第15章:全面戦争
「傲慢」の三女は邪悪な笑みを深め、その顎から悪魔の牙を覗かせた。
一瞬の間を置いた後、彼女は「強欲」の長女に手を置いた。
ヴェックスの手が肩に触れた瞬間、記憶がペイジの脳裏に激しく溢れ出した。それは、堰を切って溢れ、もはや制御不能となった濁流のようだった。
身を委ねた一夜。
記憶はペイジの周囲で凝固し、彼女を何年も前――アイントラハト王室の大広間へと引きずり込んだ。
獄炎の要塞アイントラハト、一四一一年。
本館、西棟。
空気は焚かれた香と冷たい金属の匂いがした。広間の中央には、「嫉妬」の長男、ジッド・ヴィンディックが大理石の彫像のように動かずに佇んでいた。下級魔族特有の灰の汚れ一つない潔癖な白い肌は、軍事的な精密さで仕立てられた暗色の時代衣装と対照的だった。額から後方へと湾曲した二本の角。白目のない凍てついたサファイアのような瞳が、あからさまな脅迫よりも遥かに不気味な、分析的な静けさで部屋を一巡した。
彼から数歩離れた場所で、アイリング・ラスティグが動き、わずかな光をその身に集めた。ステンドグラスから差し込む光が、彼女のドレスを影と桃色の反射光に分断する。コルセットは皺ひとつなく彼女の姿勢を正し、黒いスカートの翻りからは、警告のように隠された赤色が覗いた。毛先が洋紅色に染まった黒髪が、小首をかしげると共に揺れる。歯を見せずに微笑んだが、その凝視する目は笑っていなかった。
乾いた、そして刺すような不信感を孕んだ哄笑が、儀礼的な沈黙を破った。
「それで、逃がしたのね……。あの魔女ジャンヌと一緒にいると知っていて、捕らえていたのに。自分の欲求のために、他の者たちには隠しておくことにした、と」
奥まった場所、黒曜石の玉座の上から、ルシファー・モーニングスターが眼下の者たちを見下ろしていた。首を巡らせると、限りなく黒に近い暗髪が鈍い紫色の光を返す。肩からまっすぐに落ちる重厚な外套は、角張ったプレートと深い彫刻によって硬化されており、まるで既に彼の体の一部であるかのように、動いても衣擦れの音さえ立てない。顔色と同じ色をした左手は力なく垂れ下がり、指先はわずかに開いていた。震えはない。背後のルーン文字は空を背景に切り取られたように静止し、彼の視線は娘の瞳に留まっていた。
「ペイジ……。お前がなぜそうしたのか、理解できなくはない。だが、奴らを逃がしたことについては理解に苦しむ。お前は予防策を講じなかった。こういう事態が何を招くか、分かっているはずだ。我が娘よ」
若き指揮官の喉が目に見えて引きつった。広大な広間に乾いた音を立てて、唾を飲み込む。桃色の瞳は必死に床のタイルの一点を見つめ、父の深淵なる暗黒の視線と交わることを何としても避けていた。首筋には玉のような汗が浮かんでいる。
「申し訳ありません、父上。私は……」
石畳を打つ確かな足音が、彼女の謝罪を遮断した。ジッドが進み出ると、その影が伸びてペイジのブーツに触れた。
「報いは受けてもらうぞ、指揮官……。裏切り者とその魔女、双方を捕らえる絶好の好機だった。だが、貴様の過ちの代償は、ポータルの封印と奴らの逃走だ」
脇から、毒を含んだ官能的で、柔らかく響く笑い声が空気に漂った。アイリングは指を唇に当て、悪意に目を輝かせた。
「あの二人の『献身的な時間』が役に立ったならいいけれど……。何世紀経っても、変わらないものもあるのね」
ペイジの顎の筋肉が、蒼白な肌の下で浮き上がるほどに緊張した。こめかみに痛みが走るほど強く歯を食いしばり、床を睨み続けたまま、審判の沈黙が彼女に降り注ぐのを耐えた。
そして、記憶は霧散した。
ヴェックスは手を離し、牙の間から小さく不吉な笑い声を漏らした。
「ベルフェゴールとの訓練相手として、あわや壊されかけたあの二週間の罰を思い出させる必要があるかしら?」
ペイジは微動だにしなかった。記憶の嵐が猛威を振るい、瞳孔がわずかに揺れる。
呼吸が止まる。自信、支配、揺るぎない外面……その全てが、永遠にも思える数秒間、亀裂を入れた。
ヴェックスが手を引き、残酷な笑いを残した時、ペイジは短く目を閉じ、意志の力で肉体の平静を取り戻した。
「黙りなさい、ヴェックス」
声は低く、ざらつき、抑制された毒を孕んでいた。
「暴力で肌に刻み込まれたことを、わざわざ思い出させるんじゃないわ」
彼女はゆっくりと振り返る。瞳の中で紫色の炎が明滅していた。
「私が甘かったことは百も承知よ。その代償も払った……。そして今も払い続けている」
指が地図の上で痙攣し、端を握り潰した。
「だが、言葉には気をつけなさい、シュトルツ……」ペイジの眼差しが硬化し、短剣のようにヴェックスを突き刺す。「その冷淡さでここの全員に挑むことと、私に挑むことは全く別の話よ」
彼女はわずかに一歩踏み出した。周囲の空気が、抑え込まれた魔力で震える。
「貴女の兄が去ることができたのは、そう、私がそれを許したからよ。この広間を他の者たちの血で染めるより、彼を行かせることを選んだから」
声は鋭い刃のような囁きへと落ちた。
「だが、貴女にも同じ特権があるという過ちは犯さないことね」
彼女は一歩下がり、冷ややかな優雅さで顔を上げた。
「失せなさい、ヴェックス。軍の準備へ戻るのよ。メフィストが戻ってきたのなら、相応の備えが必要だわ。なぜなら次は……」
彼女は言葉を切り、微妙な脅威を音色に滲ませた。
「……容赦はしないから。貴女にも、彼にも」




