第6章:扉を叩くもの
上空、風が頬を撫でる中、ジュリアンをしっかりと抱えて飛んでいたアリスは、奇妙な感覚を覚えた……まるで目に見えない手が、一瞬だけ彼女を包み込んだかのような。それは魔法でもなければ、風でもない……音のない気配だった。
彼女は振り返らなかった。だが何故か、心は軽くなっていた。
彼女はジュリアンをより強く抱きしめ、気流に乗って彼を安全に導いた。彼女の内側で、小さな声が囁く。
『母さん……いつか、この全てを理解できる日が来るわ。いつかきっと』
そして地上では、マルクス・スタインホファーが一言も発することなく、しばし一人で空を見上げていた。唇に浮かんでいた温かな微笑みはゆっくりと消え、誇りと哀愁だけが静かに彼に寄り添っていた。
三時間後、デュボワ家の扉が微かな軋み音を立てて開いた。
ジュリアンが入ってきた。土と汗、そして戦争の痕跡にまみれていたが、その唇には笑みがあった。彼が言葉を発するよりも早く、金色のつむじ風が彼に向かって飛び込んできた。
「ジュリアン!」
マリアンヌが叫び、強く抱きついた。その小さな腕が彼の腰に回される。
若者は押し殺した笑い声を漏らし、軽々と彼女を抱き上げた。
「大丈夫だよ、マリ……」彼は彼女を胸に抱き寄せ、囁いた。「もう家に帰ったんだ。当分は、戦争には戻らない」
マリアンヌは顔を上げた。頬は涙で濡れ、大きな瞳は懇願していた。
「でも……もう行かないよね? お願い、行かないって言って……」
ジュリアンはゆっくりと妹を下ろし、彼女の目線に合わせて屈んだ。優しく両手を取り、ありったけの誠実さを込めて彼女の目を見つめた。
「それは約束できないんだ、マリ」彼の声は柔らかいが、揺るぎなかった。「行くべき時は行く。だって……お前と母さんを守るのが、僕の義務だから。でも約束するよ。帰ってくる時は必ず、全力を尽くした後だって」
少女は数秒間、震える唇で彼を見つめていたが……やがて微笑み、手の甲で涙を拭った。
「じゃあ、私も全力を尽くす。お兄ちゃんが帰ってきた時に、誇りに思ってもらえるように」
ジュリアンは短く笑い、彼女の髪をくしゃくしゃにした。
「いつだって誇りに思ってるよ」
マリアンヌは彼の手を取り、優しく引っ張った。
「来て! ママが中で待ってるの……夕飯もできてるよ!」
二人は連れ立って中へと入り、火薬の臭いを後に残して、焼きたてのパンと温かいスープの安らぐ香りに包まれた。
そこから遠く離れたローヌの森の隠れ家では、重苦しい静寂と共に夜が降りていた。
木の扉が軋みながら開き、淀んだ室内に新鮮な風が吹き込んだ。若き魔女は敷居を跨ぎ、疲れと安堵の入り混じった溜め息をつきながら旅の埃を払った。二人の仲間がすぐさま彼女を出迎え、血や目に見える怪我がないか、その体を点検するように視線を走らせる。
エメラルドの瞳を持つ少年はわずかに胸を張り、外の空気が変わったことに気づいて心からの満足げな笑みを浮かべた。
「効果てきめんだったね、アリス。やったじゃないか。もう灰の臭いは止まったよ」
魔女の表情が和らぎ、小さな笑みが唇を彩って青白い顔を明るくした。
しかし、その平穏な瞬間は遮られた。金髪の女が進み出て、わざと重みをかけて少女の肩に手を置いたのだ。長い爪が、母親のような、しかし優位性を誇示するようなリズムで布の上を叩く。
「あら、またやってのけたのね。今回は無傷で。よくできました、お姫様」
空色の瞳の少女は鼻を鳴らし、わざとらしい苛立ちを見せて天井の梁へと視線を逸らしたが、仲間の手を振り払おうとはしなかった。
「ええ、少し運が良かったのよ。獣人の戦士に出くわしたんだけど、ある男性が助けてくれたの……奇妙だったわ。彼は紳士的だった」
若きインキュバスとサキュバスは瞬時に顔を見合わせた。祝賀の雰囲気は霧散し、本能的な警戒心がそれに取って代わる。深紅の瞳の女は目を細め、意識を鋭くした。
「その男……どんな見た目だった?」
黒髪の少女は小首を傾げ、鮮明な記憶を呼び起こした。そこには変わらぬ魅力と好奇心が混ざっていた。
「かなり背が高くて、暗い色のコートを着ていたわ。瞳は深紅で、瞳孔は黒。手袋をしていて……まるで悪魔の貴族みたいだった」
金髪の女の顔から、まるで血液が一気に抜き取られたかのように色が失せた。彼女の体は、今にも切れそうなヴァイオリンの弦のように硬直した。艶消しの髪色の少年は眉をひそめ、二人の間を交互に見るばかりで、空気の圧力がこれほど劇的に変化した理由を解読できずにいた。
サキュバスの声は、絞め殺された糸のように細く出た。
「まさかとは思うけど……お辞儀をするほど、極端に礼儀正しかったりした?」
若き魔女はゆっくりと頷いた。友人が発するパニックに困惑している。女の顔に張り付いた無言の恐怖に気づき、エメラルドの瞳の少年が一歩踏み出した。その顔には警鐘が刻まれている。
「どうしたんだい、クレア?」
制御できない震えがサキュバスの手を走った。呼吸は浅くなり、瞳孔が開いたまま虚空を見つめている。まるで歴史の影から亡霊が現れるのを幻視しているかのように。
「もしそれが本当なら……あり得ないわ。私たちが話しているのは、メフィストフェレス・シュトルツ……あるいは今、マルクス・スタインホファーと名乗っている男のことよ」
若き魔女は疑念で目を細い線のように細め、突然見知らぬ人になってしまったかのように友人の顔を吟味した。親密な空気は、明白な疑いの重圧によって砕け散った。
「どうして彼の名前を知ってるの、クレア?」
エメラルドの瞳の少年からも血の気が完全に引き、青白い蝋仮面のようになった。彼の声は震え、闇の中で囁かれる怪談に由来するような畏怖を帯びていた。
「アリス……メフィストフェレスは、七つの大罪『傲慢』の長子……ベリアル・シュトルツの息子だ」
黒髪の魔女の口がわずかに開いた。その肩書きの重大さを処理しきれない。あまりに不条理で、彼女の頭の中では馬鹿げた冗談のようにさえ思えた。隣では、サキュバスと若きインキュバスが呼吸を整えようとしていたが、肺が機能の仕方を忘れてしまったかのようだった。
「でも……彼はそんなふうには見えなかった……」
金髪の女は鋭く手を挙げ、反論が形になる前に空気ごと切り裂いた。その赤い瞳は、魔法による強制の痕跡を探すように少女を射抜いた。
「アリス、聞いて……彼には二面性があるという評判なの。人間と契約を結ぶことはあるけれど、どうしてあなたに何も見返りを求めなかったの?」
空色の瞳の少女は躊躇い、空中で手を動かして説明しようとしたが、その感覚には論理が欠けていた。本能的な確信が、理性と衝突する。
「分からない……ただ奇妙だったの。危険だとは感じなかった。何も求められなかったわ、誓ってもいい。私はただ、彼を地下聖堂から解放しただけで」
艶消しの髪の少年と深紅の瞳の女は、無言の警告に満ちた素早い視線を交わした。「監禁」という言葉が出ただけで、部屋の空気が凝縮したように感じられた。
「封印されていたのか? でもアリス、最後に何を話したんだい?」
若き魔女は一瞬自分の体を抱きしめ、石の冷たさと、闇の中で彼女を導いたあの声の明瞭さを思い出した。
「ここで会おうって。なぜ封印されていたのかは分からないけど、彼は私に話しかけることができたの。地下聖堂の外から彼の声が聞こえて、私を彼の元へと導いたわ」
エメラルドの瞳の少年は一歩後ずさり、頭を抱えた。まるで嵐を自ら隠れ家に招き入れてしまったことを、今ようやく理解したかのように。
「どうしてここに招待したんだ!? 明らかに解放されるために君を利用したんじゃないか、アリス……!」
サキュバスはゆっくりと首を横に振った。視線は床の不特定な一点を彷徨い、どうしても噛み合わないパズルのピースを整理しようとしている。
「それは重要じゃないわ、ケン……。アリス、はっきりさせておくべきことがある……。メフィストフェレスの行方は数十年以上前から不明だったのよ……。それをあなたがただ見つけただけでなく、封印から解き放ったなんて」
金髪の女は下唇を噛み、暗い疑問ばかりを生み出す推論の螺旋に沈んでいった。
「全く筋が通らない……どうして彼ほどの存在を封印するの? 何のために? 誰が、あるいはどんな集団がやったの? 封印されていたなら失踪の理由はつくけれど、残りの事情が理解できないわ」




