ゆれる、ゆれる
「もう7日…」
いけられていた鈴蘭も、私のように俯いていた。
「…だめね。こんな姿、良き妻のあるべき姿ではないはず」
でも、無意識に小さくため息をついてしまう。
「おはようございます、奥様。」
私の気分とは裏腹にどこか空気が弾んでいた。
「おはようございます…。何かあったのかしら」
そう訊ねると家令は小さな箱をとりだす。
「奥様。旦那様から奥様へ贈り物でございます。」
メッセージカードには『いつも貴女の傍に』と。
その文字は旦那様の筆跡だった。
はやる気持ちを丁寧に包装を外す。
そこにはあの日手を伸ばしかけて諦めた、淡い…旦那様の瞳の色をした小さなイヤリングが揺れていた。
「あ…」
零れ落ちそうな声を抑えるように唇を押さえる。
そうしないと、大きな声で叫んでしまいそうだった。
嬉しい。
そう言って跳ね回ってしまいそうだ。
メッセージカードとともにぎゅっと胸にしまい込む。
旦那様からの、贈り物…。
それが…あの日、私が手を伸ばし損ねたイヤリング。
旦那様も…きっと誰も知らなかったはずなのに。
なのに、それを旦那様が見つけてくださった。
なんて、素敵なんだろう。
嬉しくて、嬉しくて…。
少し涙が零れた。
…私は、旦那様の妻でいていいのだと。
そう言われた気がした。
****
「…彼女は喜んでくれただろうか…」
本当ならば自分が彼女に渡したかった。
だが、贈り物を渡すには彼女に会うことが出来ず…泣く泣くレイモンドに託したのだった。
「ええ。それは奥様は涙を溢されるほどに」
「涙を溢したのか?…そんなに?」
慌ててレイモンドに訊ねるが、頷くだけだった。
仕事を投げ出してまで探し回ったあの日。
宝石。服飾。靴。香水。 レース、花、菓子。
どれも結局、彼女に似合うものが見つからず肩を落としていた。
けれど…。店先に飾られていた淡い色のイヤリングに目を惹かれたのだ。
彼女に似合ってほしいと…付けてほしいと。
それが、俺の瞳の色だとしても…。
なのに…。
「そんなに、嫌だったのだろうか…。メッセージカードがよくなかったか?やはり、俺の瞳の色を付けてほしいなど傲慢で…お、重い男だと思われただろうか…」
だいたい、初めての日から顔も合わせない夫など。
愛想を尽かされて当然ではないか?
「坊っちゃん~?」
「やはり、センスのない男からの贈り物など…」
「おい。坊っちゃん、話を…」
「仕事とはいえ、まともに会話すらしない男からの贈り物など…」
やはり、贈り物など重い…。
まずは、夫として認識されるところから…。




