表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fランク魔王と魔眼メリエス  作者: はかまだ
一章 【独立】
32/40

30話 右手

このお話は魔改造分身体のスライ視点でお送りします。

 ネル様の予想がズバリ的中した。


 大事な拠点を守る身としては、生け捕りにする事で生じるリスクは避けたかったのだけど。

 しかし、主の望みとあればこのスライ。

 リスクを背負う事もやぶさかではない。


 しかしどうして、機甲国家からの侵攻。その鎮圧は思いのほか容易に終える事が出来た。


 出来たのだが……。


 散発的に現れる高ランク魔王を片付け、ようやく一息入れようとしていた時。


 まったく気配を察知する事も出来ず、気が付くと遺跡の入り口に一人の女が立ち、微笑んでいた。


 最初は、これまでの魔王と同列に相手をしていたんだけど、どうやら今度の手合いは一筋縄ではいかないようだ。


 徐々に、僕ら分身体は本気になっていく。


 しかし。

 しばらく戦闘を続けていく内に、思いもしない事態になっていた。


 突如現れた新手に、僕ら分身体が束になっても太刀打ちできないなんて。


「なかなか面白い魔術(ガルドラル)を使うんですね。そもそもあなた方は魔族でもなんでもないのですよね? よくできたお人形ですね」


 なんでそんな事まで知られているんだろう。

 もしかして、調査に秀でた魔術(ガルドラル)の所持者か。


 合成時に与えられたネル様の記憶を引き出してみるも、この女の情報はまったくない。

 となれば、フォーレンから送られてきた増援か。

 いや、それも考えにくい。


 そもそもこの女は魔角を所持しているし、フォーレンが魔族と友好的とは言え、身内に引き込んだと言う事例はないはず。


 着込んでいる服は、ネル様が通っていた育成校の女子用制服と(おもむき)が似ている。

 歳はネル様たちとそう変わらないだろう。


「おいスライ! ぼーっとしてる場合じゃないぞ! 何か対策を考えてくれ!」

「恐ろしく先読みの鼻が利きますね。こちらの動きをまるで予知でもしているような。それに初見でこちらの魔術(ガルドラル)を防ぐなんて信じれらません」


 くそ。

 このままではネル様に合わせる顔がない。

 どうしようか。こんな時にネル様がいれば……。


 主の帰りを期待してしまうなんて情けないにも程がある。

 しかし、それでもこの女は僕らの手に余る。


 だが、予定ではネル様の帰還はまだ数日後。

 ここはなんとしても、僕たちの手で防衛しなければ。


 そう意気込むものの。


 パラサイトスライムでの寄生攻撃も何故か効かない。

 そもそも、なんで気体に変化しているのにその場所を正確に定められるのか。

 魔力の波紋を広げている訳でもないのに。


 それに場所を特定したとは言え、女の右手がその位置を一撫でしただけで使い魔が消えてしまう。


 カタパルトスライムでの掃射も、ことごとく失敗に終わる。

 吐き出された全てのバレットスライムは、女の右手により消え去った。


 通常、魔族の肌は青白いはず。

 しかし、何故かこの女の右腕は肘から先が真っ赤に変色している。


「どうしましたか? そんな事では、ネルテスタくんの留守を守るなんて出来ないのではないですか?」


 と、ここで、フレイネの背に生える竜の翼が動き出す。


 一気の跳躍と翼の飛翔で、女の側面へと素早く移動。

 間髪いれずに、手から口から凄まじい数の火球を打ち放った。


「遅いですね」


 その数、優に百はあろうかと言う、まさに火の海。

 女に残された逃げ道は、フレイネが背にする壁の対となる壁際への跳躍しか考えられない。


 そして、そこには両手と尻尾をハサミにしたシザリーが既に待ち構えている。


 二人の動きを先読みして、僕が取るべきいくつかの選択肢に思考を泳がせる。


「シザリーはそこで待機っ、フレイネは追加の火球を!」


 女が火球を避ける為に、シザリーが待ち構える方へと跳躍するその着地点。


 その地中にパラサイトスライムを五匹忍ばせる。

 足を突いた途端、粘液状、まさにスライムの特性そのままに足を取り込み、動きを止める。


 だけど、僕たちは目の前で起きた現象に驚きを隠せず、戦闘中だというのに間抜けにも呆けてしまう。


 フレイネの火球は、完全に女から先手を奪ったはず。

 にも関わらず、火球が女を襲おうとした瞬間。


 まるで掻き消したかのように、フレイネが放った全ての火球が消滅した。

 さらに、僕が地中に潜ませていたパラサイトスライムまでもが、その存在を消されてしまう。


 まただ。

 またあの右手が。


 片腕を火球の渦へと(かざ)しただけで、それは跡形もなく消え失せた。

 続いて、僕が忍ばせた使い魔へ向けて、その右手を薙いだ。


 どうやら距離が空いていたパラサイトスライムまでもが、その餌食になってしまったようだ。


「な、なんで……」


 こちらの驚きなど気にも留めず、女はただ不敵に笑うのみ。


 しかし突如、そんな女の表情が険しくなる。


「来ましたね」


 女がそう言った数瞬後、入り口で爆発が起きた。

 フレイネの火球が引き起こすそれが、ボヤと思えてしまう程の威力だ。


 これにはさすがの女も、両腕を十字に構えてその衝撃に耐えていた。


 でもおかしい。

 なんで今回の爆発、その衝撃は掻き消さないのだろう。


 火球に比べて威力が高いからなのか。


 僕ら分身体は、その余波で地下へと続く階段付近まで吹き飛ばされた。

 爆風に晒されながら、それでも懸命に入り口へ視線を留める。


 煙の中から颯爽と現れる黒髪の魔王。

 こめかみから伸びる二つの魔角。

 普段は温和で感情が読めない顔だちだけど、今その眼からは漆黒の炎を宿している。


 そんな飄々とした面立ちは変わらずも、どこか左目にも(たぎる)るような情熱の炎が窺える。


 凛々しくなって帰って来られた。


 まさしく僕らにしたら救世主。


 今はこの喜びに身を、そして心を委ねよう。

 この後にお叱りはいくらでも受けますので。


 お帰りなさいませネル様。

お読みくださりありがとうございました。


そろそろ第一章として区切ります。

テーマなど活動報告に書いておきますので良ければ一読ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ