第9章:決断
アリスは顔を上げ、その青い瞳に希望と恐怖を等しく宿して言った。
「それなら……案内して。行きたいの。知りたい。母さんのことを思い出したい」
ケンは長く息を吐き、食堂の椅子に腰を下ろした。
「地獄の半分を敵に回さずにタイヴァスへ着くには……早急に出発する必要があるな」
アリスは杖を強く握りしめ、顔を上げた後、目を細めた。
「待って、どうして『地獄の半分』なの?」
灰色のコートの男が動き始めた。それは突然の跳躍ではなく、手足がゆっくりと、意図を持って展開していくような動きだった。あたかも影が壁を伝って伸びるように。床板が軋み、彼が本来の高さを取り戻すと、その長く伸びたシルエットは近くの蝋燭の光を飲み込むかのように見えた。彼の深紅の瞳は、分析的な認識と奇妙さが入り混じった眼差しで少女を捉えた。
「お前はまだ若いままだな……。数十年前に封印されたと聞いたはずだし、私は昔のお前を知っていると言った。それなのに、お前は若い」
金髪の女は瞬きをし、やがてゆっくりと瞼を開いた。見えない真実に顔を殴られたかのようだ。理解は悪寒と共に訪れた。エメラルドの瞳の少年は、空気を交差する無言の推論に気づかず、二人を交互に見ながら眉をひそめた。
「分からないな、それが何の関係があるんだ?」
サキュバスは切迫した表情で、彼の方へ勢いよく顔を向けた。
「大ありよ、ケン! メフィストフェレスは何十年も見つからなかったし、ジャンヌは百年近く前に死んだのよ! それなのに……」
空色の瞳の少女は頭を振った。思考を妨げる執拗な耳鳴りを追い出そうとするかのように。時間の計算が、肌や骨という現実と衝突している。
「私は若いままでいる……どうして?」
小屋の狭い空間を支配するように聳え立つ大悪魔は、病を診断する医師のような冷徹さで答えた。
「別の封印だ。若さを保つためのな。私が出会った時、お前は八歳だった。今の見た目は十代半ば……つまり、九年前に解放されたということだ」
魔女の視線が床に落ちた。両手は体側で握りしめられ、拳の圧力で関節が白くなる。爪が掌に食い込み、彷徨う精神を繋ぎ止めるための肉体的な痛みを求めていた。
「覚えているのは……この近くで一人で目覚めたことだけ。それからクレアに会ったの」
深紅の瞳の女は一歩下がり、近くのテーブルに置かれた古い魔導書の擦り切れた背表紙に指を這わせた。確かな知識に支えを求めるように。森でのあの出会いの記憶が、鮮明に蘇る。
「あなたは怯えた子供だったわ、アリス。何も覚えていなくて……誰かがあなたの記憶に何かをしたのよ。でも、一体誰が?」
若きインキュバスは音を発しなかった。顎の筋肉が浮き出るほど食いしばり、緑の瞳は暗く沈んでいた。口にするのを躊躇う疑念と、即答できない問いが渦巻いている。
若き魔女は、来訪者の圧倒的な姿を見上げた。その声は水晶のように脆く揺れていたが、知りたいという鉄の意志に突き動かされていた。
「誰がやったか分かるの? 誰が私を封印したの……何のために?」
「知っていれば言うが、推測ならできる。わざわざ隔離し、その後おそらく見つけ出す手間をかけるなど……地獄の住人の仕業だろう。候補は五人しかいない……」
マルクスが右手を上げると、黒革の手袋が微かに軋んだ。不吉なリズムを刻むように、彼は指を一本ずつ折りながら、彼らの世界の生ける悪夢たちの名を挙げた。
「エライザ・バアル、ペイジ・モーニングスター、ジッド・ヴィンディック、クレイヴン・レニフ、あるいはベラトリックス・ケーラー」
金髪の女は叫びこそしなかったが、その張り詰めた姿勢は彼女のシルエットを硬質で危険なものへと変えた。爪が掌の肉に食い込み、青白い肌に紫色の三日月を刻むほど強く拳を握りしめる。食いしばった歯の間から鋭い呼気が漏れ、続いて舌打ちが小屋の静寂に処刑人の鞭のように響いた。
「じゃあ、あの封印は手違いなんかじゃなかったってことね」
エメラルドの瞳の少年は半歩後ずさり、仲間から放たれる殺気を感じて辛そうに唾を飲み込んだ。
「計画的……だったのか。でも、なぜ?」
若き魔女は、自分の血液の温度が急激に下がるのを感じた。まるで真冬の風が背骨を突き抜けたかのように。自分の人生、記憶、そして子供時代が、他者の手によって解剖され隠蔽されていたという確信が、喉に空気の塊を詰まらせ、痛みを伴う固い結び目を作った。
だが、その瞳は乾いていた。
彼女は体の震えに抗うように顎を上げ、その青い瞳で大悪魔の深紅の深淵を射抜いた。
「それなら、私は標的ということね……。許さない……何もかも……。記憶を取り戻すわ。奪われたもの、全てを」
灰色のコートの男は、服従ではなく敬意を示す、ほとんど感知できないほどの頷きを返した。その目は外科医のような冷静さで三人の顔を巡った。
「そうあろうとするがいい。だが、誰がやったにせよ、お前が封印から解き放たれたと知れば気が気ではないはずだ……。捕獲するのが最も論理的だ……私が彼らの一人ならそうする」
少女の背中を意図せぬ痙攣が走った。手は本能的に杖の木肌を求め、指関節の色が失せて骨のように白くなるまで、音もなく握りしめた。
「すぐに来ると思う?」
問いかける声はあまりに儚く、空中で砕け散りそうだった。
サキュバスは勢いよく彼女の方を向いた。その緋色の瞳には、辛うじて抑え込まれた守護者としての怒りが燃えていた。
「『来るかどうか』じゃないわ。『いつ来るか』よ」
その宣告は、淀んだ空気の中に石板のような重さで漂った。若きインキュバスは艶消しの髪を手でかき上げ、諦めと切迫感が入り混じった息を吐き出した。
「なら一刻も早く発つべきだ。道中、その五人の悪魔についてもっと詳しく教えてくれ、マルクス」
魔女は一瞬目を閉じ、借り物の勇気を肺に満たすように深く息を吸い込んだ。目を開けた時、脆さは行動へと変わっていた。彼女は力強く頷いた。
「時間の無駄はできないわね。クレア、ケン、食料の準備を手伝って。私は部屋へ行って物を持ってくるわ」




