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ちょっとだけ、期待してしまった

今日も旦那様は寝室にいらっしゃらなかった。

代わりに旦那様付きの家令の方がいらっしゃる。


「奥様、おはようございます。

本日、旦那様より言付けを預かっております。」

「なにかしら」

夕食のお誘い?

お出かけのお誘い?



「『庭の薔薇を眺めるのも一人では寂しいだろう。せっかくだから、友人を招待されてはどうか』とのことでございます。」

「そう…」

違ったのね…。



袖机の花瓶には黄色いチューリップ。



旦那様とつかの間でよいので、過ごしたかったのに…。

旦那様は友人と過ごせばよいと思っているのね…。


少し、寂しい…






旦那様のご厚意を無下にするのもいかがかと、友人たちを招いたけれど、失敗したかもしれない。


やれ、旦那様とどこへ行った。

やれ、旦那様にプレゼントをもらった。



そう、幸せそうなのだ。



そんななかで、『初めての夜から会話らしい会話をしていないの。』などと言えるわけがなかった。


「最近、姫殿下のお付きとしてお城に新しい行儀見習いの女性が入ったそうなの」

友人のその一言に小さく手が止まった。


「それならうちの旦那様も言っていたわ。リーベルト伯爵家のお嬢様で姫殿下とも年が近いそうよ」

「私も聞いたわ。旦那様は寂しくさせないように毎日帰ってくるとはおっしゃってくださいましたけれど、やはりお忙しそうなの。貴女の旦那様も大変みたいよ?」


友人の一言に小さく息を吐く。

そんなこと、旦那様から一言も聞いていない。


…出来るならば、友人の口からではなく、旦那様から聞きたかった…。


やっぱり、少し寂しい…。


零れてしまいそうな言葉を紅茶と共に飲み干した。



****


「あんのくそ殿下!」

「旦那様。お言葉が過ぎるかと」


家令に窘められながらも、吐き出される言葉が止まることはない。

「なにが、『お前は兄弟が多かっただろう。ならば適任だ』だ!なぜ、俺が子供の、それも赤の他人の、子供の面倒を見る必要がある!」


姫殿下のお付きにと、10歳の伯爵令嬢が行儀見習いとしてやってきた。


まぁ、そこまでならいい。


姫殿下も12歳と年の近い者を傍に置くつもりだろう。


なぜ俺が、その面倒をみなければならない。


「旦那様。一人称が崩れております。」


「やっと仕事が一段落したから彼女と過ごす時間が取れると…。やっと、やっと…」


「旦那様。それを巷ではフラグ回収と呼ぶそうですよ」


「うるさい!」


俺の蜜月を返せ!

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