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引き金、もう一度

レンが農村に現れたのは、夜明け前だった。


六人が起きている時間だった。偶然ではない。


ガルが立ち上がった。ジグが動かなかった。キコが先に口を開いた。


「座標Aの答えを聞かせろ」


「誰だ」とガルが言った。


「知っている」とジグが言った。それだけだった。


レンは六人を見渡した。赤茶の毛並み、耳の先だけ白い。外套の袖の繕い跡。中層の腕輪の光。何も変わっていなかった。


「意図的に流した」


レンが言った。


「キコたちの逆位相が成功した直後、対抗組織に座標を渡した。こいつらは本物だ、という証明として。組織が動くには、信用できる実績が必要だった。お前たちの仕事が、その実績になった」


沈黙があった。


「そうか」


キコが言った。怒りではなかった。納得でもなかった。受け取った、という声だった。


ガルがレンを見ていた。値踏みする目だった。何も言わなかった。ボッグが腕を組んだ。イノが口を開きかけて、ボッグを見て閉じた。


「加わるか」とキコが言った。


「それを言いに来た」とレンが言った。


七人になった。




役割を決めた。


キコが中枢への接続と算盤によるジャックを担う。ガル・ボッグ・イノが電波塔の根元を物理で破壊する。ジグが追手をかわす。レンはキコの補佐をしながら、追手の末端と接触する。末端はレンがまだ組織側だと思っている。


「使えるか」とキコがレンに聞いた。


「使える」とレンが言った。


ジグがレンを見た。一秒だけ。それから視線を外した。何も言わなかった。


七人で、都市との境界へ向かった。




電波塔の根元が見えてきた頃、ガルが三人に合図した。


ボッグが動いた。イノが続いた。ガルが最後に走り出す直前、キコの方を一瞬だけ見た。何も言わなかった。でも目が言っていた。


キコも何も言わなかった。


算盤を開いた。接続点を探す。カチ、カチ、カチ。帝都の電波が流れている。中枢の幹へ向かう経路が見えてくる。そこへ入り込めば、全体に干渉できる。


入れない。


珠を弾いた。弾いた。弾いた。プロテクトがかかっていた。第一部の逆位相の後、中枢が対策を打っていた。経路が塞がれている。別の角度から当たる。また塞がれている。また当たる。


数値が、出ない。


遠くで爆発音がした。ガルたちが動き出した。追手が反応する。ジグが路地の向こうへ走っていく気配があった。レンが何かを言っている声がした。追手の一人に、低く、落ち着いた声で。


接続できない。


その時、隣でルルが小さく息を飲んだ。


無意識に、腕輪に触れていた。


熱を持った。白に近い光が、一瞬だけ広がった。


算盤が、カチ、と鳴った。


キコが弾いた。数値が出た。経路が、開いた。


塞がれていた場所ではない。別の層に、別の経路がある。大木の振動から作られた最初の設計が、まだ内側に残っていた。プロテクトの下に、元の骨格が生きていた。


そこから入った。


中枢の幹に接続した。


珠を弾く。カチ、カチ、カチ。民衆の腕輪へ向けて、真実を流す。熱量の流れがどこへ行っているか。誰が何を取っているか。設計図の中の細い線。教科書に載っていない数式。全部を、そのままの形で。


帝都の夜空で、腕輪の光が一斉に揺れた。




追手が退いた。


退いたのは、ジグが追手をかわしたからだけではなかった。レンが末端と話していた時間、追手の動きが鈍かった。何を言ったのかは聞こえなかった。


キコは算盤をレンに向けた。


数値が、出なかった。


仲間を売ったのか、売るふりをして守ったのか、あるいは別の何かなのか。算盤では測れなかった。測れないまま、算盤を閉じた。


レンが近づいてきた。


「お前たちが作ったものを欲しがっている連中がいる」


それだけ言った。説明しなかった。


キコは算盤を一度だけ、強く握り直した。壊れている。珠が二つ欠けている。枠の端が割れている。それでも動く。


「行くぞ」


ガルの声がした。


七人で走り出した。


どこへ行くかは、まだ決まっていなかった。


それでよかった。


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