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『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』再編集版  作者: 黎明の星
クロード幼少期

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第19話『もう一人の兄』

第19話『もう一人の兄』


「入ってもいい?」


扉の向こうから、聞き慣れない少年の声がした。

エリスが返事をすると、アルトよりも背の高い男の子が顔を覗かせる。

寝台に横になっていたクロードは、その姿を目で追った。


「ザナン、どうしたの?」

「アルトがさ、クロードと遊んだって何度も話すから。ちょっと見に来た」

「ふふ、そうだったの。クロード、ザナンよ。あなたのお兄ちゃん」


(……また兄か)


アルトとは雰囲気が違う。

ザナンは寝台へ近づくと、弟の顔をまじまじと覗き込んだ。


「前に見たときより、大きくなってない?」

「そうね。少しずつ大きくなっているわ」

「でも、まだちっちゃいなあ」


ザナンは自分の手を広げ、クロードの手と見比べた。


「ぼくも、こんなに小さかった?」

「もちろん。ザナンだって赤ちゃんだったのよ」

「うーん、なんか変な感じ」


言いながら、ザナンはもう一度顔を近づけた。


「クロード。ぼく、ザナン」


呼ばれたのは分かったが、顔を向けるまでに少し時間がかかった。

ようやく目が合うと、ザナンがにやりと笑う。


「お、見た。じゃあ、こっちは?」


ザナンは寝台の反対側へ回った。

クロードも声を追おうとしたが、首は途中で止まってしまう。


(そっちまで急には向けないんだけどな)


「……あれ。こっちは見ないの?」

「急に動くと追いかけられないのよ。もう少しゆっくりね」

「そっか」


ザナンは今度はそっと横へ動いてみた。

クロードがゆっくり顔を向けると、嬉しそうに目を丸くする。


「見た! ちゃんと分かるんだ」


それからザナンは寝台のそばにしゃがみ、外で遊んでいたことを話し始めた。

どこまで伝わると思っているのか、身振りまで交えて楽しそうに話す。

クロードは動く手を見つめていたが、ふいに喉から声が漏れた。


「あー!」

「えっ、今、返事した?」


ザナンはぱっと笑顔になった。


「もう一回言ってみて。クロード!」


けれど、そう言われても声は出ない。

クロードが瞬きをすると、ザナンは不思議そうに首を傾げた。


「さっきは言ったのに」

「まだお話はできないもの。声が出るのも、そのときによるのよ」

「そっか。じゃあ、ぼくが話してればいいか」


ザナンはすぐに気を取り直し、さっきの話の続きを始めた。

クロードには何も答えられなかったが、ときどき顔を向けるだけでザナンは満足そうだった。


◇


やがて、ザナンが扉の方を振り返った。


「あ、そろそろ行かなきゃ。外で遊ぶんだった」

「そう。気をつけてね」

「うん!」


立ち上がったザナンは、もう一度クロードの顔を覗き込む。


「またな、クロード。今度はもっと早くこっち向けるかな?」


クロードが声の方へ顔を動かすと、ザナンが笑った。


「ほら、今は見た!」


嬉しそうな声を残して、ザナンは部屋を出ていった。

アルトは布を持ってきて遊んでくれた。

ザナンは自分の話を聞かせながら、こちらの反応を面白がっていた。


(兄弟でも、ずいぶん違うものだな)


まだ自分からは名前も呼べないけれど、二人の兄のことは少しずつ知ることができた。

クロードは廊下へ遠ざかる足音を聞きながら、次にザナンが来たらもう少し顔を向けられるだろうかと考えていた。

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