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第9話 10年分の宝箱(?)

─あれから体感10年。


あの円卓会議(?)から、10年が経った。


俺はこの10年間、色々な悪魔と交流したり、人間界から召喚されて帰ってきた悪魔たちに人間界のことを聞いたり、召喚に使われた魔法陣を調べたりしていた。


最初は一つ一つの情報を聞くたびに、


「へぇー」


くらいに思っていたのだが、10年も続けていると、それなりに情報が集まってくる。


まぁ、俺自身が人間界に行ったわけではないから、聞いた情報が全て正しいとは限らない。


悪魔が見たもの。


悪魔が聞いたもの。


そして俺がそこから推測したもの。


それらを全部まとめて、ようやく「人間界」というものが少しだけ見えてきた。


せっかくだ。


ここで、体感10年ほどかけて集めた情報を一度整理してみよう。


まず一つ目。


魔法についてだ。


どうやら人間界では、魔法を大きく五段階に分けているらしい。


初級魔法。


中級魔法。


上級魔法。


軍団級魔法。


そして最後が、


破滅級魔法。


この五つに分類されているらしい。


初級魔法は、基本的に誰でも使える魔法。


中級魔法は、一定以上の力量を持つ者が扱う魔法。


上級魔法は、熟練した魔法使いが扱う強力な魔法。


軍団級魔法は、一個人を相手にするためのものではなく、軍隊そのものを相手にするための魔法。


そして破滅級魔法は、国家規模の被害すら発生させる可能性がある、最上位クラスの魔法。


人間界では、このように分類されているらしい。


「なるほどなぁ……」


話を聞いた当時、俺はそう思った。


そして、これを聞いて一つ気付いたことがある。


悪魔って、結構強いんじゃないか?


俺たち悪魔は、人間界の魔法の区分で言うと生まれたばかりでも中級魔法以上を扱えると思われる。


つまり、人間界の基準で考えれば、生まれたばかりの悪魔ですら、最初から一定以上の力量を持っていることになる。


もちろん、悪魔の中でも強さには差がある。


長く生きている悪魔ほど強い。


そして、俺や七柱のような存在になれば、人間界の基準で考えても相当な力を持っているはずだ。


以前、俺は「悪魔は人間界でも一定以上の力を持つ、強い分類に入る」と考えていた。


どうやら、その考えはあながち間違いではなかったらしい。


(これはいい情報だったな)


当時の俺は、そんなことを考えていた。


……まぁ、同時に別の問題も見つかったわけだが。


それについては後でいい。


次に分かったのが、


召喚魔法についてだ。


どうやら召喚魔法というものは、本来、使役している魔物などを呼び出すために使われる魔法らしい。


俺たち悪魔を呼び出すためだけに存在する魔法ではない。


そこは少し意外だった。


そして、召喚魔法には大きく分けて二つの方法があるらしい。


一つは、魔力によって魔法陣を作り出す方法。


そしてもう一つは、


血を使って魔法陣を描く方法。


一般的なのは前者らしい。


魔力を使って魔法陣を構築し、そこに召喚する対象を呼び寄せる。


まぁ、召喚魔法と言われれば、俺が想像するのもそっちだ。


だが、後者については少し変わった話がある。


なんでも、人間界にはマッドサイエンティスト……とでも呼ぶべき研究者がいたらしい。


その研究者が、自分の血を使って魔法陣を描き、実験をしていたところ――


悪魔が召喚された。


……らしい。


「本当か、それ?」


正直、俺にはよく分からない。


たまたま条件が揃っただけなのかもしれない。


そもそも、その話自体が本当なのかも分からない。


だから今のところは、


「そういう話もある」


くらいにしか考えていない。


ただ、その研究者から召喚に関する技術を奪い、それを利用した者たちが、後の悪魔教団の創設に関わっているとか、いないとか。


この辺りは情報が曖昧だ。


まぁ、こんな感じで召喚魔法についても色々と分かってきた。


そして、召喚された悪魔を調べていて、もう一つ面白いことが分かった。


召喚されるときに現れる魔法陣には、召喚される悪魔によって含まれている魔力量に違いがある。


これはかなり興味深かった。


そして、その魔力量には一つの傾向がある。


生きている年数が長い悪魔ほど、より多くの魔力を含んだ魔法陣によって召喚されている。


つまり、召喚する側が意図的に選んでいるというより、召喚対象となった悪魔の力によって、必要になる魔力そのものが変わっている可能性が高い。


そう考えると、俺や七柱が今まで一度も召喚されていない理由も、ある程度分かる。


単純な話だ。


俺たちを召喚するために必要な魔力が、とんでもなく多いのだろう。


人間側からすれば、そこまでの魔力を用意すること自体が難しい。


……まぁ、俺からすれば、


「じゃあ、俺が自分で人間界に行けばいいんじゃないか?」


という話なのだが。


問題は、その方法がまだ分からないことだ。


だからこそ俺は、以前よりも強く思うようになった。


早めに人間界へ行くための魔法を作らないとな。


今の俺には、それが必要だった。


そして、召喚された悪魔たちから聞いた話をさらにまとめていく。


どうやら人間界には、かなり多くの国が存在しているらしい。


国同士で戦争が起こることも珍しくない。


そして国の規模もかなり大きい。


大国ともなれば、人口は数千万に達するらしい。


「数千万……?」


最初に聞いたときは少し驚いた。


俺たち悪魔界もかなりの数になってきているが、人間界にもそれだけの数の人間がいるということになる。


しかも、それほどの人口を持つ国が複数存在している。


人間界は、俺が思っていたよりもずっと広く、大きな世界なのかもしれない。


そして、もう一つ重要なことが分かった。


宗教についてだ。


人間界には基本的に、一つの大きな宗教が存在しているらしい。


もちろん、一部の地域では土地神を信仰するようなものもある。


だが、それらはあくまで一部。


人間界の大部分では、同じ神を信仰しているらしい。


その宗教の名は、


デア・アインツィゲ教。


直訳すれば「唯一なる者の教え」とでもいうのだろうか。


人間たちは、この宗教を単に「教会」と呼ぶことも多いらしい。


そして、その宗教には明確な組織構造がある。


頂点に立つのが、


教皇。


その下に枢機卿。


さらに大司教、司教、司祭。


そして一般の信徒。


そんな階級構造になっているらしい。


教皇が何人いるのかについては、まだ確かな情報がない。


まぁ、普通に考えれば一人だと思うが、俺は実際に人間界を見たわけではない。


だから、ここはまだ断定しないでおこう。


ただ、一つだけ確かなことがある。


教皇の権力はかなり大きい。


その理由の一つが、


聖騎士団。


どうやら聖騎士団は教皇の統率下にあるらしい。


そして、その聖騎士団はかなり特殊な軍事組織らしい。


所属している者は全員、大小の差こそあれ聖魔法を扱える。


つまり、俺たち悪魔にとっては非常に厄介な存在ということになる。


しかも、教皇の指示次第では、千人近い兵士が死を恐れずに戦うことすらあるらしい。


それだけの規模の兵士を、自分の命令一つで動かすことができる。


そう考えれば、教皇が人間界で絶大な権力を持っているという話にも納得できる。


以前、俺たちは聖魔法によって悪魔が殺されたことを確認した。


そして今回、さらに人間界を調べたことで、その聖魔法を扱う組織がかなり大きな勢力を持っていることまで分かった。


これは無視できない。


俺はここまでの情報を頭の中で整理していく。


人間界には数千万規模の人口を持つ国が複数存在する。


国家同士で戦争も起きている。


悪魔を召喚する技術が存在する。


悪魔を信仰する悪魔教団も存在する。


そして、その一方で俺たち悪魔にとって天敵とも言える聖魔法を扱う教会が存在する。


その教会には強力な聖騎士団があり、その頂点には教皇がいる。


……なるほど。


少しずつだが、人間界の形が見えてきた。


もちろん、まだ分からないことの方が圧倒的に多い。


人間界には一体どれほどの国があるのか。


それぞれの国はどれほど強いのか。


教会はどれほどの領域に影響力を持っているのか。


聖魔法にはどれほどの種類があるのか。


そして、俺たち悪魔が人間界に行った場合、どれほどの脅威になるのか。


まだまだ調べる必要がある。


だが――


俺はふと思った。


「……人間界って、結構面白そうだな」


そう呟く。


10年前なら、人間界のことなんてほとんど何も知らなかった。


今でも知らないことばかりだ。


それでも、少しずつ情報が集まってきたことで、俺の中に一つの感情が生まれていた。


実際に行ってみたい。


召喚された悪魔から話を聞くだけではなく、自分の目で見てみたい。


人間たちがどんな場所で暮らしているのか。


どんな国を作っているのか。


どんな魔法を使っているのか。


そして――


どれほど強いのか。


俺はそう考えながら、再び魔力の操作を始めた。


人間界へ行く方法を作るために。


10年間の調査で、俺は確かに人間界について多くのことを知った。


だが、それ以上に強く感じたことがある。


人間界に行ける日も、そう遠くない。


そんな気がしていた。

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