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爆破の地図

農村の外れに、大木の残骸があった。


根元から断ち切られている。切り口が焦げている。周囲の草が、まだ灰色だった。


キコは残骸の前にしゃがんで、算盤を開いた。


爆破の痕跡を読む。衝撃の方向。熱の広がり方。根がどこまで伸びていたか、焦げの濃淡から逆算する。珠を弾く。カチ、カチ。数値が並んでいく。


おかしい。


もう一度弾いた。同じ数値が出た。


爆破の順番が、でたらめではない。でたらめに見えて、でたらめではない。根の構造を把握した上で、一番効率よく中心を断ち切る順序で仕掛けてある。教科書的な正解ではない。でも結果として、これ以上ない場所を壊している。


「これ、計算したか」


振り返らずに言った。


後ろでガルが腕を組んだ気配がした。


「していない。変だと思ったから壊した。それだけだ」


キコは算盤を見た。数値を見た。残骸を見た。


「……お前の勘は、正しい」


ガルが何も言わなかった。


褒めたつもりではなかった。ただ、数値が言っていることを口にした。それだけだった。でも言ってから、初めて気づいた。計算なしの判断を正しいと言ったのは、これが初めてだった。


算盤の珠を、一度だけ戻した。



昼過ぎ、ガルが六人を集めた。


廃材を並べただけの粗末な卓を囲む。ボッグが黙って一番端に座る。イノが落ち着かない足をしている。ルルが卓の木目を指でなぞっている。ジグが壁に背を預けたまま腕を組んでいる。


「お前らが何をしたのか、聞かせろ」


ガルが言った。隠すつもりのない目だった。取引でも尋問でもない。ただ、知りたいと言っている目だった。


「帝都の配信を止めた」とキコが言った。「電波塔の出力に逆位相をぶつけた。一晩だけ」


「一晩」


「一晩だ。恒久的に止めるには、中枢の設計そのものを変える必要がある。それはまだできていない」


ガルがボッグを見た。ボッグは何も言わなかった。ガルがイノを見た。イノが「すごいな」と言った。


「お前ら、子どもだろ」


「そうだが」


「子どもが三人で、あんな連中に追われるのは普通じゃない」


「普通じゃない」とキコは言った。「でも、やった」


ガルが少し黙った。卓の上に、視線を落とした。


「俺たちは大木を二本、爆破した。隣村のも含めて」


「知っている」とキコが言った。「残骸を見た」


「中央の管理が、あの木から来ていた。断ち切ったら村は不便になった。でも、前の暮らしに戻れた」


「計算は合っている」


「計算はしていない」ガルが顔を上げた。「ただ、あの木が来てから村がおかしくなったと思ったから、壊した」


キコは算盤の盤面を見た。


今朝の残骸の数値が、まだそこにある。直感で選んだ爆破点が、計算上の最適解と一致していた。ガルの判断は、根拠なしに正しかった。


それは、どういうことなのか。


まだ言葉にならなかった。


「そうか」ガルが言った。静かな声だった。「じゃあ俺たちは、同じものを壊していたんだな」


誰も答えなかった。


イノが「おい」と言いかけて、ボッグに肘で止められた。


窓の外で、風が鳴った。大木の残骸の、焦げた切り口の匂いが、まだどこかに残っていた。


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