↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界転生した製鉄所主任、雷魔法と鉱物生成で成り上がる ~未知の世界は面白いことだらけでした~』再編集版  作者: 黎明の星
クロード幼少期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/41

第12話『指一本から』

第12話『指一本から』


ガルディオの指先に灯った小さな炎が、頭から離れなかった。

寝台に横になったクロードは、天井を眺めながら何度もあの光景を思い返していた。

父は火を出す前に指を動かしていた。

寄せて、形を変えて、もう一度動かす。

順番があったように見えたが、細かなところまでは思い出せない。


(あの動きにも、何か意味があるんだろうな)


できることなら、もう一度見せてもらいたい。

だが、今はガルディオの姿もないし、呼ぼうにも名前をはっきり発音できない。

クロードは少し考えてから、自分の右手に目を向けた。

火を出す仕組みは分からないが、指を動かすだけなら試せるかもしれない。

まずは、あの大きな手のように動かしてみよう。

そう思って腕を上げると、手が顔の前を通り過ぎそうになった。

慌てて止めようとしたせいで、今度は肘まで動いてしまう。

どうにか視界に入った小さな手を見つめ、クロードは人差し指を曲げようとした。

すると、中指まで一緒に曲がった。


(……そっちまで動かなくていいんだけど)


一度手の力を抜き、今度は人差し指だけを意識する。

ところが、ぴくりと動いたのは親指だった。

思いどおりにならないのが悔しくて、口から声が漏れる。


「うぅ……」


前世では指一本を動かすのに、こんな苦労をした覚えはない。

もっとも、今の身体では腕を持ち上げるだけでも大仕事だ。

クロードは少し休んでから、もう一度右手を見た。

指を全部動かそうとするのではなく、まず一本だけ。

力を入れてみる。

今度もほかの指がついてきた。

そこで少し力を緩め、もう一度試す。

すると人差し指がほんのわずかに曲がり、中指はほとんど動かなかった。


(おっ、今のは!)


嬉しくなって同じことをしようとすると、今度は指がまとめて握り込まれてしまった。

どうやら、一度できたからといって、すぐ同じように動かせるわけではないらしい。

それでもクロードは、さっき確かに指一本が動いたのを見ていた。

もう一度試そうとしたところで、柔らかな声が聞こえた。


「クロード、起きていたのね」


エリスが寝台のそばに来て、懸命に動く小さな手を覗き込む。


「あら、お手々で遊んでいたの?」

「あぅ」

「ふふ、ずいぶん上手に動かすようになったわね」


いや、まだちっとも上手には動かせていない。

そう伝えたくても、エリスは嬉しそうにクロードの手を包んでいる。

指を一本ずつ優しく開いてもらうと、自分で力を入れたときとは違って簡単に広がった。

その手から指が一本差し出される。


「ほら、握れるかしら?」


触れた指を、クロードの手がきゅっと包み込んだ。

さっきは狙った指一本すら曲げられなかったのに、握るときには勝手に手が閉じる。

同じ手なのに、不思議なものだ。


「上手ね、クロード」


エリスは笑って、もう片方の手でクロードの頬を撫でた。

褒められるのは少し照れくさいが、悪い気はしない。

ガルディオの指の動きを真似できるようになるには、まだまだ時間がかかりそうだ。

それに、真似できたからといって火が出るのかも分からない。

それでも、さっきは一度だけ思った指が動いた。

まずは、もう一度あれをやってみたい。

クロードはエリスの指を握りながら、自分の小さな手をじっと見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。