064⚫️予定は未定
妻はいつものように爆走を始めた。
次女さん、三女さんと相続の話をして彼女たちを見送ったあと、
妻は新たな漫画サイトを見つけた。
どうしても読みたいストーリーがあるという。
彼はかつて月収の何倍もの課金をした記憶に恐怖した。
だが、そのことは前例として告げることはできない。
そんなことをすれば、妻の怒りが大爆発するのだ。
彼に矢継ぎ早に質問する妻。
だが、またも要領を得ない。
妻の問いは、問いの形をしていながら、内容がまるで定まっていない。
彼が全ての状況を知っていて、それを出し惜しみしている、
と言わんばかりだ。
その目には彼が神のように映っているのか。
妻が全てを仕切る神なのに。
亡き義両親宅のメンテナンスが次々と必要となる。
彼一人の力では限界である。
だが、妻はそれが彼の責務だと追求して止まない。
専門家に任せることができなければ、その希望は永遠に叶わない。
それを指摘し業者の依頼を促す度に、
妻は不機嫌となり、その許可を下すのは、あした、という。
その明日はいつまでたっても来ない。
期限は無期限に延長され、
”予定は未定であり決定ではない。”
記憶にあるその言葉が、彼の胸に重く沈む。
彼の混迷と困惑は尽きない。
最早、これまでなのか。
暗い気持ちで、今、彼はキーボードを叩いている。
〈付け足し〉翌朝、妻は「今日は連絡、やめとく」と言った。
やはりか。やれやれ。




