34話 散開
フォーレンへ急ぐのと並行して、ダレルさんの戦地投入も阻止しなくてはならない。
そこで、僕とキンギルがフォーレンへ赴いている間に、配下達には別のミッションを進行してもらう事にした。
「レイミー」
「はい!」
「君はシザリーと一緒に、ロッケス山脈へ舞い戻って、オリビア派閥への加勢をお願いしたい」
「わかりました!」
フォーレンが狙いであろうとも、ジュブスさんの元拠点だって失う訳にはいかない。
グレンさんとセレナさんがいてなお苦戦しているようだし、少しでも戦力を補っておいた方がいいからね。
そして。
「サリーはフレイネと共にオリビア邸へ行って、僕の伝言を伝えて来て欲しい。それと、セレナさんから預かってる警告もいっしょにね」
もしかしたらこれが一番酷なミッションかもしれないけど、レイミーよりかはサリーの方が適任と僕は判断した。
「ちょ、ちょっと待ってほしいのだ! な、なんでわたしが……」
「頼むよサリー。レイミーにこれを頼むと、もしかしたらクレアが対抗心を燃やして変な行動を起こすかもしれないからさ」
それにやっぱり、2歳とは言え歳の功に期待している部分もあるからね。
と言うのは、女性に面と向かって言える事じゃないけど。
「し、しかし、当の本人が大人しくしてるとは思えないぞ?」
「だろうね。だから僕はこれから大急ぎで手紙を書く。サリーはそれをダレルさんに渡してくれるだけでいいよ。それを見てもなお、止まらなかったら仕方がないね」
「わかった。だが、皆あまり無茶をするなよ? シザリー、レイミーをしっかり守るんだぞ?」
「了解ですサリー様」
うん、やっぱり年長者って言うだけで、少しだけ頼もしい。
こう言う気遣いを出来る所は、サリーらしいね。
「じゃあ、レイミーは今すぐロッケス山脈へ。グレンさんの指示を仰いで、シザリーの特性を活かした戦いを」
「わかりました!」
決意に満ちたいい顔をして、レイミーが踵を返した時だった。
「ちょっと待ってくれ」
その背中にキンギルの制止がかかる。
「どうしましたか?」
「あ、いや。そっちの赤髪のお嬢さん……シザリーさんと言ったか、彼女に我らの機甲魔装を持って行って欲しいんだ」
「分かりました、ご厚意に甘えます。シザリー、そう言う事だから好きな機甲魔装を持って行くといい。せっかくだしレイミーも借りていったら?」
と言うのは少し欲張りだっただろうか。
同じように感じたのか、レイミーは恐る恐るキンギルへと無言の伺いを立てる。
「どうぞ使ってやってください」
「わかりました。ではお言葉に甘えます」
甘えついでにもう一つ借りる事にして、今度こそ彼女たちを見送った。
「ありがとうございますキンギルさん」
「い、いや、君たちは我ら国民の誇りを重んじてくれている。だったらせめて、と思ってな」
やっぱり僕が信頼した相手は間違っていなかった。
亜人とはあまり接した事はないけれど、大事な物を守る為に見せる心意気は種族なんて関係ないんだね。
飽くまでも憶測だけど、彼ら亜人の歴史は差別との戦いだったのだろう。
そこには、多くの嘘やだまし討ちなどによる、卑劣な行為もあったのかもしれない。
だからこそ、亜人は『嘘』や『建前』と言うものを敬遠している節があるのかも。
『そんな感じでしょ?』
『そうね。半分は正解ってところかしら』
『あと半分は?』
『彼らは元々そう言う種族よ』
なるほど。
そうか、だからこそ虐げられる側にされていたって訳なんだね。
そんな事を考えながら、ダレルさん宛ての手紙を書き終えた。
「はい、サリー。これよろしくね」
「分かったのだ。落ち着いたらオリビア卿にはきちんと自分の口で説明するのだぞ?」
「うん、そうするよ。あっ、あとそれと帰り道に迷ったら魔書で知らせて。じゃよろしく」
「んあ? 迷う訳ないだろう? まあいい、では行ってくるのだ」
怪訝な表情を浮かべながら、サリーはフレイネの背に乗って飛び立って行った。
「さてと、じゃあスライ。悪いけど、また留守番をよろしく」
「お任せ下さい!」
どうやら僕に頼られるのが、至極の幸せとでも言いたげだね。
それほどに、スライの顔からは充実感が満ち溢れている。
「では行きましょうかキンギルさん」
「ああ。だがしかし、移動手段はどうするんだい?」
飛行能力を有するレイミーとフレイネは、それぞれの任務で頼れない。
こんな時の為に作っておいてよかったよ。
ホバースライム。
「この板で移動します」
「ん? なんだいこれは?」
「まあまあ。乗り方はおいおい移動しながら慣れると思いますので」
「わ、わかった。では行こうか」
こうして僕は、Fランク魔王の身でありながら一国一城の主との謁見、と言う重大な任務へと向かった。
少し短めのお話でした。




