第14章:アイントラハト、獄炎の要塞
北の地……獄炎の要塞、アイントラハト。
アイントラハトの作戦室は、黒大理石の深淵そのものだった。古代のルーン文字が刻まれた柱は、忘却された言語を囁いているかのように佇んでいる。紫色の炎を纏った松明が揺らめき、中央のテーブルに直接彫り込まれた巨大な地図の上に、踊るような影を落としていた。そこでは、人間の都市と魔族の要塞が、残酷な遊戯の駒のように絡み合っている。
その地図の傍らに、ペイジ・モーニングスターは立っていた。
彼女のシルエットは、ほのかな魔界の光を受けて輝く真紅の刺繍が施された、体に吸い付くような黒絹のドレスに包まれている。アメジストの輝きを秘めた長い黒髪は、完璧なウェーブを描いて腰まで流れ落ちていた。頭部から突き出たねじれた角は、彼女の血統と力を象徴する天然の王冠のようだ。その桃色の瞳には、抑制された忍耐と……そして、隠しきれない疲労の色が宿っていた。
重々しく、ゆっくりとした軋みと共に扉が開くと、その残響が部屋全体に響き渡った。しかし、ペイジはすぐには振り返らない。
代わりに、彼女は唇をわずかに動かし、静かに息を吐いた。
「時間は守れる人だと思っていたけれど」
黒いレースの手袋に包まれた指先が地図の上をなぞり、北への攻撃進路を示す。それからようやく、彼女は入ってきた人物へと顔を向けた。
「ヴェックス・シュトルツ……」
その名を重く、空気の中に沈めるように発音する。
「裏切り者の妹として来たの?……それとも、忠実な指揮官として?」
その後の静寂は絶対的だった。炎だけが揺らめいている。ペイジの鋭い視線は、容赦なく、そして隠すことなく、入室者を射抜いて待ち構えていた。
「失敗したわ。死体はあったけれど、魂がなかった。どれもこれも、中身のない抜け殻よ。誰かが、あるいは何かが、体に指一本触れずに魂だけを奪い去った……。そんな芸当ができるのは、たった一人しかいない」
「傲慢」の第三席である彼女は、暗く、そして魅惑的な優雅さを纏っていた。
体を強調する黒いベルベットのドレスに、真紅の装飾が威厳ある輪郭を際立たせている。赤い宝石で飾られたコルセットが胴回りで鈍く光り、胸元から覗く繊細な白いフリルのブラウスが、陰鬱な外見にわずかな対比を添えていた。黒いレースの手袋に覆われた手には、力を漂わせるルビーの指輪。首元には、内側から燃えているような紅玉が埋め込まれた、鈍銀のブローチが鎮座している。青みがかった輝きを放つ長い黒髪は、魔界の小宝石と赤いベルベットのリボンで飾られたヘッドドレスによって緩やかにまとめられていた。
その身に纏うすべてが、彼女の誇り、冷徹さ、そして危険なオーラを物語っている。
「私の兄……メフィストが帰ってきたのよ」
ペイジは一瞬、沈黙した。瞬きもしない。溜息もつかない。ただ、嵐の前の暗い湖面のような、絶対的な静止だけがあった。
華奢でありながら死をもたらすその手が、テーブルの縁を握りしめる。大理石が圧力でわずかにきしむ音がした。彼女の唇に浮かんだ笑みは微かで、苦々しく、しかしどこか納得したようなものだった。
「分かっていたわ……」
彼女は聞き取れないほどの声で囁いた。
「もう潮時ね。何十年も経ったもの、メフィスト」
顔を上げると、その桃色の瞳が炭火のように燃え上がる。
「それで、貴女は……」
声が低く、煙のように重く沈んだ。
「兵士として報告に来たけれど、語る口調は妹のそれね。今ここにいるのは、ヴェックス、貴女のどの部分? 彼を裁こうとする者?……それとも、彼を理解しようとする者?」
ペイジは優雅な足取りでテーブルを回り込む。磨かれた床の上で、足音が静かに響いた。
「もし後者だとしたら……」
彼女の前で立ち止まり、皇帝のような威圧感で顎を上げる。
「アイントラハトも地獄も、疑念は許さないと知るべきよ」
声は凍てつくような囁きへと変わった。
「貴女の忠誠はどこにあるの、シュトルツ?」
部屋全体が二人を中心に収縮していくようだった。沈黙。停滞。決断が、振り下ろされる寸前の短剣のように空中に漂う。
「どうでもいいことよ、モーニングスター。私はただ、二百五十以上の魂が一つとして吸収されなかったため、儀式が遅れると報告に来ただけ……。キアラの解放は待たなければならない」
「傲慢」の第三女の真紅の瞳は一度も瞬かず、その表情は冷淡そのものだった。
「父親に報告するの? それとも下僕を行かせる?」
ペイジは目を細め、その瞳の奥で火花が散った。
「私が使者の影に隠れるとでも思っているの、シュトルツ?」
口調は穏やかだったが、その一言一句には判決のような重みがあった。
「この生で学んだことがあるとすれば、臆病者は共同墓地を埋める役にしかならないということよ」
彼女は再び作戦テーブルへと歩み寄り、軍旗と赤い線で埋め尽くされた巨大な地図の傍らで立ち止まった。
「私が自分で報告するわ……」
指先がアイントラハトの輪郭を滑り、解放のルーンが記された一点で止まる。
「もっとも、あの人が驚くとは思えないけれど。メフィストはいつだって、全てを台無しにして、後には燃え盛る焦土しか残さない才能を持っていたもの」
彼女はヴェックスの方を向き直った。表情は完璧なまでに平然としていたが、顎の緊張が彼女の本心を裏切っていた。
「でも、私が気になるのは、貴女がなぜそこまで冷淡に話すのかということ……」
彼女を頭から爪先まで見据え、その腹を探る。
「まるで、我々全員の目的が遅れることなど興味がないかのように」
声がさらに低くなり、甘い毒を含んだ響きを帯びる。
「それとも……本当はどうでもいいの? 迷い始めたのね、違う?」
濃密な沈黙が二人の間に降りた。
「地獄は迷いを許さない。でも……」彼女はわずかに首を傾げた。「私はそれを見抜けるわ。言いなさい。本当は誰に仕えているの?」
「貴女には関係のないことよ、モーニングスター……。心配すべきは、自分の迷いを他人に投影しないことね」
地獄の処刑人の顔に、小さく不吉な笑みが浮かび、その漆黒の瞳を一筋の光が過った。
「だって、数十年前、この城塞でメフィストを救ったのは――私じゃないもの」




