集落ごと倒したほうが、素材もたくさん取れて儲かるかなと思いまして」
「お前なぁ……」
フリークが額を押さえる。
「普通の冒険者は、オークの集落を見つけたらどうすると思う?」
「……倒す?」
「違う」
「じゃあ、逃げる?」
「そうだ」
フリークは深くため息を吐いた。
「普通なら、集落を見つけた時点で一旦戻って報告する。特に上位種まで確認したならなおさらだ」
「なるほど」
「……とはいえ」
フリークは俺を見る。
「お前がどれだけ規格外なのか、俺も少し分かったつもりでいた」
そして苦笑する。
「どうやら、全然分かってなかったみたいだな」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ」
フリークは頭を掻いた。
「まぁ、いい。本題はここからだ」
フリークの表情が真剣になる。
「お前、スタンピードって知ってるか?」
「いや、知らないです」
「……冒険者になる前に説明されなかったか?」
「たぶん……」
「まぁいい」
フリークは説明を始めた。
「スタンピードっていうのは、簡単に言えば、魔物が大群となって街や村を襲う現象のことだ」
「大群で?」
「ああ。ダンジョンから大量の魔物が一斉に出てくる場合もある。これもスタンピードと呼ばれる」
「なるほど」
「こういうことが起きた場合は緊急事態だ。冒険者ギルドから緊急依頼が出ることもある」
「分かりました」
「そしてな」
フリークは一枚の紙を机に置いた。
「オークの集落が形成され始めること。そして、オークジェネラルみたいな上位種が増え始めること」
「はい」
「これが、スタンピードの前兆ではないかと言われている」
「……では、今回の集落も?」
「可能性がある」
フリークはそう答えた。
「ただし、前兆があったからといって、必ずスタンピードが起きるとは限らない」
「なるほど」
「起きるとしても、何日後なのか、何ヶ月後なのか、それとももっと先なのか……そこまでは分からん」
「前兆が出ても、いつ起こるかは分からないんですね」
「そういうことだ」
フリークは椅子から立ち上がった。
「だから調査する」
「調査?」
「ああ。冒険者ギルドで調査隊を組む」
そして俺を見る。
「お前も、その中に加われ」
「……え?」
「お前もだ」
「俺もですか?」
「ああ」
フリークはニヤッと笑う。
「お前は実際にその集落を見て、戦って、生きて帰ってきた。現地を知ってる人間がいたほうが調査もしやすい」
「なるほど」
「もちろん、普通の調査依頼より報酬は上乗せしてやる」
「分かりました」
「他のメンバーについても、こっちで見繕っておく」
「いつですか?」
「一週間後だ」
「一週間後……」
「ああ。一週間後に調査をする。寝坊するなよ」
「いや、寝坊はしませんけど……一週間後ですね。分かりました」
「よし!」
フリークが頷いた。
「それじゃあ、今日はもう休め」
「分かりました」
俺はラウさんと一緒に部屋を出た。
扉が閉まる。
その直後、部屋の中からフリークの声が聞こえた。
「……ヴァルゼルのことと、今日のオークの件。一応、領主にも報告しておくか」
「はぁ……」
そんな呟きが聞こえた。
* * *
受付へ戻る。
先に戻っていたラウさんが
「ヴァルゼル様」
声を掛けてきた。
「ヴァルゼル様報告は誤魔化さいないでくださいね」
笑顔で言われて怖かったのでもうしないと心の中で誓ったのは内緒である
「そして依頼の報酬をお渡ししますので、少々お待ちください」
「はい」
しばらくすると、ラウさんが奥から戻ってきた。
「こちらが依頼料五万Gから解体料として一割を差し引いた、四万五千Gです」
「ありがとうございます」
俺は渡された硬貨を確認する。
「……これが四万五千Gか」
昨日、教えてもらったばかりなので、ようやく金銭を手にした実感が湧いてきた。
「それと、ヴァルゼル様」
「はい?」
「今回、オーク五体以外にも大量のオークを討伐されていますよね」
「はい」
「それらをすべて冒険者ギルドへ売却するのであれば、解体後に査定して、二日後に受付で代金をお支払いできます」
「二日後ですか?」
「はい」
「でも、ゴルドさんから三日後に来るよう言われたんですけど……」
「ああ、それなら問題ありません」
ラウさんは笑った。
「こちらから解体所へ伝えておきます」
「そうですか」
「全部売却ということでよろしいですか?」
「はい。お願いします」
「分かりました。それでは二日後にお渡ししますので、忘れずに顔を出してください」
「絶対に顔を出します」
俺は頷いた。
金が手に入る。
これは大事だ。
人間界で生活するなら、金は必要だからな。
俺は少しだけ満足した気分で冒険者ギルドを後にした。
* * *
外へ出ると、すでに日は落ちていた。
「もうこんな時間か」
今日は色々あった。
オークを倒して。
集落を見つけて。
なぜかギルド長に呼ばれて。
スタンピードというものについて教えてもらって。
そして、一週間後には調査に参加することになった。
「……まぁ、いいか」
俺はそのまま冒険者寮へ戻ることにした。
今日は部屋でゆっくり休もう。
* * *
――同じ頃。
カステルブルク辺境伯領。
領主邸。
「……まだ終わらないのか」
ライア・ド・カステルブルクは、日が落ちた後も執務室で書類を片付けていた。
昼間に訪れたSランク冒険者、ハステのことを思い出す。
魔の森で観測された、軍団級魔法クラスの魔力の余波。
雷魔法と思われる強大な魔力。
「一体、何者だったのだ……」
そんなことを考えていると――。
コンコン。
「失礼いたします」
メイドが入ってきた。
「ギルド長のフリーク殿がお見えになっています。いかがいたしましょうか?」
「フリーク殿が?」
今日は随分と来客が多い。
「……お連れしてくれ」
「かしこまりました」
メイドが退室する。
数分後。
「当主様、ギルド長をお連れしました」
「分かった。入れてくれ」
「失礼します」
扉が開く。
「これはフリーク殿。こちらへ」
「失礼する」
フリークが椅子に座る。
「君、お茶を出したら部屋を出てくれ」
「かしこまりました」
メイドがお茶を入れ、部屋を出ていく。
二人きりになったところで、ライアが口を開く。
「それで、今日は何があったのですかな?」
「ライア殿。今日起こった出来事について報告があります」
「どうぞ」
「魔の森に、オークの集落があったことが分かりました」
「……オークの集落?」
ライアの表情が変わる。
「はい」
フリークは続ける。
「一人の冒険者から報告がありましてね。本人がオークをおよそ五十体、冒険者ギルドまで持ち帰ってきました」
「五十体……」
「その中にはオークジェネラルも一体確認されています」
「……ジェネラルまで?」
「ええ。解体所の職員が確認していますので、間違いありません」
ライアは黙って聞いている。
「そして、倒した冒険者なのですが……」
「誰なのです?」
「昨日登録したばかりの新人です」
「昨日?」
「ええ」
ライアは思わず眉を寄せた。
「雷魔法を得意とする冒険者でしてね。昨日、魔法の実力を確認したところ、かなりの才能があったので、私の権限でDランクから始めさせた冒険者です」
「……昨日登録した新人が、オークを五十体?」
「そういうことです」
フリークは苦笑する。
「本人の話では、魔の森を徒歩でおよそ二時間半進んだ場所でオークの集落を発見したらしいです」
「そして?」
「その集落を雷魔法で討伐した、と」
「……雷魔法」
ライアの頭に、昼間のハステの言葉が蘇る。
軍団級魔法クラス。
雷系統。
魔の森。
偶然だろうか。
フリークはさらに続ける。
「解体所で確認したところ、オークの多くには目立った切り傷などがなかったそうです」
「つまり……」
「本人が言った通り、雷魔法による討伐である可能性が高いでしょう」
ライアは腕を組む。
「そして、今回の集落についてですが……」
フリークが少し真剣な表情になる。
「スタンピードの前兆である可能性があります」
「……やはりか」
ライアの顔が曇る。
「今後、冒険者ギルドで調査隊を編成する予定です」
「分かった」
「それと、今回の件についてはこちらから報告しておくべきだと思いまして」
「助かりました。報告に感謝する」
「では、私はこれで」
フリークは立ち上がる。
「失礼します」
部屋を出る。
廊下を歩きながら、フリークは小さく笑った。
「……はぁ。やっぱり、かしこまって話すのは疲れるな」
そう呟きながら、ギルドへ戻っていった。
* * *
再び、領主邸の執務室。
「……なるほど」
ライアは一人、椅子に座ったまま考え込んでいた。
「ハステが言っていた魔力の余波……」
魔の森。
軍団級魔法。
雷魔法。
そして今日報告された新人冒険者。
「まさか、その新人冒険者が使った魔法だったのか?」
確証はない。
しかし、状況を考えれば可能性は高い。
「……雷魔法を使う新人冒険者が、魔の森でオークの集落を一撃で壊滅させた」
改めて考えると、とんでもない話だ。
「そして、オークの集落……」
ライアは深く息を吐いた。
「なぜこうも、私の代になってから前兆が出るのだ……」
思わず愚痴が漏れる。
しかし、いくら嘆いたところで状況は変わらない。
「……いや、イライラしても仕方がないか」
ハステもいる。
ギルドも調査に動く。
そして何より――。
「ハステが言っていた、あの魔法を使った者が冒険者である可能性が高い……というのは、幸いなのかもしれんな」
少なくとも、正体も分からない強大な魔物が魔の森にいるよりはいい。
そう思いたい。
「……これから、何が起こるのやら」
ライアはそう呟き、再び机の上の書類へ目を向けた。
今日から1日1話投稿で0時に投稿します。m(_ _)m




