↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』再編集版  作者: 黎明の星
黒木光哲

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/40

第2話『鉄と向き合う日々』

第2話『鉄と向き合う日々』


製鉄所の検査場には、加工を終えた鋼材が順番に運び込まれていた。

黒木光哲は作業記録と現物を照らし合わせながら、一本ずつ仕上がりを確かめていく。

金属を扱う仕事には慣れているが、同じ手順を繰り返せばいつも同じ仕上がりになる、というほど単純な世界でもなかった。


「黒木主任、これを見てもらえますか」


声を掛けてきたのは高堂來斗だった。

以前、二つの試験片を手に硬さの違いを尋ねてきた若い作業員だ。

來斗が示した鋼材には、端に沿って細い筋が一本走っていた。


「傷か?」

「はい、寸法は問題ないんですけど、ほかのにも同じ筋があるんです」

「何本見つけた?」

「今のところ三本で、どれも同じ側です」


來斗は検査記録に印を付け、該当する鋼材を分けていた。

三本の間には傷のないものも混じっているらしく、記録にはその順番まで書き込まれている。

光哲は手袋越しに表面を確かめ、並べられた三本を見比べる。

深い傷ではないが、製品に残ってよいものかは別の話だった。


「ほかの部分は?」

「見た範囲では問題なくて、前の工程の記録にも傷は載っていませんでした」

「そこまで調べたのか、いいな」

「でも、どうして同じ所に付くのか分からなくて」

「なら、どこで付いたのかを先に確かめよう」


光哲は記録を開き、筋のある鋼材が通った時間と順番を追った。

來斗も隣から記録を指し、傷のないものとあるものを分けていく。

いくつかの可能性が浮かんだが、この段階で原因を一つに決めることはできない。

加工中に触れたのか、運ぶ途中で擦れたのか。

前の工程で見落としていた可能性だって、まだ消せない。

光哲は來斗の記録をもう一度確かめ、気になる箇所に指を置いた。

二人は担当者に声を掛け、工程をいったん止めて設備を点検してもらうことにした。


◇


設備が安全に停止したことを確かめてから、保全担当者と一緒に搬送部分を確認した。

その途中、鋼材の端を案内する部品に、不自然な擦れ跡が見つかった。


「あ、ここ……鋼材の傷と同じ高さですね」

「同じ高さだが、これだけで決まりとは言えないぞ」


担当者が接触していた箇所を調べ、部品の位置を調整してから確認運転を行った。

その後に通した鋼材には、先ほどの筋は見当たらなかった。

光哲は新しい検査記録を確かめてから、ようやく頷いた。


「どうやらここが原因だったと考えてよさそうだな」

「最初は小さな傷だから、見逃すところでした」

「でも見つけて、ほかにもないか自分で確かめただろ?」

「それでも、主任なら最初から分かったんじゃないですか?」

「まさか、調べなきゃ俺にも分からんよ」


來斗が意外そうな顔をすると、光哲は笑った。

新人の頃には、何を見ればいいのかさえ分からないことがあった。

経験は積んだが、知らないことがなくなったわけではない。


「仕事って、覚えることが多いですね」

「多いから面白いんだよ」

「主任は、やっぱりそう言うと思いました」


來斗が笑って記録を閉じる。

光哲もつられて笑い、次の鋼材へ目を向けた。

目の前には、まだ確かめることがいくらでもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。