表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/8

朝起きて、一番にすること。


朝起きて一番にすることが増えた。

袖机に置かれたカードを見ることだ。


袖机の花と共に旦那様から贈られるカード。



「今日もあった…」


赤いカーネーションに添えられたカードには、

『明日は君と』


たった一言。

他の人がみたら素っ気ないと言われそうなメッセージ。

それでも私にとっては旦那様からの贈り物だ。


汚さないうちに仕舞わないと、と思うのに少し名残惜しくって。

旦那様の筆跡を消えないように優しく撫でる。


「旦那様はもう…?」


私が訊ねれば、彼らは

「まもなく仕事も落ち着かれるかと。それまでは……」

と言葉を濁した。


「そう…」


はっとして目を落とす。

走り書きのようなメッセージ。


本当はとても忙しいのでは…?


『良き妻のすすめ』にも書いてあった。

忙しい旦那様に物をねだることははしたないと。


友人からも教わったことがある。



「あの、一つ用意していただきたいものがあるのですが」


せっかくの贈り物だったけれど…。



******




今にも坊っちゃんからキノコが生えそうだ。


いつものように日が傾き、月までも傾いた時間に帰宅された坊っちゃん。


奥様の寝顔を見に寝室に入られた。

そこまではいつも通りだった。


そう、袖机の上のカードを確認されるまでは。


カードを手に取られ、坊っちゃんは固まってしまった。


「…」

「旦那様。」

「…」

「旦那様。」


お声がけしても坊っちゃんは微動だにしない。



「…坊っちゃん。」


何度か声掛けして、昔の呼び方をしてやればやっとこちらを向く。

それはもう、情けない顔で。


「レイ。俺は…彼女に、嫌われたかも知らない」


見せられたカードには

『どうぞご無理なさらず。』

と書かれていた。


どう見ても坊っちゃんを気遣う言葉だと思うのだが。


「会えないのであれば、言葉だけでも。と思ったのだが…迷惑だったのかもしれない。

気障な言葉は苦手だからと、率直な想いを選んだつもりだったのだが。メッセージカードすら書けないのだと彼女は呆れたのだろう。」

そう言って坊っちゃんは崩れ落ちた。



そんなわけないだろう。

毎朝、奥様がメッセージカードを見て嬉しそうにはにかんでいらっしゃるか。

それほどまでに楽しみにされているというのに。


「坊っちゃん、お言葉ですが…」

「…彼女自身で好きなものを買えば、呆れられないはずだっ」


坊っちゃんはそうぶつぶつと呟きながら部屋を出ていった。





坊っちゃん。

人の話は最後まで聞きなさいと教えたでしょう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ